ミャンマー、脱中国に暗雲 貿易・債務なお3割依存

ミャンマー、脱中国に暗雲 貿易・債務なお3割依存
チャートは語る
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『ミャンマーの軍事政変で、同国の脱中国依存に暗雲が漂っている。アウン・サン・スー・チー氏率いる民主政権で中国からの債務残高は約3割減った。米欧が制裁に動けば打撃は大きい。手詰まりの軍事政権は広域経済圏構想「一帯一路」で勢力圏を広げる中国に再び傾く可能性がある。

米国の世界的な影響力が弱まる中、中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)への影響力を強めてきた。習近平(シー・ジンピン)国家主席が2013年に…

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習近平(シー・ジンピン)国家主席が2013年に提唱した「一帯一路」でも重点を置く。金融情報会社リフィニティブによると13年以降のASEAN10カ国の一帯一路関連の投融資は3041億ドル(約32兆円)。10カ国の年間財政支出の半分に匹敵する資金をインフラ整備に投じてきた。

とくに対中依存が目立つのがミャンマー、ラオス、カンボジアのメコン3カ国。いずれも国の年間財政支出の1.6~2倍超の投融資を受け入れるなど中国マネーが席巻している。

ミャンマー最大都市のヤンゴン。市内をくまなく巡る黄色や赤色の路線バスは市民生活の欠かせない「足」だが、ほとんどが中国製だ。輸出入も日米欧との取引が増えてきたものの、中国が3割超となお断トツの首位を占める。

ミャンマーには中国という大国にのみ込まれないように距離を保ってきた歴史がある。一帯一路でも過度な中国依存を避ける努力がにじむ。

世界銀行によると対中債務残高は19年末で33億ドル超と、事実上のスー・チー政権が発足する直前の15年末から約3割減った。ラオスとカンボジアが同期間にそれぞれ約72%、約34%増えたのと対照的だ。対外債務全体に占める中国の割合も15年の約45%から19年に約30%へ下がった。

背景には「債務のワナ」への警戒がある。世界銀行などが1%ほどの金利で新興国に資金を融通する一方、中国は7%超の融資もあるとされる。身の丈に合わない借金をして返せなくなれば、重要インフラの管理権が中国へ渡る疑念がミャンマーでは根強い。

象徴例がインド洋を臨むチャオピューの港湾計画だ。雲南省から国境を越え、870キロメートルの石油・天然ガスパイプラインがつながる。マラッカ海峡を経ずに中国内陸部へ運べる中国にとって戦略的な要衝だ。ただ15年には72億ドルと目された事業規模は民主政権下の18年11月の基本合意時に5分の1に縮小した。ミャンマーの要望で港湾需要が判明した段階で次の投資を決める仕組みに変えたためだ。

ミャンマーの脱中国はこれまでも難路続きだった。17年以降に深刻化したイスラム系少数民族ロヒンギャへの迫害問題では国際社会からの批判が集まり、米欧からの投資機運はしぼんだ。

1日のクーデターで成立した軍事政権に米欧は制裁も辞さない構えだ。軍事政権時代、米国は国軍と親密な企業や個人との取引を禁じ、資産凍結なども科した。制裁復活で通常の商取引に制裁が科される恐れもある。5日にはキリンホールディングス(HD)が同国軍系企業との合弁解消を近く要請すると発表した。

孤立を深めた軍事政権が頼れるのは中国だけとなる可能性もある。中国は米国との対話再開を模索中で「ミャンマー問題の扱いも米国次第だ」(中国共産党関係者)。優先度の高い米国の出方を見極めるシナリオも想定される。

中国の習近平国家主席㊨とミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問(2019年4月、北京)=AP

軍政への逆行を強力にけん制しつつ、中国依存回帰にどう歯止めを掛けるのか。日米欧の動きは中国への経済依存を強める他の東南アジア諸国にも影響を与えうる。ミャンマーを巡る対応には新たな知恵が求められている。