世論読み違え迷走 森会長辞任の舞台裏

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 ※ 『もっとも「身内」である組織委幹部の大半は森氏の調整力に頼るところが多く、続投を前提に動いて事態を収拾できるとふんでいた。

IOCは森氏の記者会見後「この問題は決着したと考えている」との声明を出した。日本政府関係者によると、組織委幹部とIOCで打ち合わせたうえでの反応だった。当初、組織委は12日の臨時の会合で森氏が謝罪した上で、男女共同参画に向けたプロジェクトチームを発足させて幕引きを図るつもりだった。

「何とか乗り切れる」。そんな楽観論を打ち消していったのは国内外からの世論や選手の反発だった。五輪会場などのボランティアや聖火ランナーに辞退者が相次いだ。これを懸念したスポンサー企業も批判する側に回った。』

 ※ IOCも、スポンサー企業も、「読み違えた」のは、「世論」では無く、「世の中の潮流の変化」「世の中の構造の変化」だろう…。

 ※ 一昔前だったら、新聞・テレビなどの「大手メディア」「マスコミ」を操作することで、「流れを作り出すこと」が可能だったろう…。

 ※ しかし、世の中、もはや、「スマホ社会」「SNS社会」へと移行してしまっているんだ…。

 ※ その中で「流れを作り出すこと」は、容易ではない…。

『女性蔑視発言をした森喜朗元首相が東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長を退く。国内外に広がった世論の反発に憂慮したスポンサーらや国際オリンピック委員会(IOC)の突き放した対応が森氏を追い込んだ。

「いろんなところに迷惑をかけるから」。森氏は11日、安倍晋三前首相ら主要な関係者に電話で辞意を伝えた。午後には組織委副会長で自民党衆院議員の遠藤利明氏らを都内に呼び「辞めると決めた。本当に悪いな」…

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夫人から「『あなた辞めたら』と言われたんだ」とも明かしたという。

記者会見する森氏(4日、東京都中央区)

遠藤氏は「10年以上ずっと一緒にやってきましたから、とても残念です」と話した。「後任は女性がいい。五輪相の橋本聖子が国会議員を辞職してやるのがいいのではないですか」と続けたものの、森氏は日本サッカー協会元会長の川淵三郎氏を推すと明言した。

森氏が日本オリンピック委員会(JOC)の会合で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言したのは今月3日だった。当初、辞任まで発展するとの危機感は乏しかった。

森氏は4日の記者会見で「不適切な表現で深く反省している。撤回しおわびしたい」と謝罪した。「皆さんが『邪魔だ』と言われれば、老害が粗大ごみになったかもしれませんから掃いてもらえばいいんじゃないですか」とも語った。

もっとも「身内」である組織委幹部の大半は森氏の調整力に頼るところが多く、続投を前提に動いて事態を収拾できるとふんでいた。

IOCは森氏の記者会見後「この問題は決着したと考えている」との声明を出した。日本政府関係者によると、組織委幹部とIOCで打ち合わせたうえでの反応だった。当初、組織委は12日の臨時の会合で森氏が謝罪した上で、男女共同参画に向けたプロジェクトチームを発足させて幕引きを図るつもりだった。

「何とか乗り切れる」。そんな楽観論を打ち消していったのは国内外からの世論や選手の反発だった。五輪会場などのボランティアや聖火ランナーに辞退者が相次いだ。これを懸念したスポンサー企業も批判する側に回った。

IOCの態度の変化が明確になったのが9日夜だった。声明で「完全に不適切だ。森会長の最近の発言はIOCの公約や(改革指針の)五輪アジェンダ2020に反している」と記した。

 記者会見するIOCのバッハ会長(左)と森氏(2020年11月、東京都中央区)

五輪憲章は人種、肌の色、性別などを理由に「いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」とうたう。森発言を放置すればIOCの姿勢と矛盾すると受け止められかねず態度を翻すしかなかった。

大手スポンサーなどの批判も痛手だった。バッハ会長らIOC側は森氏に「スポンサーの反発が強い」と訴えた。IOCなどの最高位スポンサーであるトヨタ自動車は10日に「誠に遺憾だ」との豊田章男社長のコメントを発表した。

スポンサーと並びIOCの収入の柱である放映権料に関係する米テレビ局NBCも、公式ニュースサイトに森氏の辞任を促す意見記事を載せた。

東京都や組織委には合計5千件以上の電話やメールがあり、大会ボランティアや都市ボランティアの辞退者は500人以上となった。

IOCの2度目の声明に加え、追い打ちをかけたのが東京都の小池百合子知事だった。10日、来週で調整していた森氏とバッハIOC会長、橋本五輪相との4者協議に参加しないと表明した。

具体的な準備を進めるため話し合うはずだったものの、小池氏は「ここで会談してもポジティブな発信にはならない。出席することはない」と断じた。外堀は埋まった。

衆院予算委で答弁する菅首相(8日午前)

一連の過程で菅義偉首相が「鈴つけ役」として動く場面は見られなかった。

11日、森氏は首相に電話し「迷惑をかけて申し訳ない」などと陳謝した。首相は森氏の後任に女性や若手らの起用を提案したとされるが、森氏は聞き流した。

この間、首相や加藤勝信官房長官ら政府高官や自民党幹部が身を引く決断を促した形跡はない。自民党でなお影響力を保持する森氏に引導を渡すことなく、首相は「組織委員会の中で決定してもらう」などと進退への言及を避け続けた。

「邪魔だと言われたら掃いてもらったらいい」と発言していた森氏。引導役不在のまま自ら辞任を選んだ。組織委、IOC、菅政権は世論の反発の強さを読み誤り、事態の収拾に遅れた。それは東京五輪そのもののイメージを傷つける結果を招いた。