韓国は「バイデン外交」のトゲになるか 足元見る中国

韓国は「バイデン外交」のトゲになるか 足元見る中国
編集委員 峯岸博
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『同盟国との関係強化を狙うバイデン米政権を尻目に、中国が韓国への接近を強めている。

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編集委員が日々のニュースを取り上げ、独自の切り口で分析します。

バイデン政権発足から6日後の1月26日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が電話をかけた。文氏は同盟国である米国の新大統領との初の電話協議を待ち続けていたが、米国と対立する習氏が割り込んだ形だ。

習氏は朝鮮半島問題…

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習氏は朝鮮半島問題をめぐり、文氏が実現へ奔走する米朝、南北対話への支持を表明し、自らの早期訪韓を期待しているとも伝えた。「北朝鮮」「訪韓」をカードに韓国に秋波を送り、対中包囲網構築に動くバイデン政権をけん制した。

韓国政府関係者は、習氏との電話は新年の挨拶を兼ねた協議であり、以前から決まっていたと火消しに走る。それでも、バイデン政権発足直後のタイミングで韓国にモーションをかけた中国側に何らかの意図があったとみるのが自然だ。

この話には前段がある。2020年11月、中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相が訪韓し、康京和(カン・ギョンファ)外相と会談した。中国政府がこの会談で合意したと発表した10項目には、外務・国防担当閣僚による話し合いの枠組みである「2プラス2」の稼働(起動)が含まれており、日米韓に波紋を広げた。

この項目は韓国政府の発表文にはなかった。韓国外交筋によれば、韓国政府は過去に開いたことのある外務・国防担当局長による協議の再開を想定しているので、あえて発表しなかったという。本来の2プラス2は地域情勢や国際問題を腹を割って話し合うハイレベルの戦略対話だ。真相はまだはっきりしていないが、同筋は「この時期に韓国政府が米国の新政権を刺激するような新たな決定をするはずがない」と語る。

とはいえ、韓国政府にも、中国が猛反発した米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備問題を抱え、中国との安全保障の対話ルートを閉ざすべきでないとの考えがある。米中の間で板挟みとなっているのが韓国の現状だ。

水陸両用装甲車で上陸後に銃を構える韓国軍の兵士ら(2016年、韓国・浦項市)

文氏もバイデン政権発足にあわせて「韓米同盟をより包括的かつ互恵的な責任同盟に発展させていく」と同盟重視の姿勢を強調した。ただ、韓国は中国と経済面に加え、地政学的にも歴史的にも結びつきが深い。とりわけ文氏は北朝鮮の後ろ盾としての中国への期待が大きい。米国との連携に重心を傾けやすい日本とは立ち位置が異なる。

文政権にとって頭痛のタネは北朝鮮の攻撃を想定した恒例の米韓合同軍事演習だ。3月に実施する予定だが、北朝鮮の核・ミサイルを「深刻な脅威」(サキ米大統領報道官)とみなすバイデン政権の出方はまだ見えない。かたや北朝鮮は米韓による敵視政策の象徴として演習中止を迫り、実行された場合は新型弾道ミサイル発射実験などの軍事挑発をちらつかせる。

1月18日の記者会見で「金正恩(キム・ジョンウン)総書記の非核化の意思は確かだ」と繰り返した文氏は米韓演習についても「必要ならば北朝鮮と協議することができる」と語り、保守派の反発を招いた。韓国では、朝鮮半島の非核化目標を宣言した2018年4月の南北首脳会談後、韓国政府が北朝鮮への原子力発電所建設を検討する内部資料を作成していた事実も明らかになった。文政権が脱原発政策を進めていることもあり、野党は強く批判している。

2019年8月にバンコクで開いた日米韓外相会談

文氏が元徴用工や元慰安婦訴訟をめぐる対日姿勢に軟化の兆しをみせ始めた背景には、米政権からの圧力がうかがえる。バイデン氏はオバマ政権の副大統領時代、慰安婦問題でこじれた安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領(いずれも当時)の関係修復を仲立ちしたことがある。

韓国大統領府にバイデン氏から電話がかかってきたのは、日米首脳の電話協議から一週間後の2月4日だった。終了後すぐ、文氏はツイッターに、バイデン氏と「共通の価値観に基づく韓米同盟をもう1段階アップグレードしようと約束した」と投稿した。韓国大統領府によると、米韓両首脳は日韓関係の改善と日米韓協力が域内の平和と繁栄に重要との認識でも一致したという。バイデン氏が文氏にクギを刺したに違いない。中国の攻勢を受け、韓国つなぎ留めと日韓関係の修復に動きだした。

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