[FT]米リベラル派裁判官、勇退でバイデン大統領に好機

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 ※ 米国の「法の支配」を支えている「屋台骨」が、こういう制度であるわけだ…。

 ※ そして、連邦最高裁判事の地位が、「終身制」であることが、様々な「彩(あや)」を生じさせる…。

 ※ そもそもが、任命自体、極めて「党派性」の強いものであるようだ…。

 ※ それと、上院での「民主党の優位」なるものが、「薄氷」であることも、うかがわせる…。

『バイデン氏の米大統領就任以降、高齢のリベラル派裁判官が相次いで自発的に引退している。その数は今後も増える見通しで、最高裁の最高齢判事が加わる可能性もある。就任早々、バイデン大統領は連邦司法制度に自らの足跡を残す手腕を試す機会を与えられた形だ。

トランプ前大統領は4年の在任期間中、終身職である連邦裁判官を矢継ぎ早に指名し、米国の司法に長期にわたる影響を残した。民主党は今、トランプ氏の残した傷痕を癒や…

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民主党は今、トランプ氏の残した傷痕を癒やそうとしている。(編集注、連邦裁判官は大統領が指名、上院の助言と承認を得て任命される。弾劾手続き以外では罷免されない)

トランプ氏は在任4年で54人の連邦控訴裁判所(高裁)判事を指名した。米ピュー・リサーチ・センターによると、オバマ元大統領が8年間で指名した数より1人少ないだけだ。米シンクタンク、ブルッキングス研究所のラッセル・ウィーラー氏の分析では、トランプ氏は合計234人の連邦判事を指名した。2020年11月3日の大統領選挙で敗北して以後も14人を指名している。

バイデン大統領は、トランプ氏に匹敵するような判事指名をなし遂げるという課題を背負っている。それができなければ、医療保険制度から金融規制にいたるまで幅広い分野でリベラルの政策理念が長期的に退潮することにもなりかねない。

「シニア・ジャッジ」に移行
バイデン大統領の就任以来、10人の連邦判事が「シニア・ジャッジ」の地位に移行したと発表した。(編集注、シニア・ジャッジは現職を任意に引退した後、一定条件の下に非常勤で職務を継続する裁判官)。65歳以上の判事がこの地位に就くことができ、その場合には判事職が空席になるので、大統領が新たな判事を指名して空席を埋めることができる。

1月11日、トランプ前大統領支持者の議会議事堂乱入事件を受けて、フェンスで囲まれた連邦最高裁=ロイター

この10人には、シリコンバレーの著名な法廷闘争を何度か裁いて名を成したカリフォルニア地裁のウィリアム・アルサップ判事や、ニューヨーク市マンハッタン地区にある第2巡回区連邦控訴裁のロバート・カッツマン判事も含まれている。

少なくともほかに13人の連邦判事が今後1年以内に現在の地位から身を引くと発表している。これには共和党のブッシュ(第43代)大統領に指名された3人も含まれる。連邦裁判所全体で合計60の判事職が現在空席中または今後空席になると見込まれる。

バイデン大統領が司法長官に指名すると発表したワシントン連邦高裁のメリック・ガーランド判事が上院の承認を得れば、影響力のある同高裁でも空席ができる。同氏はオバマ元大統領が最高裁判事に指名したが、上院を支配していた共和党の反対で承認されなかった。

バイデン氏の1期目に引退が見込まれる連邦裁判所判事には、少なくとも1名の最高裁判事が含まれる。引退すればバイデン大統領にとっては、最高裁にリベラル派判事を指名する最初の機会となる。

20年9月に死去したリベラル派のルース・ギンズバーグ最高裁判事について、民主党が上院で多数派だったオバマ氏在任中に引退しなかったことを批判する民主党員もいる。そうしていれば、オバマ氏が代わりに別のリベラル派判事を指名することができたというわけだ。ギンズバーグ氏はトランプ政権末期に死去し、トランプ氏は後任に保守派のエイミー・バレット氏を指名した。バレット氏は、大統領選のわずか9日前に承認され、最高裁判事に就任した。

82歳判事の去就に注目

バイデン氏が大統領となったことで注目されているのが、82歳で最高齢の最高裁判事でリベラル派のスティーブン・ブライヤー氏だ。上院で民主党がかろうじて多数を握っているため、ブライヤー氏が引退すれば、バイデン大統領が指名した後任が承認されるはずだ。

「ブライヤー判事が6月に引退しても全く驚きはない」と、かつて連邦高裁判事の書記を務めたカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のアダム・ウィンクラー教授はいう。

残りの連邦裁判所についても、再び民主党の大統領が就任したことで高齢のリベラル派判事が身を引き、「大勢が近く引退する可能性が高い」とウィンクラー教授は予想する。

裁判官指名の加速に向けて、バイデン氏の政権移行チームは20年12月、民主党の上院議員に書簡を送り、早急に候補を推薦するように要請した。

同チームは21年1月、判事指名作業の担当者として経験豊富なページ・ハーウィッグ氏を採用した。同氏はオバマ政権や上院司法委員会でも同様の仕事をしており、リベラル派判事のグループはその任命を歓迎した。

民主党内には、判事の指名や上院での承認プロセスが遅れると、司法のバランス回復を進めるバイデン氏の力がそがれかねないとの不安の声もある。

「オバマ大統領の判事指名を遅らせた大きな要因の1つは、上院議員(が候補者を推薦するの)を待たなければならなかったことだ」とオバマ政権で判事指名の任務に携わったクリストファー・カン氏は、ブルッキングス研究所のイベントで指摘した。カン氏は現在、非営利の権利擁護団体デマンド・ジャスティスで首席顧問を務める。

バイデン大統領はまだ1人の判事も指名していないが、司法人材の多様化を進める意向を示している。選挙運動中、大統領に就任すれば最高裁判事として初の黒人女性を指名したいと表明した。

その候補の1人と目されるのがワシントン地裁のケタンジ・ブラウン・ジャクソン判事だ。同判事はオバマ大統領時代、最高裁判事候補に上がっていたという。ワシントン連邦高裁のガーランド判事が司法長官に就任すれば、ブラウン・ジャクソン氏がその後任として検討される可能性が高い。高裁判事の職は、最高裁判事の地位へと上り詰めるための足がかりになる。

トランプ氏はまた、並外れて若い裁判官を終身の地位である連邦判事に数名指名した。20年11月には、33歳のキャスリン・キンブル・ミゼル氏がフロリダ地裁判事として上院で承認された。

「バイデン大統領もトランプ氏がしたのと同様に、30年から40年ほど判事を務められる、それなりに若い人材を指名することが強く求められるだろう」とウィンクラー氏は指摘する。

上院で民主党はぎりぎりで過半数を握っているにすぎず、1人でも造反者が出れば、バイデン大統領の判事指名は承認されないことになり得る、と南カリフォルニア大学のサム・エルマン教授(法学)は指摘する。エルマン氏は、ガーランド氏や2人の最高裁判事の下で書記を務めた。

「本当の危険は、(民主党)上院議員の1人が病気になって投票できず、承認プロセスが止まってしまうという事態だ」とエルマン氏は言う。「(バイデン大統領は)1票でも失うことができない」

By Patrick Temple-West

(2021年2月4日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/

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