ミサイル撃たない金正恩氏、「内憂」払拭へ打った布石

ミサイル撃たない金正恩氏、「内憂」払拭へ打った布石
編集委員 峯岸博
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK083N80Y1A200C2000000/

 ※ まあ、バイデン政権の4年間は、大きな「変化」が起きる可能性は、低いだろう…。

 ※ 米国の立場では、「暴発」をコントロールしながら、「生かさず〇さず」を継続すればいいだけだからな…。

 ※ バイデン氏には、トランプ氏のような「大向こうウケ」を狙う「ケレン味」も無さそうだしな…。

 ※ あるとすれば、前に紹介したような「国際情勢」の激変に乗じて、「北朝鮮カード」が高騰するチャンスだけだ…。

 ※ それも、「他人頼み」の話しで、「自分で情勢を作り出すこと」は、なかなか難しかろう…。

『米大統領選からすでに3カ月、大統領就任式からも3週間が過ぎた。超大国の政権交代期に日米韓が北朝鮮への警戒を強めるなか、金正恩(キム・ジョンウン)総書記は弾道ミサイル発射実験などの軍事挑発を控えている。米朝首脳会談の頓挫や経済悪化などを受け、「政策的には2018~19年の攻めから守りに転換した」(北朝鮮関係筋)という金正恩体制でいま何が優先されているのか。

「最悪の中の最悪が続いた難局は大きな障害を…

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「最悪の中の最悪が続いた難局は大きな障害をもたらした」。5年ぶりに開かれた第8回朝鮮労働党大会(1月5~12日)で、金正恩氏は「最悪」との言葉を重ねつつ、自らの苦境を隠さなかった。党大会の演説や決定書をつぶさに読み解くと、バイデン米政権を核・ミサイルの増強路線で威嚇する外向けの勇ましさよりも、むしろ北朝鮮が抱える「内憂」のほうがくっきりと浮かび上がる。

北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会総会で発言する金正恩総書記(8日、平壌)=朝鮮中央通信ロイター

規律・監視さらに強化

「強靱(きょうじん)な規律を立て、権勢と官僚主義、不正・腐敗を根絶するためには規律監督体系を新しく確立しなければならない」(1月10日の金正恩氏の演説)

党大会で発表された人事で、専門家の関心をひそかに集めたのが、「規律調査部長」のポストだ。党中央検査委員会の改編強化とともに新設された。金正恩氏はかねて党内にはびこる官僚主義、権力乱用に頭を悩ませ、厳しく対処してきた。それでも北朝鮮ではいまも「商売を始めようとすればハンコが5つも6つも必要で、その一つ一つで当局者に賄賂を渡さなければいけない」(消息筋)というように汚職が横行し続けている。

商売をしなければ生き延びられない市民の間で汚職と抑圧に不満が募り、実際にあちこちの市場でトラブルが生じているという。国家や党から拠出した資金が党の中間管理職によって横流しされるケースも多く、金正恩氏は党官僚の不正、腐敗防止の徹底に乗り出した。

本欄「正恩氏がクーデターより警戒する相手」(2018年9月14日配信)でも取りあげたように、軍や党を掌握した37歳の若い最高権力者が長期政権を視野に入れたときに気がかりなのは民意だ。今は大多数の「声なき声」でも、いつか不満が爆発して体制を揺るがしかねない波乱の芽に映っているのではないか。規律や監視の権限を中央に集めて強化するのはそのためだ。父、金正日総書記時代の「先軍政治」に対し、金正恩氏がたびたび口にし、党大会の決定書にも明記された「人民大衆第一主義(政治)」のスローガンは同じ文脈でとらえることができる。

北朝鮮はコロナ対策のため昨年1月から外国との境界を封鎖し、貿易量が激減した(2月、平壌)=AP

指導部の「世代交代」にアクセル

「主体革命の唯一無二の継承者であり、領導者であり、わが国家の強大性の象徴であり、全ての勝利と栄光の旗印である金正恩同志を朝鮮労働党の首班として変わることなく高く奉じる」(党大会で採択された決定書)

党大会では最高幹部の大幅な入れ替えがあり、首相などを務めた高齢の朴奉珠(パク・ボンジュ)党副委員長が全てのポストを退き、金正恩氏の最側近とされる趙甬元(チョ・ヨンウォン)党第1副部長が党の最高意思決定機関である政治局常務委員に選出された。政治局の局員候補から政治局員を経ずに常務委員にスピード出世した。

新指導部には新顔がめだつ。祖父や父の時代を支えた長老の引退と実力主義の人材抜てきが特徴だ。金正恩氏は党の中核メンバーに1950年代以降に生まれた人物を次々と登用し、世代交代のアクセルを踏んだ。北朝鮮関係者によると、金正恩氏が若年層から一定の評価を受けているのが、経済分野の規制緩和と、長幼の序が色濃く残る国柄で世代交代を進めてきた点だ。金正恩氏の政策ブレーンも50代前後の海外留学組が中心との情報がある。朝鮮労働党の指導理念は金王朝3代に絶対服従する「唯一指導体系」だが、今回の党大会では「主体革命の唯一無二の承継者で領導者」と表現を強めた。「金正恩体制が完成形に近づいた」とみる専門家もいる。

北朝鮮の朝鮮労働党大会に出席した参加者(1月12日、平壌)=朝鮮中央通信・共同)

「冷戦期の社会主義国家」ほうふつ

「全ての幹部と党員と勤労者は、第8回党大会が指し示した進軍方向に従ってわれわれ式社会主義の新たな勝利を収めるために力強く闘争すべきである」(党機関紙「労働新聞」の2月5日付社説)

新型コロナウイルスは北朝鮮の経済計画を大きく狂わせた。党大会で決まった新たな経済5カ年計画は「冷戦期の社会主義システム」(北朝鮮専門家)をほうふつとさせる姿に逆戻りした。金正恩時代にみられた、市場経済をある程度取り入れながら富裕層が稼いだ富を国家が吸い上げる方式ではなく、物資を国家に集中させて管理・分配する旧来型の経済運営を志向する姿勢を前面に打ちだしたからだ。それが、政策の再転換を意味するものか、新型コロナを乗り切るための時限的な措置なのかは不透明だ。

2月8日から平壌で開いた党中央委員会総会でも、金正恩氏は金属工業や化学工業に投資を集中し、鉄鋼や化学肥料の生産拡大が必要だと強調した。韓国貿易協会の報告書によると、北朝鮮屈指の大規模な肥料工場も最近、物資不足で稼働を停止した。今のところ北朝鮮から物価の大きな変化が伝わってこないのは、国家が非常時用の備蓄をはきだしているとの指摘もある。

国際社会からの制裁と大規模水害に加え、厳戒態勢下での貿易激減による三重苦が北朝鮮経済に追い打ちをかけ、長期戦には耐えられないとの見方が強い。党大会でも中国傾斜の姿勢を鮮明にした金正恩氏が訪中のタイミングを探っているとの観測も浮上している。

峯岸博(みねぎし・ひろし)
1992年日本経済新聞社入社。政治部を中心に首相官邸、自民党、外務省、旧大蔵省などを取材。2004~07年ソウル駐在。15~18年3月までソウル支局長。2回の日朝首脳会談を平壌で取材した。現在、編集委員兼論説委員。著書に「韓国の憂鬱」、「日韓の断層」(19年5月)。
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