米、コロナワクチン接種の進捗で人種差 白人に偏る傾向

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN010390R00C21A2000000/

『【ニューヨーク=大島有美子】新型コロナウイルスのワクチン接種が進む米国で、人種による接種の進捗度の差が生じ始めている。一部の州では人口対比でみて白人と比べ、黒人やヒスパニック系の接種が遅れている。コロナの死者数では他の人種と比べ黒人が多く、人種差が問題視されてきた。ワクチンでも人種の偏りをなくすことが今後の普及の課題となりそうだ。

「深刻な差が見られている」。ニューヨーク市のデブラシオ市長は1月31日、記者会見で危機感を示した。同日公表した市のデータによると、ニューヨーク市民でワクチンを接種し、人種データが判明している29万7000人のうち、白人は48%、アジア系は15%、ヒスパニック系は15%、黒人は11%だった。市の人口構成と比べると黒人、ヒスパニック系の接種が少ない。

デブラシオ市長は「特に有色人種の間で、(ワクチンに対する)不信やためらいがみられる」と述べた。医療システムに対する不信感や、接種を予約するためのインターネット環境の不備、情報不足が背景にあるとみられる。ニューヨーク市では有色人種が多い地域で接種会場を増やすなどの対策をとる。ただ既にヒスパニック系の多い地域の接種会場に、遠方から多数の白人が押し寄せる事態も起きており、住民に絞るなどの条件が必要となりそうだ。

米疾病対策センター(CDC)によると、31日時点で米国は約3100万回の接種を実施した。全米では約20州が人種別の接種状況を開示しており、他の地域でもニューヨークと同様に接種が白人に偏る傾向がみられる。米CNNが1月下旬に14州の接種状況を分析したところ、白人の接種率は4%強だったが、黒人、ヒスパニック系はそれぞれ2%弱だった。

米調査機関ピューリサーチが2020年12月に公表した調査によると、ワクチンを受けたいと答えた人の割合はアジア系で83%、白人で61%だったのに対し、黒人は42%にとどまった。

クリックするとビジュアルデータへ https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-status/

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平井一夫さんなど4名の視点
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平井一夫

ソニー シニアアドバイザー

別の視点
これは対岸の火事ではない。欧米等に比べてワクチン投与開始までに時間がある日本は、それまでの導入で発生したあらゆる問題点や課題を教訓に日本の実情に合った投与プログラムを綿密に設計する必要がある。
昨年の給付金支給時の混乱をワクチン投与で起こしてはならない。マイナンバーを用いる案等も提案されているようだが、是非差別、混乱のない、世界に誇れるようなプログラム設計と実行を望む。オリンピック開催の議論も盛んになってきている昨今、ワクチン投与で混乱が発生すると国内外の信頼を損ねることにもなる。

2021/2/1 9:35

鈴木一人

東京大学 公共政策大学院 教授

分析・考察
かつて、黒人は人体実験のように同意なくワクチンを打たれ、その効果を見るような事業に駆り出されたため、新型コロナにかかわらずワクチン接種ということに抵抗がある。しかし、アジア系、ヒスパニック系も少ないというのはやや意外。アメリカでも反ワクチン運動は存在しており、その安全性に疑念を持つ人も少なからずいるが、それも白人系の人の方が多いという印象がある。アメリカではワクチンは国家補助が出ているため、経済格差が影響しているとも思えない。考えられるのはワクチンを供給する拠点が有色人種のコミュニティに少ないと言うことか。続報を待つ。

2021/2/1 9:30

菅野幹雄

日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター

ひとこと解説
1月20日の大統領就任から100日で「1億回のワクチン接種」を公約するバイデン米大統領ですが、記事の指摘のように人種間や所得階層による接種のバランスの乱れにも目配りが必須です。
ワクチン全体の確保に連邦政府が力を入れるとしても、実際の接種実施の手順については米国各州の裁量に委ねられます。ウェストバージニア州のような地方部の州で供給に対する接種のペースが速く、カリフォルニア州のような大都市型の州で遅れが生じるなど、地域間の運用の違いも見えてきています。
トランプ時代の不備を批判すればいい時期は過ぎ、バイデン政権も国民の支持を維持するための正念場にさしかかっているといえます。

2021/2/1 7:59

山本由里

日本経済新聞社 マネー編集センター マネー・エディター

ひとこと解説
米国でのワクチン接種を巡っては、一方でロサンゼルスなどで「ワクチン・チェイサー」(「ワクチンの追っかけ」とでもいうのでしょうか)が出現していると伝えられています。高齢者や医療従事者など予約していた本来の接種予定者が現れず、やむなく廃棄処分にされるワクチンを狙って若者などが列をつくっているとのこと。モデルナ社のワクチンは準備後6時間経つと廃棄しないといけないそうです。必要な人に必要なものが必要な時に行き渡らない――需給の不均衡をコロナ禍が一段と深めています。

2021/2/1 7:42

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