巣ごもり投資、日本でも急増 いずれ手痛い失敗も

巣ごもり投資、日本でも急増 いずれ手痛い失敗も
編集委員 前田昌孝
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH08D4L0Y1A100C2000000

『楽天証券の預かり資産が1月8日までに10兆円を突破したという。前年同月比で45%増だ。野村証券の営業部門の預かり資産の推定122兆円に比べれば知れているが、若年層マーケットでの存在感は大きい。SBI証券の預かり資産も2020年12月末に17兆円を超えた。在宅勤務が増えるなかで攻めの経営を繰り広げ、顧客も活発に動いた。米国でも未経験者の投資が「爆発」している。ただ、調子に乗ると手痛い失敗をしかねない。…

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野村ホールディングスを除く証券会社の20年4~12月期決算が出そろった。3月末以降の株式相場の急回復を反映し、主要13社の純営業収益の合計は前年同期比14.3%増の1兆4767億円、純利益は83.6%増の2932億円と善戦した。なかでもオンライン証券大手5社の合計では純営業収益が31.5%増の2374億円、純利益が92.1%増の582億円と絶好調だった。auカブコム証券は信用取引の手数料無料化のマイナスを金融収益で補えずに苦戦したが、ほかの4社は顧客の在宅勤務を追い風にした。

特に目立ったのが、楽天証券の躍進だ。野村証券の営業部門の推定値を含み、データ未公表の岩井コスモホールディングスを除くと、13社合計の顧客からの預かり資産は12月末で399兆円と、19年末の377兆円に比べて5.9%増えた。楽天証券は44.9%増。楽天グループのスーパーポイントを絡めたサービスが若年層に受け、1年間の伸び率はオンライン最大手SBI証券の22.3%増の2倍以上になった。

野村ホールディングスの20年4~12月期決算は2月3日に発表されるが、すでに公表されている11月末の営業部門の預かり資産119兆2000億円に、その後の株価指数の変動率などを掛け合わせると、12月末には122兆円程度になったもようだ。楽天証券が伸びたといっても絶対額では10分の1未満だと考えればそれまでの話だが、そもそもメインのターゲットとしている顧客層の保有金融資産額が著しく異なる。

日銀が事務局を務める金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」の19年版によると、金融商品保有額の平均値(金融資産非保有世帯を含む)は2人以上世帯の場合、世帯主が60歳代のケースが最も多く、1635万円だ。30歳代は529万円と3分の1未満だから、楽天証券の預かり資産が野村証券の3分の1でも説明がつく。単身世帯の場合は60歳代が1335万円、30歳代が359万円と3.7倍の差がある。

世帯数も全然異なる。60歳代の世帯は「2人以上」が814万世帯、「単身」が254万世帯の合計1068万世帯だ。30歳代の世帯は「2人以上」が383万世帯、「単身」が108万世帯の合計491万世帯にとどまっている。「2人以上」と「単身」とに分けたうえで、それぞれの平均金融資産保有額を掛け合わせると、60歳代の金融資産保有総額は167兆円、30歳代は24兆円になる。楽天証券は野村証券の7分の1でも十分大きい。

主要な顧客の年齢層を勝手に決めつけたら、両社とも怒るだろうが、例えば野村証券は50歳以上、楽天証券は20~40歳代だと仮定すると、市場規模は野村証券が403兆円、楽天証券が81兆円になる。若年層は住宅ローンなども抱え、証券投資の余裕に乏しいかもしれない。市場規模をそれぞれの年齢層の金融資産保有総額ではなく有価証券保有総額だと考えると、野村証券のターゲット(50歳代以上)は96兆円、楽天証券のターゲット(20~40歳代)は10兆円だ。

SBI証券は楽天証券よりも預かり資産が多いが、メインターゲットの年齢層ももう少し上かもしれない。仮に30~50歳代だとすると、金融資産保有総額は174兆円、有価証券保有総額は27兆円になる。顧客層への食い込み度合いが同程度ならば、SBI証券の預かり資産は楽天証券の2倍程度でも不思議ではなく、それぞれのマーケットでは十分にガリバーだ。

楽天証券の預かり資産が群を抜いて伸びたことは、積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)を利用して投資信託への積み立て投資を始めた人を含め、若年層の投資意欲が高かったことを示している。日々の株式売買も出社していれば就業規則で勤務時間中はご法度だろうが、在宅勤務のときに個人のパソコンやスマートフォンを使うのならば、たぶんわからない。

日本にも米国市場で話題になったゲームソフト販売大手のゲームストップ株の売買に参戦した人がいるらしい。日本株でも投機的な売買にのめり込んだ人が多いかもしれない。証券会社もリスク管理をしているだろうが、信用取引をして株価が思惑とは反する方向に不連続に飛ぶと、証券会社に預けてあった委託保証金だけでは損失をカバーできず、何年間にもわたって不足分を証券会社に返済し続けなければならない。十分に注意しておきたい。

証券会社の決算をみると、対面営業の証券会社のなかにも大幅増益を記録したところがある。飛び込み営業などは難しかっただろうが、もともと有力顧客とのやり取りは電話だろうから、新型コロナウイルス禍は制約にならなかったと感じる。ただ、株価が上げれば売りたいと考えている顧客も多く、預かり資産はあまり増えなかった。それでも大幅増益になったのは、攻めの経営をしたからではなく、コロナ下で出張費や交通費、広告費、社内の懇親会費などの出費を抑制したからではないか。

最後に国際通貨基金(IMF)が1月26日に発表した世界経済見通しにも触れておく。20年の世界全体の実績見込みは6月時点の予想のマイナス4.9%から2回続けて上方修正され、今回はマイナス3.5%になった。普通は足元の予想を上方修正すれば、次の年の予想は下方修正し、バランスを取る。しかし、今回は21年の予想も20年10月時点のプラス5.2%からプラス5.5%へ上方修正した。

日本の成長率見通しも世界全体に比べれば、20年の落ち込み度は大きく、21年の回復度は小幅だ。それでも数値自体は20年、21年とも20年6月時点や10月時点の予想に比べて上方修正された。ただ、宅配便などを除くと非製造業の暗、製造業の明が際立っている。ワクチン接種で先行したイスラエルは引き続き新規感染者数が減っている。日本も早く集団接種の体制を整え、コロナ収束への手掛かりを得たいところだ。

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