脱炭素 「国境調整」で欧米中駆け引き 日本も対応急務

脱炭素 「国境調整」で欧米中駆け引き 日本も対応急務
編集委員 西村博之
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK056SZ0V00C21A2000000/

 ※ ウンザリな話しだ…。

 ※ 手を変え品を変え、繰り返し繰り返し、「自国第一主義」「新重商主義」を「美しい”大義”」「美しい”言説”」でくるんだ波が、襲ってくる…。

 ※ 世界経済、世界政治の「極」が、「大西洋の両岸」にあるんだから、しょうがない…。

 ※ 日本が「手を組むべき」近場のお相手は、あまりに「性情」「ものの考え方」「社会体制」の異なる国々と来ているんで、是非もない…。

 ※ まあ、地政学的な宿命だ…。

『脱炭素を前面に掲げる米バイデン政権の誕生を受け、温暖化対策が不十分な国からの輸入品に事実上の関税を課す「国境炭素調整」をめぐる駆け引きが活発になってきた。導入を予定する欧州は米国に同調を呼びかけ、その動向に中国も神経をとがらせる。貿易の波乱要因になりうるだけに日本も目が離せない。

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1月21日、欧州委員会のティメルマンス上級副委員長は待ち…

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1月21日、欧州委員会のティメルマンス上級副委員長は待ちわびたように就任直後のケリー米大統領特使に電話をかけた。気候変動対策を担う両者は国境炭素調整措置(CBAM)をめぐり意見交換した。2023年に制度を導入する欧州連合(EU)は20年12月の報告書で「欧米共同で世界のひな型を作る」ことを提言しており、同様の呼びかけをしたとみられる。

欧州委員会のティメルマンス上級副委員長

米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は「CBAMは今後の国際協調を左右する政治・経済両面で極めて重要な問題だ」と話す。米欧が連携できるかは日本も含め世界に影響を及ぼすとも指摘する。

CBAMは「国境炭素税」とも呼ばれ、要諦は環境対策にコストをかけた域内製品と、そうでない輸入品との価格差をなくす点にある。規制が緩い国からの輸入品に対しては生産時に出した二酸化炭素(CO2)量に応じて関税や排出枠の購入義務を課す。これにより域内企業の競争力を保ち、同時に規制が不十分な国に対策を促す。

EUは産業ごとに排出量の上限を定め過不足を取引する排出枠取引制度があり、これを実質的に世界に広げる動きだ。域内企業がもつ環境技術やノウハウを経済成長につなげる狙いもある。

バイデン大統領は選挙時に温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の合意を満たせない国からの製品に「炭素調整料」を課すと公約しており、EUは共同歩調をとれると踏んでいる。米商工会議所もバイデン政権誕生の前日に「市場原理に基づく温暖化ガスの削減を支持する」と表明、連邦レベルの炭素税やCBAMに前向きな姿勢を示した。

温暖化ガスの排出量が世界最大の中国はCBAMが「保護主義を招く」とけん制してきた。だが国内では1月から排出量の4割を占める火力発電業界を対象に排出枠取引が始まった。こうした国内制度が定着すればEU同様、国境での炭素調整は進めやすくなる。

 最大の温暖化ガス排出国の中国も対応に乗り出した(江蘇省にある石炭火力発電所、CFOTO=共同)

危機感を抱くのが日本だ。「米国や中国に出遅れれば日本がルール作りで不利になる」と経済産業研究所(RIETI)の渡辺哲也副所長は話す。そこで同研究所は昨年末、CBAMの研究会を設けた。政府は脱炭素に向け国内での炭素税や排出枠取引制度の検討に着手したが、並行して国境での炭素調整をめぐる日本の戦略をさぐる。

制度導入にあたっては課題も多い。第一に貿易への影響。世界貿易機関(WTO)は「公徳」や「天然資源の保護」が目的の貿易制限を認めるが、CBAMがこれに当たるかは明確でない。

第二に対象の業種。当初は鉄鋼、セメントなどエネルギー集約型の業種が挙がるが、将来は電気自動車(EV)の覇権を競うEUが、電源の脱炭素化が遅れる中国製の輸入を阻むとの見方もある。輸入品が生産時に出す温暖化ガスをどう測るかの基準も含め、業界の激しい攻防が予想される。

企業が生産コストの引き下げを狙って規制の緩い国に工場を移す「炭素漏洩(カーボンリーケージ)」への対策も焦点だ。規制が緩い国からの輸入に関税を課すと同時に、そうした国への輸出には逆に関税を「還付」し、より効果的に工場の域外シフトを防ぐ案もある。

早稲田大の有村俊秀教授らの研究では対象業種や課税基準、還付の有無で各国・産業への影響や脱炭素の効果は顕著に変わる。「悪魔は細部に宿る」と言われるゆえんで、利害調整は容易でない。ともすれば欧米中が三つどもえ、あるいは2対1の構図で争う「炭素貿易戦争(カーボン・トレード・ウォー)」を招くと警告する専門家もいる。

脱炭素への起爆剤にも毒薬にもなる国境炭素調整。対立の芽を摘み、国際協調の好機とするには日本を含む各国・地域の緊密な対話が必要だ。

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中林美恵子のアバター
中林美恵子
早稲田大学 社会科学部教授
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今後の展望 1月28日の記事にもコメントしたが、バイデン政権は産業構造の転換をも視野に入れている。このままいけば、日本はかつてのように欧米(または中国も含めた)ルール作りに従うパターンになる。結局、右往左往ばかりさせられる。この突破口は、1月のコメントで指摘したように、環境技術と通商を、安全保障へとリンクさせて議論する日本の交渉力と発想力だ。今は残念だが日本は「その場に居ること」から目指さねばならない。久々の大変革時となる覚悟をもって、ルール作りへの参画に期待したい。
2021年2月12日 13:59いいね
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鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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ひとこと解説 EUの炭素税の仕組みは、かつて保護主義的と言われた農業政策の国境課徴金のやり方と全く同じ。その点ではEUはすでに自分たちが持っていた政策ツールを活かして、それを世界のスタンダードにしていこうとする姿勢がみられる。EUは先にアイディアを出し、規範形成を誘導することで自分たちに有利になるようなルールを作ることに長けている。これは遠藤乾さんと共編した『EUの規制力』で論じたが、その時と何も変わっていない。
2021年2月12日 12:50いいね
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小平龍四郎のアバター
小平龍四郎
日本経済新聞社 編集委員
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別の視点 このような記事を読むたびに痛感するのは、キャッチアップはするけどルールメーキングには加わらない(加われない)日本の実情です。「国境炭素税」のほか「環境タクソノミー」や脱炭素に関する「情報開示」など、広義の環境外交は全て米欧中の覇権争いの構図です。外堀を埋められた後になって「それは困る」と少しだけ押し戻す、という日本のいつものパターンが繰り返されるのでしょうか。
2021年2月12日 11:47 (2021年2月12日 13:30更新)
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