ドイツ石炭発電の雄「大転換」 再生エネ30年に65%

ドイツ石炭発電の雄「大転換」 再生エネ30年に65%
RWE・クレッバー次期社長に聞く 脱炭素で比率3倍
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1202J0S1A110C2000000

『ドイツ4大電力会社の一角、RWEが再生可能エネルギーを中核にすえる抜本的な構造改革を進めている。同社は炭田集積地のルール地方に本社を置き、石炭火力への依存から欧州最大の二酸化炭素(CO2)排出企業として環境団体などから批判されてきた。7月に社長に就任するマルクス・クレッバー最高財務責任者(CFO)は日本経済新聞の取材で「2030年には再生エネが発電量の65%を超える」と比率を3倍にする方針を示した…

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海外投資も強化する方針で、日本にも参考になりそうだ。

「すべての成長投資を再生エネと蓄電技術、水素に注ぎ、伝統的な発電からは徐々に撤退する。まず原子力と石炭火力、次にガス火力だ。40年にカーボンニュートラルになるという目標の実現に(伝統的な発電からの)撤退は必要だ」

7月にRWEの社長に昇格するマルクス・クレッバーCFO=同社提供

22年まで3カ年の投資計画は50億ユーロ(約6300億円)。85%は再生エネにあて、従来型発電は維持投資に絞る。洋上風力を柱に陸上風力と大規模太陽光を組み合わせ、風力・太陽光の発電容量は22年に1300万キロワットと昨秋時点から4割増やす。

23年以降の計画は年内にまとめるが、「確実に再生エネ投資を加速する」。20年1~9月の発電量に占める再生エネ比率は22%と16年の4倍に達した。「30年に65%を超えているのは間違いない」と話す。

競争は激しい。欧州電力大手で再生エネで先行するエネル(イタリア)やイベルドローラ(スペイン)はそれぞれ年平均8千億円以上を再生エネに投じる。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、英BPなど石油メジャーも参入している。だがクレッバー氏は「再生エネは世界中で長期間の成長が続き、多くの企業にチャンスがある」と自信を示す。

「巨大な従来の発電を維持することに将来性はない。再生エネの方が長い目で見て安い技術になる。早く再生エネを構築するほど、多くの石炭火力を止められる」

かつてRWEはルール地方でとれる豊富な石炭(褐炭)を背景に石炭火力を主力としていた。転機は16年の戦略再検討だ。自社の強みや市場予測を徹底して議論し、「市場は再生エネに向かう」と結論づけた。独政府の22年の脱原発、38年までの脱石炭の方針が背中を押した面もある。

変革の痛手も受ける。脱石炭で30年までに従業員の約3分の1に当たる6千人の削減は避けられず、発電所や炭田の閉鎖などに伴う損失は35億ユーロに上るという。政府との交渉で引き出した補償金26億ユーロでは補えない。それでも競争力では再生エネが優位と判断した。

「再生エネのメジャープレーヤーに変身しないと将来はない。送電と小売りをあきらめ、再生エネを得る(長年の競合)独エーオンとの事業交換は最善の選択肢だった」

クレッバー氏は米マッキンゼー、独コメルツ銀行を経て12年にRWEに入り、社長のもとで変革を主導した。RWEは16年に再生エネ、送電、小売部門を分離しイノジーとして上場し、改革資金を調達。18年にイノジーの再生エネだけ残して後はエーオンに売却し、代わりに同社の再生エネ事業を買う再編を決めた。有望な洋上風力の発電容量で欧州2位になった。

RWEの売上高は再編前の3分の1以下に減ったが、経営指標とする調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は19年12月期で前の期比38%増の約21億ユーロ、20年1~9月期も前年同期比で増益だ。戦略は株式市場に評価され株価は15年の約4倍で、22日時点の時価総額は約3.2兆円。エネルやイベルドローラに及ばないが、東京電力ホールディングスの約5倍だ。

RWEは石炭火力発電所を順次閉鎖している(写真は独西部のニーダーラウセム火力発電所)=ロイター

「アジアは特に洋上風力に多くの成長機会がある。日本、台湾、韓国にフォーカスする。現地企業との合弁が基本戦略だ。我々は開発、建設、運営の手法を知っている。建設には常にその地域の支援が必要だ」

RWEは事業再編で垂直統合モデルから決別。事業領域を発電に絞り退路を断ち、欧州域外でのグローバルの成長に活路を見いだす。アジアでは現地企業と合弁を組み、日本の洋上風力の入札に向け九州電力の子会社とも提携した。各地でノウハウを提供し、提携先が持つ現地の規制対応などの知見を生かす。

「ガス火力の比率は増やさない。ガスへの需要は北米や欧州、アジアの主要市場では30年ごろ縮小に転じるとみている」

石炭に比べCO2排出量が少ない天然ガスの退場も見すえる。ガス火力は常に稼働させず、例えば冬場に3週間程度、風力と太陽光の電力の不足時に備えた役割になるという。クレッバー氏は「経験から言えるのは新しい技術と政治のサポートがあれば、変化の速度は思った以上に速いということだ」と指摘。旧態依然の姿勢こそがリスクだと示唆した。

再生エネ推進役の形態、日本にも示唆

ドイツは00年の再生可能エネルギー法(EEG)施行から政策が主導し、20年の発電量に占める再生エネ比率は45%になった。固定価格買い取り制度(FIT)で当初の高い買い取り価格が電気料金に上乗せされ、家庭の電力価格は欧州で高い水準にある。ただ発電コストの低下で21年に下落に転じる見通しだ。

1998年の電力自由化で100社超の新規参入があり、既存電力が対抗し寡占が進んだ。00年代に大手8社は4社に集約され、その後も再編が続く。欧州全域の脱炭素の波と風力などの技術革新が「再生エネ特化は必然」(クレッバー氏)との判断に向かわせた。課題もある。風力発電所の建設認可など手続きの迅速化や送電網の拡充には政治の後押しが不可欠だ。

日本でも11年の東日本大震災から自由化が進んだが、大企業の大型再編は東電HDと中部電力の事業統合にとどまる。脱炭素を見すえ企業の事業形態をどう変えるか、ドイツの例は示唆がある。

(フランクフルト=深尾幸生)