地方銀行、統合か単独か 選択迫る政府・日銀

地方銀行、統合か単独か 選択迫る政府・日銀
地銀大改革(1)
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『1月14日、福井県を地盤とする福邦銀行が50億円の第三者割当増資を発表した。頭取の渡辺健雄は「地域の金融仲介機能を果たすため」と説明した。その理由自体は地銀の役割に照らせばごく当たり前。注目すべきは相手が県内のトップ地銀、福井銀行であることだ。

福井銀の頭取、林正博は「子会社化が念頭にある」と明言する。距離は徐々に縮めてきた。

2020年3月に業務提携し、5月には福井銀の支店に福邦銀の支店が入る店舗内店舗…

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2020年3月に業務提携し、5月には福井銀の支店に福邦銀の支店が入る店舗内店舗を設けた。入り口の自動ドアは右を青、左を緑のラインが彩る。それぞれのコーポレートカラーの組み合わせで一体感を演出する。若手を集めた合同勉強会では「従来と同じことをやっても立ちゆかない」と説く。

地銀は首相の菅義偉が20年9月の自民党総裁選で「将来的には数が多すぎるのではないか」と言及し、再編論に火がついた。すかさず金融庁が合併・統合を補助金で後押しする異例の制度案をまとめ、日銀も合併行の当座預金に上乗せ金利をつける新たな仕組みを3月に始める。福井・福邦はこうした支援の適用第1号になる可能性がある。

人口減少や超低金利といった構造問題にあえぐ地銀。これまで再編を阻んできた壁も取り除かれた。

「やっとスタートラインに立った」。20年10月1日に誕生した十八親和銀行。長崎市内で開いた記者会見で頭取の森拓二郎は安堵の言葉を漏らした。旧親和銀行を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループと旧十八銀行が経営統合に合意したのは16年2月。合併までに4年半も費やした。

同じ長崎県が地盤の2行が一緒になると県内シェアが一気に高まる。競争政策の観点から問題視する公正取引委員会の審査は長引いた。地元企業にも期待と不安が交錯する。結婚式場のウエディング石川は新型コロナウイルス禍で新銀行から資金繰り支援を受けた。社長の石川景士は感謝しつつ「長崎で1強体制が続くことでサービスが低下してほしくない」と強調する。

この案件をきっかけに生まれた20年11月施行の特例法は地銀を向こう10年間、独占禁止法の対象外とした。地域に欠かせないインフラとして寡占に目をつぶってでも体力を高めてもらう狙いだ。

もちろん改革の解は合併・統合に限らない。百十四銀行など四国の第一地銀4行による包括提携「四国アライアンス」。狙うのは柔軟な事業連携だ。情報を持ち寄れば取引先支援の選択肢が広がる。4行で地域商社を設立し、販路開拓でも協力する。東北の地銀で総資産トップの七十七銀行は単独路線を鮮明に掲げる。頭取の小林英文は「再編は当行には関係ない」と強気を貫く。

今に至る地銀改革の端緒は13年に遡る。金融庁が地銀との意見交換会で人口動態や収益力で各行の経営状況を分析した書類を提示し、警鐘を鳴らした。しかけた検査局長の森信親は後に長官に就く。この「森ペーパー」によって「地銀が持続可能なのかに着目するようになった」と金融庁幹部は振り返る。

地銀経営は年を追うごとに厳しさを増す。20年3月期は103行のうち46行が融資などの本業の損益が赤字だった。31行は5期以上連続の赤字。岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長の高田創は「地銀は構造不況にあるとの認識が必要だ」と説く。

「10年後、約6割の地銀が最終赤字になる」。日銀は19年のリポートで、人口減少によって資金需要が細り、利ざや縮小に拍車がかかると警告した。さらに想定外のコロナ禍が地域経済を襲う。

金融庁長官の氷見野良三は毎週オンラインで各地の地銀頭取と意見を交わす。金融システムの安定にさえ目配りしていれば良かった金融行政も変化を求められる。「前例のない課題に試行錯誤している」と打ち明ける。

地銀の経営は地域経済に根ざす。どの地域も成長の制約となる少子高齢化などの大きな流れは止まらない。それぞれの地域でいかに生き残るか。地銀の改革に残された時間は少ない。

各県に複数行が並び、長くオーバーバンキング(銀行過剰)と指摘されてきた地銀。構造不況とコロナ危機が迫る改革の最前線を追う。(敬称略)

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野崎浩成
東洋大学 国際学部教授
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分析・考察 再編は持続可能性に向けた解決策ではなく、解決策に向かうための手段の一つに過ぎません。このため、置かれた環境や銀行の経営規模により、必ずしも再編が適当な選択肢ではない場合もあることも認識しておくべきでしょう。
いくつか指摘しておきたい点があります。
第一に、銀行の数は諸外国に比べて多いわけではありません。経済規模調整後の米国は日本の銀行数の7.6倍もあります。
第二に、オーバーバンキングというよりオーバーデポジットによる過当競争です。貸出では使いきれない預金を抱え、特にリスクの高い債務者を避け優良な借り手に群がる傾向が強いため、金利競争が激化しています。
これらを踏まえた、戦略見直しが急務です。
2021年2月3日 7:58いいね
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中空麻奈
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長
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今後の展望 そんなこと、全部わかっていたこと。超低金利、人口減少、過疎化、オーバーバンキング。よくぞここまで耐えている、くらいの経営環境にある。統合支援も重要だが、地域金融機関が持っている資産に基づく個人情報をさらに活かすビジネス機会への規制緩和はもうないか。地域経済に根付いているサステナブルな技術を地域だけに埋もれさせていないか。そういった小さな技術をまとめてサステナブルファイナンスとして資金を誘導できないか。地方債に優遇税制を適用できないか。地方にVCを集められないか。・・・など、地方に資金を根付かせる工夫が足りないのではないか。地方創生が空回りしていることと地方銀行の苦境はワンセットである。
2021年2月3日 8:55いいね
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