印中両軍、係争地の湖から撤退開始 協議継続へ

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『【ニューデリー=馬場燃、北京=羽田野主】インドと中国の両軍が国境の係争地から撤退を開始した。インドのシン国防相は11日、まず対立が最も激しかった印北部ラダック地方の湖から両軍が引き揚げ始めたことを議会で明らかにした。9カ月続いていた印中対立は転機を迎えたが、両軍が完全に撤退するかどうかはなお予断を許さない。

中国国防省も10日に両軍が合意し、湖から撤退を始めたと発表していた。シン氏は「未解決の問題があり、これからも協議を続ける」と語り、両軍は完全撤退に向け話しあいを継続する。

印中両軍は印北部ラダック地方にある係争地の湖からまず撤退を始めた=ロイター

印中はヒマラヤ山脈などで国境が約3千キロメートル画定していない。両軍は2020年5月からにらみ合いを始め、その翌月には45年ぶりに死者を出した。係争地は湖、渓谷、温泉といった複数の場所にわかれ、両軍は最大で総勢10万人程度の兵士を配置していた。

なかでも湖では衝突が何度も起こり、20年9月には「相手が威嚇射撃した」と互いに非難しあう事態に発展した。45年ぶりの発砲があった。この湖は全長が約135キロメートルあり、そのうち約3分の2が中国、約3分の1がインドの支配下にある。双方が領土を構えることから偶発的な衝突が起こりやすかったが、ひとまず緊張緩和が期待できる。

ただ早期に完全撤退が実現するかどうかは依然として不透明な面も残る。シン氏は「中国が係争地に多数の兵士を配置してきたため、我々も対抗せざるを得なかった」との見解を示した。完全撤退には少なくとも両軍がにらみ合いを始める前の配備にそれぞれ戻す必要がある。両軍は双方の軍備拡張を批判してきた経緯があり、撤退する場所や距離などの細かい条件を詰めなくてはならない。

両軍の司令官は解決策を探るため、これまでに9回の協議を重ねてきた。実は両軍は20年6月22日にも係争地から引き揚げることでいったん合意していた。同年7月5日にはインドのドバル国家安全保障補佐官と中国の王毅(ワン・イー)外相が協議。外交ルートでも早期に撤退する方針を確認したが約束は守られず、逆に両軍は衝突を重ねて緊張関係を強めた。

インドは長引く中国との係争地での対立を背景に、独自の経済・外交政策にまい進してきた。

経済面では中国の製造業からスマートフォンのアプリまでインドの国内市場から排除し、代わりに地場製造業の底上げをめざしている。これまでインドは中国を含めた各国との「等距離外交」を貫いてきたが、最近は「自由で開かれたインド太平洋」をかけ声に米国、日本、オーストラリアとの連携を強め始めた。仮に国境問題が解決した場合に、中国とどのような関係を改めて構築するかが注目される。

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