[FT]医療用酸素不足が途上国で深刻 コロナ対応で窮地

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『新型コロナウイルス患者の治療に必要な医療用酸素の需要がここ数カ月間で世界的に急増し、供給が追いつかなくなっており、低・中所得国で多数の患者が救命治療を受けられなくなる懸念が高まっている。

医療用酸素の需要は過去3カ月で2割以上増加し、それを上回る国も多い。生産者は溶接などの産業用酸素を医療用に転換し始めているものの、企業や保健専門家の指摘によれば、資金や集中的な取り組みが乏しく、病院や診療所では集…

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生産者は溶接などの産業用酸素を医療用に転換し始めているものの、企業や保健専門家の指摘によれば、資金や集中的な取り組みが乏しく、病院や診療所では集中治療が必要な患者の急増に対応するための十分な量が確保できていない。

「あらゆる場所で需給が極度に逼迫している。アフリカ、欧州、北米では、今回の第2波で需要がうなぎ登りに増加した。問題は酸素の入手できるかどうかよりも、人員や、病院ネットワークと各施設につながるロジスティクスにある」と産業ガス世界大手、仏エア・リキードのシニアバイスプレジデント、ジャンマルク・ドロワイエール氏は語る。

非政府組織(NGO)や医療従事者は、各国の公的機関や企業、寄付者に一層の支援と行動を呼びかけており、ワクチンと医薬品の配布とともに酸素の増産と輸送強化を求めている。

「国際社会や多くの国の対応はあきれるほど遅い。新型コロナワクチンが接種可能になるまでは、酸素こそが命を救う上で医療における最も重要な装備だ。我々は広域的な人道危機に陥ろうとしている」と慈善団体、英セーブ・ザ・チルドレンのケビン・ワトキンス最高経営責任者(CEO)は話す。

ブラジル、ナイジェリア、ペルーなどで需要が急増
複数の医療慈善団体がまとめた「新型コロナ酸素需要トラッカー(COVID-19 Oxygen Needs Tracker)」の推計によると、低・中所得国の酸素需要は1日当たり1020万立方メートルを超えており、昨年11月時点の850万立方メートルから増加している。ブラジル、ナイジェリア、ペルーなどで需要増が激しい。

問題の一つは、酸素生産の世界市場が複雑か寸断されていることだ。つまり、エア・リキードやリンデなどの大手生産者と病院での現地製造が分断している。一方で、医療用に確保可能な量や使用量に関するデータは限られている。

世界保健機関(WHO)の臨床医療分野を率いるジャネット・ディアス氏はこう語る。「問題は非常に深刻だ。酸素自体は空気中からただで手に入るが、医療用酸素として使うには技術がいる」

多くの小国や低所得国では不足状態がますます深刻化している。過去数週間で2人の閣僚と複数の高官が新型コロナに感染で死亡したアフリカのマラウイでは、大統領が酸素ボンベの購入資金を国内の銀行やクラウドファンディングに頼る事態になっている。

ブラジルのマナウスでは、酸素ボンベ不足により、医師が手動の人工呼吸器の使用を余儀なくされている。空軍が酸素ボンベを離れた都市から運んでいる一方、著名人らが輸送費用を負担したり、ベネズエラが酸素を提供したりする動きもある。

ナイジェリアで新型コロナ流行の中心地となっているラゴス州のババジデ・サンウォオル知事は、新型コロナ患者の治療を担う主要病院での酸素需要が過去数週間で5倍に跳ね上がっており、近々さらに2倍に増える見込みだと述べた。「補給をする上で、それ自体が巨大(負担)だ」

低所得国ではワクチン入手もメド立たず
米国や欧州の大半の国を含む富裕国は、希少なワクチンの確保に力を入れて自国民を守ろうとしているが、低所得国は今後何カ月間にもわたって確保できる見通しが立たない。

今後は病院を埋めつくす患者に十分な酸素が供給できなくなるうえ、そうなれば、抗炎症薬として使われる安価なステロイド剤「デキサメタゾン」などの命を救える治療法にほとんど効果がなくなる。ラテンアメリカやアフリカでは、そのように警鐘を鳴らす政治指導者や医師が増えている。

「ワクチンだけでは対処できない。現状で届けられるものの提供を増やすことで、より多くの命を救える可能性がある。多くの場所では酸素の確保がネックだ」と世界エイズ・結核・マラリア対策基金のピーター・サンズ事務局長は話す。

酸素供給の改善を訴える官民パートナーシップ「エブリ・ブレス・カウンツ・コアリション」のコーディネーター、リース・グリーンスレイド氏は、世界銀行や寄付者の反応がちぐはぐで不十分だと指摘する。「新型コロナ患者が必要とする酸素の量が膨大であるため、今となってはより大規模な緊急解決策が必要だ」

支援プログラムはあるが調整役が不在

世界銀行は昨年、60億ドル(約6300億円)の新型コロナ対策助成金および低金利ローンプログラムを立ち上げたが、これまでに半額しか支出されていない。世銀は、酸素の確保への支援を正式に要請してきた国は少ないとしており、より大規模な資金提供に向けて調整を急ぐと表明している。

調整役の不在が問題を悪化させている。個別の保健システムがそれぞれ物資を購入する一方、サプライヤーは財政が逼迫した当局からの支払いが滞る事態を恐れている。医療慈善団体クリントン健康アクセスイニシアチブのバイスプレジデント、ザッカリー・カッツ氏は「市場が秩序を欠いている」と強調する。

酸素供給は、輸送、生産、安全管理、定期的な装置の整備が難しく、今回のパンデミック以前でさえ、発展途上国の多くでは供給が乏しかった。

世界銀行で健康・栄養・人口分野の世界責任者を務めるムハンマド・ペイト氏は、「最も脆弱な保健システムを持つ国々が、今回の危機で矢面に立っている」と語った。

By Andrew Jack, Michael Pooler, Neil Munshi and David Keohane

(2021年2月1日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/

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