富士通、東証問題で信頼失墜 根本から組織見直し

富士通、東証問題で信頼失墜 根本から組織見直し
富士通 再起動なるか(1)
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 ※『後日判明した障害の原因はネットワーク接続ハードディスクのマニュアル不備だった。システムを開発した富士通が、米企業からOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けていたストレージの仕様が変更されていたのにもかかわらず、マニュアルと設定値は従前のまま変わっていなかった。』

 ※ 日本の「IT関係」「コンピューター関係」全般に、ずっと纏わりついている話しだ…。

 ※ 「ハード」も、「ソフト」も、全て「舶来」「外来」のものだ…。

 ※ 何とか、「翻訳」して、「使いこなそう」としている…。

 ※ 上級幹部は、それなりに「英語力」も備わっているんだろう…。

 ※ しかし、末端の「実働部隊」は、どうなのか?OEM供給先から渡された「英文マニュアル」を、読みこなせるだけの「英語力」備えているのか?

 ※ 今の時代、別に、個人で備える必要はない…。ネットに上がっている文書(.html .pdf)だったら、Google翻訳にかけることができる…。

 ※ それができなければ、テキスト抽出して、「機械翻訳ソフト」にかければいい…。

 ※ 末端の実働部隊、そういう才覚・能力があるのか? そういう「機器、ソフト」は、備えているのか?

 ※ そこが改善されない限り、こういう問題は、繰り返し繰り返し、起きるだろう…。

『富士通が変わろうともがいている。コンピューターや通信機器で電機産業をけん引したのは今や昔。ハードからシステム構築、サービスへと時代の潮流が変わるのに乗り遅れ、2020年10月の東京証券取引所のシステム障害では世間の信頼も損なった。「大企業病」の克服には、組織体質から働き方まで根本から変えなければならない。富士通は再起動できるか。

「またか」社外取から厳しい指摘
「金融業界はまたかとあきれている」「タガが…

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20年12月3日夕、富士通の臨時取締役会はリモート形式にもかかわらず、異様な熱を帯びた。出席した4人の社外取締役から次々と投げかけられる厳しい指摘に、社長の時田隆仁(58)はただ黙って耳を傾けていた。

20年10月の東証システム障害では終日売買停止となり、調査委の報告書には「富士通の責任は重い」との文言が盛り込まれた

その2カ月前の10月1日、日本株の売買インフラを担う東京証券取引所で大規模システム障害が発生した。終日、全銘柄の取引が停止し、3兆円規模の売買機会が失われた。入社以来、システムエンジニア(SE)として金融畑を歩んできた時田は、10年に稼働した東証システムの運用にも関わった。「起きてはいけないことが起きてしまった」。事の重大さに青ざめた時田は自ら資料を取り寄せ、対応を指示した。

後日判明した障害の原因はネットワーク接続ハードディスクのマニュアル不備だった。システムを開発した富士通が、米企業からOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けていたストレージの仕様が変更されていたのにもかかわらず、マニュアルと設定値は従前のまま変わっていなかった。

富士通に「帰責性」認定

東証システムトラブルについて、オンライン記者会見で謝罪した富士通の時田社長(20年10月)

「マニュアル記載の誤りの原因および責任は作成者にある」。東証を傘下に持つ日本取引所グループの社外取締役で構成する独立調査委員会は報告書をまとめ、「富士通に帰責性があるといわざるをえない」と指摘した。

「想定が足りなかったとしか言えない」。システム障害対策チームを束ねる富士通副社長の古田英範(62)は唇をかむが、東証システムを巡る失態は今回が初めてではない。SEによるプログラムの設定ミスで全銘柄の取引が一時停止した05年、12年に続き3度目となる。

「ようやく変わろうとしている」

無策だったわけではない。「11・1を忘れるな」。05年のシステム障害が起きた11月1日に合わせ、富士通では毎年、顧客システムの保守や運用体制を総点検してきた。幹部が一斉に顧客先を訪れ、SEの役割分担や働きぶりなどをつぶさに調べたが、今回問題となったOEM製品のマニュアル記載はチェック項目から漏れ、見直されることはなかった。

20年12月3日の臨時取締役会では責任問題に話が及んだ。議長を務める、産業創成アドバイザリーシニア・アドバイザーの阿部敦(67)は東証社長の宮原幸一郎(63)が辞任したことに触れ、社外取に考えを問うた。「とどまって再発防止に取り組むべきだ」。全員がそう答え、時田を4カ月間の50%減俸とするなどの社内処分が決まった。阿部は言う。「富士通はようやく変わろうとしている。システム障害で痛みを感じたトップだからこそ責任をもって改革をやりきれるはずだ」

伸び悩むニッポンITの雄

富士通は1970年代、大型汎用コンピューターの開発で一躍、世界企業へと成長した。しかし、かつてのけん引役だったハードディスク装置、パソコン、携帯端末、半導体製造事業を次々と売却。20年3月期の連結売上高はピークだった01年3月期比3割減の3兆8577億円まで縮んだ。

足元では高速通信規格「5G」の基地局向け事業が好調で、21年3月期の連結純利益は過去最高となる1770億円を見込む。ただ、主要事業では対応の遅れが目立つ。

機器類に代わって力を入れたシステム構築では、特定のベンダーに仕様設計から開発、構築まで丸投げする日本特有の商慣行からシェアを伸ばした。障害を起こしても東証システムを担当し続けたのはこうした理由からだ。だが政府が省庁横断システムに米アマゾン・ドット・コムのクラウドの採用を決めるなど、足元では低コストの外資系の勢力に侵食されつつある。

新たに市場が立ち上がったデジタルトランスフォーメーション(DX)支援では戦略系コンサルティング企業の後じんを拝する。いずれも既存事業で一定のシェアを持つ分、環境変化に柔軟に対応できなかった。

時田は19年の社長就任の前から改革の必要性を肌で感じていた。きっかけは17年の英国駐在。1年ごとの成果を厳格に評価される現地社員は、シビアな環境ゆえに仕事へのこだわりが日本人社員より強く、変化にも柔軟に対応する。「本当に同じ富士通の社員なのか」。驚きから次第に、欧米では一般的な、ポストごとに最適な人材を充てる「ジョブ型雇用」こそが再浮上のカギを握ると確信するようになった。

ジョブ型導入、年功序列崩す

19年6月、社長に就いた時田が手をつけたのは徹底的な組織・人事改革だった。組織の硬直化を招いた年功序列を崩そうと、ジョブ型雇用を導入。新しい風を吹き込む狙いから外資系の幹部人材を積極登用した。

社員の行動原理である「Fujitsu Way」も12年ぶりに改訂した。社会における存在意義を自社の「パーパス」とし、担当企業ばかりに目を奪われ、たこつぼになっていた企業風土を変えようと動いた。

いずれの改革にも共通するのがオープン化だ。制度上の、あるいは心理的な壁を徹底的にぶち壊し、融通無碍(むげ)な状態になれば「人が自由に移動し考え方が広まる。そうすれば企業風土も変わる」と時田は強調する。

テレワーク拡大は後戻りせず

東証のシステム障害は時田の富士通改革に影を落とした。やり玉に挙がったのがSEのテレワーク拡大だった。SEの大半は通常、顧客企業の一室を間借りし、数年単位で客先に常駐しながらシステム開発や改良、運用などの業務に当たる。時田はSEとしての経験から業界慣例であるこの「客先常駐」を改められると確信し、金融機関などと話し合いを進めてきた。

「うちでも同様の障害が起こるのではないか」。東証問題を機にSEが近くにいないことに対する不安が広がったが、あしきなれ合いの解消にもつながると考え、揺るがなかった。「常駐を解除したらチェックが甘くなるわけではなく別次元の話」と、客先常駐プロジェクトの7~8割をテレワークに切り替えた。

客先常駐がなくなりテレワークで働くSEの近藤氏

富士通でSEとして働く近藤瑞樹(24)も当初は客先常駐の解除に懐疑的だった。だが実際にテレワークへと切り替え、「むしろ業務の精度が高まった」と感じている。

近藤の顧客企業には約50人のSEが働く。同じオフィスにいても相手側の担当者との連絡は主に電話が使われていた。テレワークと同時にチャットツールでやりとりできるようになり、「仕様の擦り合わせ、資料の細かなニュアンスも気軽に確認できる。互いにコミュニケーションを重視するようになり、同じオフィスにいた時よりもやりとりは密になった」と話す。

「現場も同じ課題を認識」

人が変われば会社も変わる。言うは易しだが、東証システム問題での信頼失墜や新型コロナウイルスの逆風下に、国内外で13万人の社員を抱える大企業を変えるのは容易ではない。

時田は言う。「社長になって分かったが、実は現場の社員も同じような課題認識、問題意識を持っていた。私はそのスイッチを押すだけ」

入社年次ではなくジョブ型で次代の成長を担う最重要事業のトップを抜てきしたのはその一例だ。東証問題で失った信頼を取り戻すためにも、自己破壊の手は緩めない。

=敬称略、つづく

(林英樹、水口二季が担当します)