米のミャンマー制裁、国軍狙い撃ち

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『【ワシントン=中村亮】バイデン米政権が11日発表したミャンマー制裁の第1弾は対象を国軍に限定した。クーデターを起こした責任を明確にしつつ、市民生活に悪影響を及ぼさないためだ。強硬な制裁でミャンマーを孤立させれば、影響力拡大を狙う中国への依存の深まりに拍車をかけてしまうとの配慮もにじむ。

「きょうの行動は民主主義や人権を追求するミャンマー国民を支持する明確なメッセージだ」。ブリンケン国務長官は11日の声明で、国軍を標的にした制裁の狙いを強調。イエレン財務長官も「国軍が方向性を変えなければ追加措置を講じる用意がある」と警告した。

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米財務省が11日に制裁を科した10人はいずれも国軍出身だ。ミン・アウン・フライン国軍総司令官や国軍出身のミン・スエ副大統領ら6人はクーデターに直接関与したと指摘。ミャ・トゥン・ウー国防相やティン・アウン・サン運輸・通信相など残る4人は総司令官が設置した最高意思決定機関「行政評議会」に入り、軍政移行に関わる。

バイデン政権はミャンマー政府が米国に持つ資金10億ドル(約1050億円)以上についても国軍幹部によるアクセスを制限した。国軍や国防省向けの物資の輸出も制限対象にした。国軍幹部への制裁は少数民族ロヒンギャ問題で発動済みで、軍政移行を阻止する効果は限られるとの見方もある。

米ウィルソン・センターのルーカス・マイヤーズ氏は「クーデターに対抗する重要な最初のステップではあるが、状況が大きく変わると思わない」と指摘。「新型コロナウイルスによる経済悪化も踏まえ、制裁対象を国軍に絞って一般市民に及ぼす悪影響を最小限にとどめようとした」と分析する。

米政権はミャンマー産の宝石を扱う3社を制裁対象としたが、3社を傘下に置く国軍系企業のミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)は対象に指定しなかった。

MEHLは軍人や退役軍人を株主とし、傘下に抱える企業群の事業範囲はインフラや金融など多岐にわたる。そこに制裁を科せば一般市民の生活に害が及ぶとみて制裁対象を絞り込み、国軍側の出方をうかがうことにしたとみられる。

バイデン政権はミャンマーの軍政回帰を阻止するため、同盟国や友好国と連携して国際包囲網をつくりたい考えだ。

欧州では英国のラーブ外相が11日、ツイッターで「国際社会はミャンマーのクーデターを容認せず、これに対応をとる責任がある」と強調するなど、国軍に対する制裁の検討に入った。欧州連合(EU)も開発援助や貿易の見直しを含めて国軍への対抗措置を検討する。

今後の焦点はミャンマー投資が多いアジア諸国が追随するかだ。

ブリンケン米国務長官は9~10日、日本やインド、シンガポールの外相と相次いで電話協議した。プライス国務省報道官は10日の記者会見で、国軍への対応について「協調的な発表になる」と指摘しており、ブリンケン氏は日印などに対抗措置を講じるよう働きかけたとみられる。

マイヤーズ氏は「国軍は中国への過度な依存を望んでいない」と指摘するが、強力な経済制裁でミャンマーを孤立させれば中国が経済支援を通じてミャンマーに接近するとの見方は根強い。バイデン政権は中国や国軍の動向も見極めながら、圧力の強度を調整していくことになりそうだ。

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