追い詰めない長官 未踏の金融行政は手探り

追い詰めない長官 未踏の金融行政は手探り
経済部 岡部貴典
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF263W80W1A120C2000000/

『「コロナ後の新しい社会を築くなかで要となるのは地域金融機関の皆さんだ」。13日、地方銀行頭取との非公開の意見交換会で氷見野良三金融庁長官は企業の資金繰り支援への協力を訴えた。「再編に向けた覚悟を求められるのではないか」と身構えた地銀関係者を追い詰めるようなコメントはなく、安堵のため息が漏れた。

氷見野氏の発言が注目されたのは、近年の歴代長官が年頭に厳しいメッセージを発信してきたからだ。遠藤俊英前…

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遠藤俊英前長官は2年前に「(経営統合を含めた)抜本的な経営改革は自らの任期中に決断し、実現するとの強い認識を持ってほしい」と各行の頭取に具体的な行動を迫った。

再編を唱える菅義偉首相の意向を踏まえ、金融庁は昨年末、合併・統合する地銀に対して補助金を交付する制度の導入を打ち出したばかり。日銀も3月をメドに地域金融機関向けの支援策を始める。地銀幹部が必要以上に金融庁の姿勢を気にするのも無理はない。「緊急事態宣言下で地銀には中小企業を支えてもらわないといけない。地銀の立場を気遣ったのだろう」と金融庁幹部の一人は推察する。

民間金融機関にとって極めて大きな経営判断となる合併や統合の是非について、規制当局がどこまで関与すべきかは難しい。実際に金融庁はかねて「地銀の合併は選択肢の一つ」との姿勢を示しつつ、銀行の判断に委ねてきた。ただ今夏にも導入する交付金制度は返済を前提としない。「なぜ地銀にだけアメを配るのか」という批判も覚悟し、金融行政として大きく踏み込んだのは事実だ。

日本の地域金融行政には海外からも関心が高まる。米ウォール・ストリート・ジャーナルは昨秋「日本の地銀支援策、世界は注目すべき」と題したコラムを掲載。主要国で超低金利が続けば金融機関の経営が悪化し「世界中の地方銀行で同様の問題が発生する公算が大きい」と指摘した。

日本は金融政策で世界に先駆けてゼロ金利や量的緩和策を導入してきた。金融危機以降に米欧の中央銀行が追随したことから日銀を非伝統的政策の「フロントランナー」と呼ぶ向きもある。地銀再編に向けて補助金を含め相次いで施策を導入する金融庁内では「金融行政もいつの間にかフロントランナーになってしまった」との声が漏れる。

金融システムの安定を担う規制当局にとって、地銀改革を通じた地方経済の再生というテーマは未踏の領域だ。金融行政もまた試されている。