バイデン氏、ミャンマー制裁排除せず 民主化後退を懸念

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『【ワシントン=中村亮】バイデン米大統領は1日、ミャンマー国軍がクーデターを実行したことを受け、ミャンマーへの経済制裁の再開を排除しない考えを表明した。再開すればミャンマーに対する海外からの投資が細る公算が大きく、日本企業にも影響が及びそうだ。

バイデン氏は声明で「米国は過去10年間にわたり民主化への進展に従ってミャンマーへの制裁を解除した」と説明。「その進展を逆戻りさせることによって米国は制裁に関わる法律や権限を即座に精査したうえで適切な措置を講じる必要性が生じる」と指摘した。

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バイデン氏は国軍が事実上の政府トップのアウン・サン・スー・チー国家顧問らを拘束したことをめぐり「民主主義や法に基づく統治に向けた国の移行に対する直接的な攻撃だ」と批判した。「民主主義のもとでは武力によって人々の意思を覆したり、信頼できる選挙結果を消し去ったりする試みをしてはならない」と指摘。2020年11月の総選挙の結果を尊重すべきだと訴えた。

ロイター通信によると、バイデン政権はクーデターへの対応について関係省庁の高官による協議を始めた。米議会とも連携して対応を練る。

オバマ政権は11年のミャンマーの民政移管後、経済制裁を段階的に緩和した。16年に訪米したスー・チー氏の要請を受けて軍事政権に近かった個人や企業に対する制裁も解除し、「ミャンマーとの関係で経済的な制限は大半が取り除かれた」(米議会調査局)。ミャンマーの国際社会での孤立が終わり、米欧やアジア諸国からの対ミャンマー投資が活発になった。

バイデン氏は1日の声明で、ミャンマー国軍がスー・チー氏らを解放したり、権力を委譲したりするように「国際社会は協力して一斉に声をあげるべきだ」と強調。ミャンマー国軍に対する国際的な包囲網を構築すべきだと訴えた。サキ大統領報道官は同日の記者会見で「同盟国や友好国と緊密な協議をしている」と説明した。

さらにバイデン氏は「米国は困難な時にミャンマー国民に寄り添った者に留意する」とも指摘し、ミャンマーへの対応で協力を拒む第三国をけん制した。中国がクーデターをきっかけにミャンマーとの関係を強めることを警戒しているとみられる。中国外務省の汪文斌副報道局長は1日の記者会見で、「中国はミャンマーの友好的な隣国だ」と明言し、クーデターへの批判を避けていた。

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秋田浩之
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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ひとこと解説 人権重視を掲げて登場したバイデン政権としては、ミャンマーに何も制裁しないという選択肢はないでしょう。そして日本など同盟国にも制裁に同調するよう、求めてくるに違いありません。
東南アジアの元ベテラン外交官は「米国が人権外交を振りかざせば東南アジアは分裂し、中国を利するだけだ」と指摘します。一方で何もしなければ、米国は民主主義国のリーダーとしての影響力をさらに弱め、強権主義は各地で勢いづくでしよう。私は後者のコストの方が大きいと思います
2021年2月2日 9:12いいね
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小平龍四郎
日本経済新聞社 編集委員
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分析・考察 ミャンマーの主要な貿易相手は中国、タイ、シンガポールだったと記憶しています。中国だけでなく、タイやシンガポールも欧米や日本のような民主主義が根付いている国とは必ずしも言い切れません。ミャンマーが軍政下にあった1990年代〜2000年代と比べても、タイ、シンガポールなどASEAN(東南アジア諸国連合)の経済的な地位は上がっています。中国+ASEANがミャンマーに厳しい態度をとらないと、米欧の制裁も十分な効果をあげない可能性があります。
中国は着々とミャンマーとの距離を縮めるでしょうから、先進国が働きかけるべきはミャンマーもその一員であるASEANだと思います。
2021年2月2日 8:42いいね
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菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター
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ひとこと解説 中国が「友好的な隣国」と呼ぶミャンマーの政変に米国がどう向き合うかは、バイデン氏の対中姿勢のリトマス試験紙にもなります。

制裁解除が民主主義の進展の見返りだった以上、民主主義が脅かされれば制裁再開に動く構えだというバイデン大統領の言は、筋論として自然な選択です。しかし、その行動がミャンマーと中国の経済的、政治的な距離を一段と縮めてしまうという負の側面に着目すると、そう単純にはいきません。

対北朝鮮などでは米と利害の相違が少ない日本ですが、ミャンマーへの経済制裁となると大打撃が必至です。「バイデンの米国」と日本の同盟関係を具体的に試す最初の事例にもなりそうです。
2021年2月2日 8:11いいね
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