アップル、日本勢にEV生産打診か 水平分業の決断迫る

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『米アップルが電気自動車(EV)を巡り、日本を含む複数の自動車メーカーに生産を打診しているもようだ。3日、米CNBCは韓国・現代自動車傘下の起亜との交渉が合意に近づいていると報じた。サプライヤー幹部は「少なくとも6社くらいで交渉が進んでいる」と指摘する。自動車各社は設計・開発と生産を分担する「水平分業」モデルを受け入れるかどうかの難しい判断を迫られている。

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「韓国メーカーで決まるかは分からない。(アップルが)どこにつくらせるか、交渉を進めている段階だ」。あるサプライヤー幹部は明かす。観測報道を受けて起亜株は上昇し、一時は1997年来の最高値をつけた。

ファブレス(工場なし)経営で知られるアップルは、スマートフォン「iPhone」の生産を台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業などに生産委託するなど、水平分業モデルを採用する。EVへの参入にあたっても自身はデザインや設計に特化し、生産は自動車メーカーなどへ委託する方向で交渉が水面下で進む。

特に日本では、アップルが横浜市に構える研究拠点が国内の完成車メーカーや部品メーカーとの接点になっているようだ。アップルからの打診について、ホンダやマツダは「コメントできない」(広報)と説明。三菱自動車は「そのような事実はない」(同)とし、日産自動車はコメントを控えた。

一方、大手自動車幹部は打診の有無に言及しなかったうえで「興味はある」とした。ある車部品メーカー首脳は「トヨタ自動車からもホンダからもアップルのEV生産の話は聞いたことがない。まずは自社のEV事業が優先だろう」とみる。

「アップルカー」を巡っては、アップルがお膝元の米カリフォルニア州で市販車を改造した約60台の自動運転車を使った公道走行試験を進めており、半ば「公然の秘密」となってきた。州当局への届け出によると2019年11月までの1年間で地球の直径に相当する約1万2000キロメートルを走った。

一時は開発縮小も噂されたが、最近は開発が前倒し気味になっており、25年ごろまでに製品化にこぎつける計画で交渉が進んでいるという。今後は、アップルのパートナーが最終的にどの企業になるかが焦点となる。

既存の自動車業界は、完成車メーカーを筆頭に「ティア1」(1次下請け)などピラミッド階層になった部品の系列サプライヤー網を構築し、調達から生産、販売までを一貫する「垂直統合モデル」を採用してきた。3万点に及ぶ部品で構成するエンジン車の場合、品質向上とコスト削減に向け、こうした体制が不可欠だったためだ。

ピラミッドの頂点に立つ完成車メーカーにとっては、IT(情報技術)大手の受託生産を受け入れることが事実上の「下請け」に回ることを意味する。主役交代になるだけに「大きいメーカーほど決断をしにくいだろう」(日系中堅自動車メーカー幹部)。

将来は自動運転車を使った配車サービスがスマートフォンの基本機能の一つとなる可能性もあり、アップルは競争対抗上、モビリティー分野への投資を避けられなくなっている。モバイル端末向けの基本ソフト(OS)でアップルと競合する米グーグルは09年に自動運転技術の開発に取り組み始めた。現在はグループ会社のウェイモを通じて米アリゾナ州で無人の「ロボタクシー」の試験サービスを始めている。

世界のIT企業は自動車分野でしのぎを削る=AP

米国勢に限らず、中国のIT大手もEVへの参入を着々と進める。同国ネット検索大手の百度(バイドゥ)は自動運転技術を搭載したEVの製造販売で浙江吉利控股集団と提携し、配車アプリ大手の滴滴出行(ディディ)はライドシェア専用EVを比亜迪(BYD)と開発した。

コンサルティング大手、アーサー・ディ・リトル・ジャパンの鈴木裕人パートナーは「アップルは投資に回せる資金余力も大きく、テスラの参入時とは異なる。既存のメーカーにとっては脅威になる」と指摘する。自動車メーカーはEVシフトと巨大IT企業の参入で、大きな決断を迫られることになる。

(渡辺直樹、シリコンバレー=白石武志)

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村山恵一
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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ひとこと解説 自らの工場に積極投資するテスラと、自らは工場をもたないアップル。EV市場を引っ張るのはこの2社となるのでしょうか。やはり需要を創出するのは、魅力的なクルマとそれに付随するストーリー性だと思いますが、サプライチェーンの構築や陣営づくりという観点からも、テスラとアップルそれぞれの進路が興味深いテーマになりそうです。
2021年2月5日 8:14いいね
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