日経平均3万円、主役は外国人・日銀 個人に恩恵薄く

日経平均3万円、主役は外国人・日銀 個人に恩恵薄く
編集委員 川崎健
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『日経平均株価が15日、1990年8月以来30年半ぶりとなる3万円の大台を一時回復した。この間に日本株を買ってきたのは外国人投資家と日銀だった。個人はほぼ一貫して保有株を売りつづけており、株高の恩恵が国民に広がりにくくなっている。戦後の財閥解体時に進めた「証券民主化運動」に改めて官民で取り組み、資本市場を通じて国民が豊かさを享受できる社会を築くときだ。

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日経平均の水準は30年半前に戻ったが、その間に株を所有する主体が変わった。最大の変化は、法人であれ個人であれ、日本人が日本株を持たなくなったことだ。

株を持ち合ったり、財テクで運用したりしていた銀行や事業会社は、バブル崩壊後の株価急落に耐えきれず、保有株の処分を粛々と進めてきた。

株はギャンブル――。国民の間には1980年代後半にこぞって投機熱に浮かれた反省から、株式投資をあたかも悪者扱いする空気が強まった。

この30年間、個人は保有株を売りっぱなしで、売越額は総額で68兆円に達する。結果、90年度末に20.5%だった個人の上場企業の持ち株比率は2019年度末は最低の16.5%に低下した。

米国は約半分の世帯が株を保有し、株と投資信託が家計の計45%を占める。かたや日本は個人金融資産の過半を現預金が占め、株と投信は計13%にとどまる。自国の株が歴史的な水準を回復しても、株を持っていない多くの国民にとってはまるで人ごとに映っている。

日本人が手放した株を一手に引き受けたのが外国人だった。外国人の持ち株比率は90年度末の4.7%から17年度末には30.3%に上昇した。

12年末に始まったアベノミクス相場が一巡すると、外国人は日本株の売りに回った。そこで外国人や個人が放出する株の受け皿となったのが、黒田東彦総裁の下で日本株の上場投信(ETF)の購入を拡大した日銀だ。

日銀保有のETFは昨年末時点で46.6兆円となった。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の45.3兆円を超え、日銀は実質的に日本株の筆頭株主になった。

公的年金の株式運用は世界でも決して珍しくないが、中央銀行が金融政策の一環で株を買っている国は日本以外にない。いくら日経平均が3万円台を回復しても、日銀とGPIFが合わせて株の約1割を保有する「官製相場」のおかげと皮肉られるのは当然だろう。

日経平均の3万円台回復は、そんないびつな日本株の保有構造をこれからどう変えていくかを考えるきっかけになる。

「そろそろ『外国人頼み』や『日銀頼み』の構図から脱し、国内の投資家が市場を支える仕組みをつくるタイミングだ。投信も活用しながら、多くの国民が日本企業の株主になるのが望ましい」。岡三証券グローバル・リサーチ・センターの高田創理事長は指摘する。

戦後の財閥解体を受け、官民挙げたキャンペーンで財閥保有の株を小口化して個人に広く買ってもらった「証券民主化運動」につづく、「第2次・証券民主化運動」を進めるという案だ。

1947~50年、財閥解体に伴い個人に株を広く分配する証券民主化運動が繰り広げられた(当時の日本橋兜町)

戦後の証券民主化運動は、投機的な株の買い占めや証券会社の利益重視の営業姿勢に嫌気がさした個人はほどなく買った株を手放し、証券民主化運動は挫折した。

今回は失敗は許されない。日本投資顧問業協会の大場昭義会長は「株式投資の信頼感を高め、上場企業の企業価値を持続的に高める努力が、証券民主化の大前提だ。そのうえで国民が幅広く株式市場に資金を投じ、株価の上昇によって豊かさを享受する好循環ができる」と指摘する。

そのための準備は、すでに始まっている。

2014~15年に政府主導で導入した機関投資家向けのスチュワードシップ・コードと上場企業向けのコーポレートガバナンス・コードだ。いずれも、制度疲労を起こした銀行の間接金融に代わり、直接金融である資本市場の力を活用して上場企業の稼ぐ力を高めるための仕組みだ。

もちろん資本市場は万能ではない。日本を含めた世界的な株高は、新型コロナウイルス禍後の世界各国の金融緩和と財政出動に支えられたものだ。市中にあふれたマネーが資本市場の中だけで循環し、実体経済にうまく回っていないとの指摘は多い。

カネ余りによる株高が顕著な米国では、資産を独占した一握りの富裕層と、それ以外の層の格差の拡大が深刻になっている。格差拡大に対する米国民の不満は蓄積しており、若年層を中心に個人の一角がSNS(交流サイト)の「レディット」上で共闘し、富裕層の象徴であるヘッジファンドに損失を負わせようとする動きも盛り上がっている。

だが、日本の資本市場の現状は、行き過ぎた株主資本主義の弊害を議論するにはまだ早すぎる。資本市場をより成熟させ、その恩恵を幅広い国民に広げるべき局面にさしかかったところだ。

株式市場には相場がひとたび暴落すると、株価が暴落前の水準を回復するには世代が親から子に切り替わる1世代分(30年程度)の時間がかかるという説がある。株価暴落で大きな損失を被った苦い経験から社会が立ち直るためには、世代交代が必要という理由だ。

1929年の大恐慌の株価暴落をへて、米ダウ工業株30種平均が大恐慌前の高値水準を回復したのは、25年後の54年だった。日経平均は15日、30年半という1世代分の時間を通過し、3万円台を一時回復した。日本株市場が証券民主化を進めるための機は熟している。

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滝田洋一
日本経済新聞社 編集委員
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分析・考察 株高の主役が外国勢なのもむべなるかな。世界的な株高の先導役は米国であり、グローバルな分散投資の一環として日本株にも投資資金が流れ込んでいるからです。だから今の日本株には、日経平均が初めて3万円に乗せた1988年のような熱気がないのでしょう。
ただし当時と同じなのは、経済政策協調のかけ声。合言葉はコロナとの闘いです。2月12日のG7財務相・中央銀行総裁会議でも、イエレン米財務長官は「「今こそ大胆な財政出動に踏み切るときだ」と日欧にも協調行動を促しています。
積極財政と歩調を合わせ金融の緩和も続き、世界的に「バブルへGO」の流れが起きています。国内の動向よりも、この流れが本尊のように思えます。
2021年2月15日 13:33いいね
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