韓国タンカー拿捕1カ月、米イラン対立で解決遠く

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『【ドバイ=岐部秀光、ソウル=鈴木壮太郎】イラン革命防衛隊が中東ホルムズ海峡を航行中の韓国船籍のタンカーを1月4日に拿捕(だほ)して1カ月となる。韓国は米国とイランとの間で板挟みとなり、イランは米国による制裁解除が進まないことにいらだちを強めている。イランは乗員の解放を発表したが、問題解決は見通せない。

イラン外務省は2日、乗員19人を解放しイランからの出国を認めると発表した。しかし、韓国人船長はな…

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しかし、韓国人船長はなお国内に拘束されたままだ。拿捕の表向きの理由である「環境汚染」についてイランでは法的な手続きが続いている。韓国タンカーは7200トンのエタノールを搭載していた。

拿捕の本当の理由は、韓国が米制裁にしたがって凍結したイランの資金70億ドル(7200億円)をめぐる対立とみられる。イランはトランプ前米政権のイラン敵視政策に乗るかたちで資産を凍結した韓国に圧力をかけることで、国際社会へのゆさぶりをかける意図があるようだ。

イランは、バイデン米大統領が1月の就任直後に脱炭素政策の強化や隣国メキシコとの国境の壁の建設中止など、続けざまに大きな政策転換を打ち出したにもかかわらず、イラン政策で具体的な動きがないことに不満を強める。トランプ前米政権がイラン核合意から離脱して復活させた制裁による経済への打撃は深まる一方だ。

韓国は米国とイランの板挟みに悩む。韓国は米制裁下でもイランとの貿易を続けるため、イラン中央銀行が韓国の民間2行に口座を開設。イランからの原油輸入や韓国からの工業製品の輸出代金をウォンで決済する仕組みをつくった。凍結資金はウォン貨だ。

イランは韓国に凍結資金の国外移転を要求しているが、韓国は米国の承認なしには動けない。韓国政府関係者は「米国とは実務レベルで協議中だが、バイデン政権はまだ体制づくりの段階で、進展には時間がかかりそうだ」と語る。

人道支援は制裁下でも可能なため、韓国は凍結資産を使い、イランが必要とする新型コロナウイルスのワクチンを世界保健機関(WHO)などが主導する「COVAX(コバックス)」から調達する案を提示している。だがイラン側はウォンがドルに両替された段階で米国に差し押さえられることを警戒し、拒否しているという。

韓国政府は凍結資金の一部をスイスの口座に移し、欧州での医薬品購入に使えるようにする案や、未払いになっているイランの国連分担金を凍結資金から支出する案など様々な方策を検討し、残る船長と船舶の解放を急ぐ。

この1カ月のあいだにイラン、韓国の双方と良好な関係を持つカタールが仲介を申し出た。隣国サウジアラビアなどとの対立が雪解けに向かったカタールは、米イラン対立の解消でも役割を果たしたいという意図があったもようだ。しかし、第三国の仲介をイランの保守強硬派が拒否している。

米制裁と新型コロナ危機で経済が打撃を受けたイラン国内では穏健派であるロウハニ大統領らの発言力が弱まっている。保守強硬派が勢いを増し、6月のロウハニ師の任期満了にともなう大統領選で勝利をうかがう。

イラン、韓国の双方が歩み寄りをしにくい環境にあり、問題は長期化する可能性がある。