バイデン時代の新たな米中関係 呉軍華氏

バイデン時代の新たな米中関係 呉軍華氏
日本総合研究所上席理事
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 ※ 『その背景には、米中のパワーバランスで中国が優位に立ちつつあるという判断があるのだろう。』

 ※ さあてね…。

 ※ その「判断」が、そもそも「正しい」のかどうか…。

 ※ 「己を知り、敵を知らば、百戦危うからず。」…。

 ※ そして、「敵を知る」ことよりも、「己を知る」こと、すなわち「自分自身の力量」を、正確に測ることの方が、はるかに難しい…。

『トランプ政権時代、劇的に悪化した米中関係が、米国の政権交代で転機を迎えようとしている。バイデン政権が発足して1カ月もたたないが、米中関係に新たな構図がすでに見えてきたからだ。

中国の「戦略的定力」と米国の「戦略的忍耐」――。これが新たな構図だ。「戦略的定力」とは確固たる信念と意志を持って目標を戦略的に達成するという心構えで、かねて習近平(シー・ジンピン)国家主席が主張してきた。その背景には、米中の…

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その背景には、米中のパワーバランスで中国が優位に立ちつつあるという判断があるのだろう。バイデン政権の発足を挟んだ中国の言動からも、習指導部の自信がうかがえる。

呉軍華 日本総合研究所上席理事

北京時間の1月21日。バイデン大統領の就任式が行われている最中に、中国はトランプ前政権の高官28人に制裁を科すと発表した。その4日後、世界経済フォーラムのオンライン形式の会議で講演した習主席は、世界の進むべき方向を提示しつつ、「新冷戦」やデカップリング(分断)といった状況を強い調子で糾弾した。さらに2月2日、米中関係全国委員会のオンライン会議で、楊潔篪(ヤン・ジエチー)政治局員は「極端に誤った反中政策を実行した」とトランプ政権を激しく批判したうえで、バイデン政権に対し、誤った中国認識の是正や米中交流の再開といった具体的な注文を突き付けた。

一方で、ソフトな一手も忘れてはいない。1月14日、新華社は習主席が米スターバックスの実質的創業者であるハワード・シュルツ氏宛てに手紙を書いたと伝えた。習主席は手紙の中で、中国がスターバックスを含む各国の企業に更なる発展の可能性を提供すると約束しつつ、シュルツ氏に米中経済協力の深化と両国関係の発展に積極的に努力してほしいと書いたという。

これに対し、バイデン政権の動きは穏やかだ。前政権の強硬姿勢を継承しつつも異なる手法で中国に臨むという大統領選挙キャンペーン以来のトーンが続く。その中で唯一、筆者の目を引いたのは、1月25日の記者会見でのサキ大統領報道官の「多少の戦略的忍耐で(中国に)対応していきたい」という発言だ。

「戦略的忍耐」が、失敗したオバマ政権の北朝鮮政策を連想させることを嫌ってか、後に発言を修正したが、筆者は「戦略的忍耐」こそがバイデン政権の対中政策の基本方針になるのではないかとみる。国際協調と同盟国との連携がバイデン政権の対中戦略の柱だが、少なくとも米欧間でそれが実る可能性は低い。

バイデン政権の発足直前、中国と欧州連合(EU)の投資協定が大筋合意に達した。その後、メルケル独首相とマクロン仏大統領は、対中国で米国と共闘する意思がないと、明確に表明したという。「忍耐」は結果的にバイデン政権が取りうる唯一の「戦略」になるかもしれない。

「戦略的忍耐」で、対決に向かう米中関係の流れはいったん止まるだろう。だが、これで安定軌道に入ったとみてはならない。「戦略的定力」の増強の行方とバイデン政権の忍耐力次第では、中長期的にはむしろ一層激しく揺れ動くリスクがある。