「紅い中央銀行」と王岐山氏 北京ダイアリー

「紅い中央銀行」と王岐山氏 北京ダイアリー
中国総局長 高橋哲史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM011EM0R00C21A2000000

『きょう2月1日は「紅(あか)い中央銀行」の誕生日である。

89年前のこの日、中国人民銀行の前身である「中華ソビエト共和国国家銀行」が江西省の瑞金で産声を上げた。建国の父と呼ばれる毛沢東が1931年11月に、この地で農民を中心とする「国家」の樹立を宣言した3カ月後だ。

国家を名のる以上、そこで流通する通貨が必要になると考えたのだろう。毛は臨時政府が動き出すとすぐに、通貨の発行を担う中央銀行の設立を指…

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毛は臨時政府が動き出すとすぐに、通貨の発行を担う中央銀行の設立を指示した。

初代の総裁に就いたのが毛の弟、毛沢民である。5人の行員でスタートした中華ソビエト共和国国家銀行は、のちの人民元に連なる独自通貨の発行を始めた。

そこから脈々と培った通貨発行のノウハウが、中国共産党を国民党との戦いで勝利に導く一因になる。

46年から始まった国共内戦で通貨を乱発した国民党は、都市部で猛烈なインフレを引き起こしてしまった。一方、農村部にとどまった共産党は、独自の通貨圏を築いて物価の安定に成功する。国民党から人心が離れ、共産党に支持が集まったのは必然だった。

勝利を確実にした共産党は48年12月、北京から南におよそ300キロ離れた河北省の石家荘で、自らの中央銀行を正式に設立する。中国人民銀行である。北京入城を目前にして発行を始めた全国統一の通貨「人民元」は、中国の支配者が国民党から共産党に代わった象徴だった。

建国後、計画経済の下で目立たない存在になった人民銀が、再び経済の司令塔として脚光を浴びるのは90年代に入ってからだ。

深刻なインフレが庶民の生活を直撃した93年、当時の朱鎔基副首相は人民銀の総裁を更迭し、自ら総裁を兼務して金融引き締めに乗り出した。このとき、副総裁に抜てきしたのが、いまは国家副主席を務める王岐山(ワン・チーシャン)氏である。

習近平(シー・ジンピン)国家主席の盟友としても知られる王岐山氏は、人民銀を足場に金融界で大きな影響力を発揮してきた。その王氏の周辺がこのところ騒がしい。

昨年来、中学からの友人とされる著名な企業家の任志強氏ら、王氏に近い人物が相次いで汚職で摘発されている。やはり王氏と親しかった陳峰氏が率いる複合企業の海航集団は、先週末に債権者が再建型の倒産手続きを裁判所に申し立てたと発表した。

「意見の違いをコントロールすることが、中米関係の健全で安定的な発展を推進するカギである」。当の王氏は1月29日、米国の企業経営者らとのビデオ対話に参加し、米側にこう呼びかけた。

バイデン米政権の発足で米中関係の改善に期待が高まるなか、米金融界と太いパイプを持つ王岐山氏の露出はむしろ増えている。それを快く思わない勢力が党内にはいるのだろうか。

「紅い中央銀行」を制した者が中国を制する。それは毛沢東の時代と変わらない。

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高橋哲史 (たかはし・てつし)
1993年日本経済新聞社入社。返還直前の香港での2年間の駐在を含め、中華圏での取材は10年に及ぶ。2017年から2度目の北京駐在で、現在は中国総局長として変わりゆく中国の姿の取材を続けている。
これまでの記事(2020年12月分まで)はこちら

北京ダイアリーをNikkei Asiaで英文で読む https://asia.nikkei.com/Spotlight/Beijing-Diary?n_cid=DSBNNAR
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