東北被災地、かさ上げ造成の3割空き地 旧時代の復興が壁

東北被災地、かさ上げ造成の3割空き地 旧時代の復興が壁
東日本大震災10年 検証・復興事業③
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『「176平方メートル、795万円」「217平方メートル、990万円」――。岩手県大槌町の「空き地バンク」のサイトに載った町役場周辺の区画図に、売却・賃貸物件の赤い印が30個近く並んでいる。町は土地取得や住宅建設に200万円以上の補助金を出すが「住宅再建のニーズは一段落し、空き地はなかなか埋まらない」と担当者はこぼす。

【前回記事】

水産加工の沈下やまず 津波被災地「空白」埋める挑戦
2011年の東日本大震災で町の中心部は高さ10メートルを超す津波にのまれ、壊滅状…

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前年に過疎地域に指定されていた町は、役場周辺の地区を震災前の半分以下に集約し、161億円かけて2.2メートルかさ上げした。

その間にも人口減は加速し、20年春の段階で造成地の3分の1は使う当てがないままとなっている。15年まで町長を務めた碇川豊氏は「町内に就労先となる産業が少なかったことも影響した」と話す。

岩手、宮城、福島3県の津波被災地では、浸水した地域をかさ上げし、土地や道路の形を整える「土地区画整理事業」が広く行われた。対象は沿岸部の21市町村、計1890ヘクタールで東京都新宿区の面積に匹敵する。総事業費は20年6月時点で4627億円に上り、ほぼ全額が復興交付金などの国費でまかなわれた。

区画整理による「復興」の原点は1923年の関東大震災に遡る。

震災で旧東京市の4割強の面積が焼失した後、帝都復興院総裁に就いた後藤新平を中心に、復興事業として初めて大規模な区画整理が行われた。靖国通りや昭和通りなどの幹線道路と共に街並みが整備され、東京は10年足らずで近代都市に生まれ変わった。

そのノウハウは戦後、空襲で焼けた各地の市街地整備にも生かされ、区画整理は復興事業の定石となってきた。

国土交通省の2020年5月時点の調査によると、3県で区画整理が行われた65地区の宅地の32%は未活用の状態だった。未活用が5割を上回る地区も6つあり、岩手県陸前高田市の今泉地区では7割近かった。

岩手県沿岸部の12市町村の人口は、震災前年から20年までで17%減少。震災後に内陸部に移った地権者の多くは、仕事や子どもの通学を理由に戻っていない。固定資産税の負担などを懸念して土地を売りに出すケースも相次ぐ。

「右肩上がりの時代に確立された復興のあり方が、現状にそぐわなくなっている」と、日本大の大沢昌玄教授(都市計画)は指摘。「将来像を複数の自治体で共有し、広域的な視点で復興事業の対象を精査すべきだ」と話す。

今回も区画整理によって街の魅力が高まった例はある。宮城県名取市の閖上地区では区画整理とともに小中一貫校や保育所が重点的に整備され、宅地の分譲希望者が殺到して若い世代も増えた。

震災の痛手を乗り越え、かさ上げによって安全性を高めた土地をどう生かすか。国全体が人口減に直面するなか、定石にとらわれない新しい街づくりの模索はこれからも続く。

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