[FT]半導体不足で露呈する自動車製造の新しいカタチ

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 ※ CASEが進展すればするほど、自動車産業における「半導体」の占める地位は、増大する…。

『中国の自動車市場は2020年下半期に目覚ましい回復を遂げた。だが、それには大きな代償が伴った。独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラル・モーターズ(GM)、ホンダなど、世界の大手自動車メーカーが半導体不足に見舞われている。

新型コロナのパンデミックで、世界各地でロックダウン(都市封鎖)が実施されるなか、販売が好調なゲーム機、ノートパソコン、テレビ向けの半導体需要も急増し、半導体メーカーの供給が追いつかな…

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台湾や中国の半導体メーカーは各業界の需要急増に対処しきれず、今年に入って、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)など十数社の自動車メーカーが減産を余儀なくされている。

自動車には、パワーステアリングやアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)など様々な機能の制御に半導体が欠かせない。従業員の一時解雇を迫られるなか、自動車メーカーの幹部は半導体の増産に向けて政府に協力を働きかけている。

FCAと仏グループPSAの統合で発足した欧州ステランティスのカルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)は、「私の役目は当社が公正に取り扱われる状況を守ることだ」とフィナンシャル・タイムズ(FT)に述べた。「解決のためにあらゆる可能性を探るつもりだ。必要とあらば(半導体の発注契約が確実に履行されるよう)抵抗も辞さない」

半導体部品の調達で、自動車メーカーと民生用電子機器メーカーが競り合う形だが、今回の危機は、自動車産業が半導体とその複雑なサプライチェーン(供給網)に依存度を高めている現実を浮き彫りにした。

ドイツの半導体メーカーインフィニオンは自動車メーカー向けの半導体を多く製造する=ロイター
パニック状態
自動車向けは半導体重要の1割にすぎないため、部品調達における交渉力で自動車メーカーは民生用電子機器大手に及ばない。すぐに解決策が見つかりそうにはなく、半導体不足は半年以上続く見通しだ。

米調査会社オートフォーキャスト・ソリューションズによると、自動車の減産台数はすでに28万台を超える。英調査会社IHSマークイットの予測では、最終的には約50万台の減産となる可能性がある。

劣勢に立つ自動車産業だが、一方の半導体業界も激動の時期を迎えている。米インテルは今月、CEOの交代を発表し、台湾積体電路製造(TSMC)に明け渡した先端半導体トップの座を取り戻そうとしている。

そのTSMCは、米国が中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や中国半導体受託生産大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)に制裁を科したことによる影響と格闘している。

台湾・新竹にあるTSMC本社。米国が中国のSMICに制裁を科したため、TSMCに発注が集まっている=ロイター
ある中国の半導体サプライヤーは、「制裁の結果、一部のユーザーが発注先をSMICからTSMCなど他社に切り替えた」と話す。「業界内は皆、相当なパニックに陥っている。半導体不足の規模が大きく、広範な種類に影響が出ているからだ。短期的には解決の糸口が全く見えない」

半導体メーカーが供給力不足に直面するのは初めてではないが、今回の危機が深刻化したのには理由がある。

複数のアナリストによると、ロックダウン期間中にノートパソコンやテレビ向け半導体の需要が伸びたが、それらは薄利で、メーカーにとっては増産に投資するインセンティブに乏しいという。むしろ、次世代通信規格「5G」のネットワークやデータセンター、そして20年後半にソニーと米マイクロソフトが発売された最新ゲーム機用の半導体の方が利益率は大きく、半導体メーカーにとってはるかに魅力的だという。

IHSマークイットのシニアプリンシパルアナリスト、リチャード・ディクソン氏は、「半導体の製造工場は何もかもがギリギリで回っているため、需要が急増すると毎回この問題が起こる。不況の後は特にそうだ」と話す。

独インフィニオン社製の半導体部品=ロイター
自動車メーカー側が半導体をピックアップトラックなど収益性が高い重点車種に振り向けることで、半導体メーカーは問題解決に応じつつある。

アルトマイヤー独経済相は先週、台湾の王美花経済部長(経済相)に対し、台湾当局による介入を要請する書簡を送った。FTが確認した文面によると、アルトマイヤー氏は、ドイツの自動車メーカーの回復は世界経済全体にとって重要だと訴え、優先的に供給するようTSMCを説得するよう求めた。TSMCは問題の解決を優先事項とすると回答したという。

一方、ルネサスエレクトロニクスやオランダのNXPセミコンダクターズは、半導体の需給逼迫と原材料価格の高騰を理由に値上げを検討していると発表した。関係者によれば、スイスのSTマイクロエレクトロニクスも追随する見通しだという。STマイクロはコメントしなかった。

複雑なサプライチェーン
すべての自動車メーカーが一様に苦しんでいるわけではない。トヨタ自動車は11年の東日本大震災の後サプライチェーンの多角化と部品在庫の増量を進めていたため、比較的ダメージは軽かった。

自動車世界5位の韓国・現代自動車も深刻な半導体不足を逃れている。20年前半に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で販売が落ち込み、工場の閉鎖を余儀なくされたが、それでも半導体の発注をキャンセルしなかったためだ。

だが大半の自動車メーカーは部品在庫を必要最小限に抑え、「ジャストインタイム」方式の調達に頼ってコストを削減している。また、半導体の確保を部品メーカーに任せる会社もあれば、半導体メーカーとの直接交渉を志向する会社もあり、サプライチェーンを構成する中間業者の数はメーカーによってまちまちだ。

VW傘下の独アウディのマルクス・ドゥスマンCEOは、同社は最高ランク「ティア4」のサプライヤーを通じて半導体を調達しており、「不足している部品では、様々な供給能力を持った非常に長いサプライチェーン」に依存していると述べた。

今回の危機は、パンデミック中に需要を予測することの危険性を明らかにしたと同時に、電気自動車(EV)の人気が高まり自動運転技術が進展するなかで、自動車業界の運命が半導体に左右されてしまうというまた別の問題を浮き彫りにした。

IHSマークイットによれば、EVは世界の自動車販売台数のわずか3%にすぎないとはいえ、EVに使われている半導体は、金額ベースでガソリン車のほぼ3倍に上る。

アナリストは、自動車に用いられるテクノロジーが変遷は自動車企業と半導体メーカーの関係を大きく変える可能性が高いとアナリストはみている。また、半導体大手は、アジアのファウンダリーに生産委託するビジネスモデルのあり方も再考を迫られるだろう。

米ロサンゼルスのハイウエーを走るテスラの自動運転車。EVと自動運転の動向がこれからの自動車業界の産業構造を左右する=ロイター
「コロナの後、今後数十年で起きる業界の抜本的な構造変化は、EVと自動運転の普及の進捗に左右される」とオートフォーキャスト・ソリューションズのジョセフ・マケイブCEOは言う。「半導体の後は、バッテリーの材料になるレアアースの枯渇が次の混乱を招く可能性がある。常に、そうした次なるものに目を光らせておく必要がある」

真の構造変化
一部の自動車メーカーや自動車用半導体メーカーは内製化を進めようとするかもしれない。VWは危機の繰り返しを避けるため、独コンチネンタルなどの部品大手を介さず、半導体メーカーとの直接取引を増やすことを検討していると表明した。

それと同時に、iPhoneを製造する米アップルのように、半導体市場で強い交渉力を持つ企業が、優位な立場を利用して自動車に参入しようとする可能性もあるとマケイブ氏は指摘する。

中国の半導体企業に対しては、半導体の国産化への圧力が一層強まっている。好調だった高級車やEVの販売が12月に始まった半導体の不足で危うくなったためだ。

「今回の半導体不足は、自己完結していて統制可能なサプライチェーンを早急に確立することの必要性を改めて示した」と中国汽車工業協会の陳士華副秘書長は述べた。

ディスプレードライバーIC(DDI)を用いるノートパソコンやテレビの供給は今のところ不足していない。だが、多くの国でロックダウンや行動制限が長引いていることから今後は逼迫もありうるとアナリストは警告している。

半導体のサプライチェーンにひび割れが広がるなか、自動車メーカーには順番待ちをする以外に選択肢はないのが実情のようだ。

「公平性と平等性の問題だ。各人がそれぞれの取り分をもらうことになる」と日産のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は言う。日産は日本国内で新型のコンパクトカー「ノート」の減産を強いられている。「各社が生産調整しているが、我々はすぐに抜け出すつもりだ」

By Kana Inagaki, David Keohane, Yuan Yangand Joe Miller

(2021年1月26日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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