EVシフト進む欧州、英仏独などに巨大電池工場

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR14F750U1A110C2000000/

『英国で電気自動車(EV)向けの電池の「ギガファクトリー」が動き出す。スタートアップのブリティッシュボルトが2021年夏に建設を始め、23年末までにリチウムイオン電池の生産を始める。温暖化ガス削減のため英政府はEV普及を促しており、電池の国産化も支援する。環境意識が高い欧州ではEV増産を見据え、電池工場の建設が相次いでいる。

ギガファクトリーとはEV向けに膨大な量の電池を生産する工場のことだ。ブリ…

[有料会員限定] この記事は会員限定です。電子版に登録すると続きをお読みいただけます。

無料・有料プランを選択

今すぐ登録 https://www.nikkei.com/r123/?n_cid=DSPRM1AR07&ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQODE2850J0Y1A120C2000000%2F

会員の方はこちら

ログイン https://www.nikkei.com/etc/accounts/login?dps=1&url=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQODE2850J0Y1A120C2000000%2F

ブリティッシュボルトが初のギガファクトリーを建設するのは英北東部ブライス。海沿いの旧発電所の敷地で21年夏に建設を始め、23年末までに生産する。投資額は26億ポンド(約3600億円)で、同社によると英北東部では1984年の日産自動車サンダーランド工場以来の規模だという。

工場は27年には3千人を雇用し、生産能力は30ギガワット時と欧州で有数の規模になる。サプライチェーン(供給網)の関連産業も含めると8千人の雇用を生むとしている。オラル・ナジャリ最高経営責任者(CEO)は「英国の自動車産業や経済全体に重要であり、我々が未来の原動力になれる」と述べた。同社は投資家などからの資金調達を進めているほか、英政府による10億ポンドの「自動車トランスフォーメーション基金」の支援対象となるため交渉中だ。

 ルノーの電気自動車「ZOE(ゾエ)」(20年10月、英レディング)=ロイター

英政府は20年11月、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止すると発表した。2月に当初目標の40年から35年に前倒ししていたが、さらに早めた。21年は第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)を北部グラスゴーで開催することもあり、環境対策を他国に先駆けて打ち出している。

ジョンソン首相は、50年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにするため、「グリーン産業革命」と題してEV化や再生可能エネルギーの促進など10項目の対策を打ち出した。120億ポンドを投じ、25万人の雇用を生み出す。EVの項目にギガファクトリーの拡充も含まれる。与党・保守党の票田である地方の雇用を守りたいという、政権の思惑もある。

20年の英国の新車販売台数は約160万台。このうちEVの割合は6.6%と、前年の1.6%から急増した。政府が30年にガソリン・ディーゼル車の販売を禁じるまでにこの比率は上がり続けるとみられる。英国で自動車を生産する日産自動車などのメーカーも、さらなるEV化を迫られるかもしれない。ギガファクトリーの整備は将来のEV増産に向けた布石だ。

欧州ではギガファクトリーの建設が相次いでいる。独フォルクスワーゲン(VW)や独BMWが出資するスウェーデンのスタートアップ、ノースボルトは21年からスウェーデンで水力発電の電力を使った温暖化ガス排出の少ない電池を量産する。自動車大手では仏グループPSAも石油大手仏トタルの子会社の電池メーカー、仏サフトとの合弁でオートモーティブ・セルズ・カンパニー(ACC)を設立、フランスとドイツにそれぞれ24ギガワット時の工場を建設する。EV向け電池では韓国勢や中国勢が先行してきたが、EV化が加速する中でアジア依存を見直している。

英EUは20年末、自由貿易協定(FTA)で合意した。21年からも関税ゼロが維持されているが、域外から輸入する原材料の比率が大きい製品は無関税の対象ではなくなる「原産地規則」がある。完成車に使う部品のうち、英国製以外の比率が45%を超えた場合は無関税にならず、乗用車で最大10%の関税がかかる。

この原産地規則について英EUは今回、EVとハイブリッド車(HV)で段階的な猶予期間を設けた。23年末までは60%まで域外部品を使用しても無関税となり、24年~26年末は55%までを無関税とすることを決めた。英国やEUで建設中のギガファクトリーが23年に稼働するまでは、中国や韓国などからの輸入に頼らざるを得ないことを念頭に置いたとみられる。

新型コロナウイルスの感染拡大もあり、英国の20年の自動車生産台数は記録的な少なさとなる見通しだ。EUとのサプライチェーンで成り立つ英自動車産業にとって、EUの単一市場から外れた影響は小さくない。産業革命発祥の地である英国は、グリーン革命を主導してEV化が進む自動車産業を活性化できるのか。日産やトヨタ自動車などが英国での生産をどう位置づけるのかが注目される。

(ロンドン=佐竹実)

日経産業新聞の記事一覧へ https://www.nikkei.com/theme/?dw=18083101