「SNS共闘」生んだロビンフッド 急成長の裏にHFT

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『【ニューヨーク=宮本岳則】米スマートフォン専業証券ロビンフッド・マーケッツはSNS(交流サイト)を舞台とした投機的な売買の急増に直面し、対応に追われている。財務基盤を強化するため、先週後半から1日にかけて合計34億ドル(約3500億円)を調達した。手数料無料化を武器に急成長を遂げたが、事業モデルの危うさが改めて浮き彫りになった。

ロビンフッドの資金繰りは綱渡りだ。先週は銀行の与信枠から資金を引き出…

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先週は銀行の与信枠から資金を引き出したほか、ベンチャーキャピタル(VC)からも10億ドルを調達していた。1日の声明によると、この日までに追加で24億ドルを集めた。「ロビンフッドがこの成長局面を通じて、さらに強くなると信じている」。資金の出し手の1人、米リビット・キャピタルのマネージングディレクター、ミッキー・マルカ氏は声明文の中でこう述べた。

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米株式市場では先週以来、個人投資家の投機的な売買が続いている。個人がSNS掲示板「レディット」上で情報を交換し、ヘッジファンドの空売り銘柄に対して一斉に買いを仕掛ける現象が起きた。ゲームストップ株など一部の銘柄では空売り勢は損失覚悟の買い戻しを迫られ、株価が急騰した。ロビンフッドはSNS投資家たちが好んで使う取引プラットフォームだ。

ロビンフッドは売買急増銘柄の買い注文を一時受付停止にしたところ、「個人を不利な状況に追い込んだ」などと批判を浴びた。証券会社は取引日から受け渡し日までの間、約定金額の一定割合を保証金として、決済機関に預けなければならない。ロビンフッドは売買急増で保証金の増額を求められ、手元資金不足から売買の制限を決めたようだ。合計34億ドルの調達は新たな取引制限を回避するためだ。

ロビンフッドは取引手数料ゼロとアプリの使いやすさで急成長を遂げた。新型コロナウイルスまん延による「巣ごもり」で新たに取引を始める人が増え、口座数は2020年に1300万を超えた。同社の開示によると1日あたりの取引件数は同6月時点で老舗ネット証券のTDアメリトレードや、チャールズ・シュワブを上回っていた。取引量の増加でシステム障害を起こすなど、今回の騒動前から急成長に事業基盤の整備が追いついていなかった。

ロビンフッドの事業モデルには批判もあった。「経験がない投資家にゲームだと感じさせている」。米東部マサチューセッツ州のギャルビン州務長官はこう批判する。同州は12月、投資家保護に関する州法違反でロビンフッドを提訴した。ロビンフッドでオプション取引の手続きをした州住民の3分の2以上がほとんどか全く投資経験がないことが判明したからだ。

手数料ゼロ化は超高速取引業者(HFT)によって支えられている。ロビンフッドは個人の売買注文をHFTなどマーケットメーカーに回送する見返りとしてリベートを受け取り、それを無料化の原資としている。HFTは個人投資家の注文を集め、自己勘定で付き合わせたり、自身の運営する私設取引システムで執行したりしている。買値と売値の差額分(スプレッド)が利益となる。ロビンフッドがリベートを稼ぐには、とにかく売買量を増やさなければならない。

投資のゲーム化は売買量の増加に貢献したが、リスク感覚の薄い初心者投資家を大量に生んでしまった。SNS掲示板「レディット」の書き込みをきっかけとしたゲームストップ株の急騰劇は、扇動者に影響された個人が一斉に動いたことが大きい。ロビンフッドは自らが生んだ「怪物」に振り回されているようにもみえる。

米調査会社アルファクション・リサーチによると、ロビンフッドの20年7~9月期のリベート収入は1億9450万ドルで、四半期として過去最高を更新した。商品別ではオプション注文の回送によるリベートが65%に達する。HFTごとのリベート支払額をみると、米シタデル・セキュリティーズが圧倒的で、全体の45%を占めた。

「シタデルにはどれくらい恩義を感じているのか」。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は1月31日、音声SNS「クラブハウス」でロビンフッドCEOのブラッド・テネフ氏と対談し、こんな質問を投げかけた。一部銘柄の買い付け注文停止措置はシタデルの要請によるもの、との噂が広まっていたからだ。

ロビンフッドのブラッド・テネフCEO(16年5月)=ロイター

シタデルはグループ会社を通じて、個人投資家の一斉買いで多額の損失を被ったヘッジファンドに出資していた。ヘッジファンドを救うために個人の買いを止める動機があったとの見立てだ。ロビンフッドとシタデルの「蜜月」は市場参加者の間でよく知られており、今回の疑念につながった。ロビンフッド側はこうした疑惑を繰り返し否定している。

「上院銀行委員会の公聴会で話を聞きたい」。民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は米CNNに出演し、ロビンフッドは取引停止についての情報開示が不十分との認識を示した。ウォーレン議員はすでに米証券取引委員会(SEC)にも相場変動の原因を調査するよう求めている。ウォーレン氏ら米議員の一部は、ヘッジファンドが市場を「カジノ化」していると批判しており、今回の取引停止措置が個人を犠牲にしたファンド救済だったのではないかとの疑念も抱いている。

今後は個人の投機的な動きに加え、手数料無料化を支える注文回送の仕組みにもメスが入る可能性がある。新たな規制が導入されれば、売買の縮小につながり、相場を冷やす可能性もある。