[FT]バルカン諸国、ワクチン入手難で中ロに接近

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『新型コロナウイルス用のワクチン接種開始の遅れで欧州連合(EU)内に怨恨が募る中、バルカン半島のセルビアはスピードを上げ、ワクチン接種率では欧州大陸最高を達成するまでになっている。

しかし、EU加盟候補国であるセルビアは、西側諸国で製造されたワクチンを使っているわけではない。中国国有製薬大手の中国医薬集団(シノファーム)と契約し、欧州初の中国製ワクチン接種国となった。そして今、近隣諸国もこれに倣おう…

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そして今、近隣諸国もこれに倣おうとしている。

セルビアのブチッチ大統領は先週、「世界は豪華船タイタニック号のように氷山に衝突した。富裕層の金持ちだけが自分と愛する家族を救えるのだ」と述べ、EU認可のワクチン契約に向けた交渉を続けながら、中国やロシアのワクチン購入を決断したことを正当化した。

「我々はタイタニック号とともに溺れようとしている。意図があってのことではないだろうが、そんなことは豊かな者にとってさほど重要ではないのだ」

EUは加盟を望むバルカン6カ国にワクチン購入資金7000万ユーロ(約88億円)を提供した。しかし、欧州でのワクチン調達問題のあおりで、4か国は他国の接種開始から時間がたった今も、まだ1回分のワクチンも受け取っていない。不満を抱えるこうした国々は、東方に向きを変えてロシア、中国と交渉、乏しい供給の確保に動いている。

EUへの信頼、損なわれる恐れ

政府関係者には、この地域でのEUへの信頼が損なわれる恐れもあると警告する人もいる。北マケドニアのある当局者は「この状況を利用して、苦難に陥った時に手を差し伸べてくれるのは、西側の政府ではなく中国とロシアだと言う人がでてくる可能性がある」と指摘する。

強権的なセルビア大統領は、この地域の他の首脳と異なり、EU加盟手続きを進めながらも、中国やロシアの政府と親密な関係を保っており、EUや米国の不評を買っている。

人口700万人のセルビアはすでに、100万回分超のワクチンを入手しており、ブチッチ大統領は1月30日、さらに100万回分が3月初めまでに届くと表明した。

これまでEUのワクチン配布計画に信頼を置いていた周辺諸国も、セルビア政府式の取り組みにますます引かれるようになってきた。

近隣のコソボやボスニア・ヘルツェゴビナ、北大西洋条約機構(NATO)加盟国である北マケドニアやモンテネグロは、いまだ1回分のワクチンも入手していない。北マケドニアとモンテネグロの政府当局者は先週、ロシアと中国からワクチンを購入すると発表した。

北マケドニア政府当局者はフィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、「我々は当初、我が国がどこに所属するのかを示すために、西側のワクチンに絞るつもりだった。そして、ロシアや中国との交渉の可能性を除外していた」と述べた。

しかし、同国政府はワクチン接種の遅れを正当化するのが日に日に難しくなってきたという。「ハンガリーなど他の欧州諸国が(シノファームの)ワクチンを入手し始めるにつれ、なぜ我々が米ファイザーや米モデルナ、英アストラゼネカのワクチンを待たなければならないのか国民に説明するのが困難になってきた」。この3社は、EUが認可したワクチンを製造している。

COVAXも期待外れ

モンテネグロのボジョビッチ保健相は、最近契約した15万回分の中国製ワクチンに加え、ロシア製ワクチン「スプートニクV」を5万回分調達する意向を示した。ボスニア政府は1月中旬、ロシア政府、中国政府、ファイザーと交渉を始めると発表した。バルカン半島の両国とも、ワクチンを共同購入する国際的な枠組みである「COVAX(コバックス)」が約束した供給を待ち続けていたが、何も届いていない。

EUは新たに制定したEU域外へのワクチン輸出制限措置からバルカン諸国を免除している。しかし、欧州問題のシンクタンク、欧州安定戦略(ESI)のアナリスト、アディ・チェリマギッチ氏によると、EUが形ばかりのわずかな分量でさえ加盟を希望する国にワクチンを送ることができない状況に、バルカン諸国は幻滅を感じているという。

1月、首都ティラナでファイザー製コロナワクチンの接種を受けるアルバニアの医師=ロイター
同氏は「バルカン諸国はEU加盟国と同時期にワクチンを入手できるとは思っていなかったが、ある程度、明確な配布予定については期待していた。今は見捨てられたと感じている」と話す。

一方、アルバニアでは、中国やロシアに対する歴史的な不信感の方が、欧州への失望より強い。同国は30年前、欧州でも最も弾圧的で中国政府に長年後押しされた独裁政権から脱却した。なかなか消えない警戒心から、ラマ首相はロシア製や中国製のワクチン入手は避けたい意向を示している。

とはいえラマ首相は、2009年にNATOに加盟したアルバニアが、わずかなワクチンでさえEUのシステムを通じて受け取っていないことに失望感を表している。同国は来週、欧州内の匿名国から寄付された970回分のファイザー製ワクチンの医療従事者向け接種を始める。

同首相はFTのインタビューに対し、「ことワクチンについては、本当に驚いている。(EUが)万全であるわけでも、我々に背を向けているわけでもなく、全くの混乱に陥っている。(EUが)自らを害している状況は信じられないくらいだ」と語った。

By Valerie Hopkins

(2021年2月2日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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