[FT]一つの対中政策で結束を

[FT]一つの対中政策で結束を
西側諸国、覇権主義に対抗
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM255KI0V20C21A1000000

『米国に新しい大統領が誕生した。これをきっかけに、西側諸国には新しい対中政策が求められている。米中関係は今後数十年以上にわたって世界の地政学の行方を大きく変えていく。バイデン米大統領が率いる新政権はそれを定義づけるチャンスを手にしている。

中国は経済的なパートナーか、それとも競合する大国か。どちらを志向するかは、西側諸国の中国との接し方に関して最も頻繁に持ち上がる質問だ。ビジネスと政治戦略を天秤(て…

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ビジネスと政治戦略を天秤(てんびん)にかける手法は不器用なお手玉さながらで、ほどよいバランスを生み出せなかった。今や悪びれもせずに覇権を目指す思惑を主張するようになった中国が得をしただけだ。

バイデン氏が大統領に就任したことで、米国とその他の民主主義国家は、中国との接し方について改めて考える機会を得た。香港での弾圧、新疆ウイグル自治区におけるウイグル族の強制収容、台湾に対する軍事行動の脅し、インドとの国境紛争、オーストラリアに対する経済制裁など、中国政府の現行路線が続けば米国の対中タカ派が対中政策の主導権を手にせざるを得なくなる。だが、より厳しい態度で臨むことは必ずしも優れた戦略ではないはずだ。

一貫していなかったトランプ氏の対中政策

中国との接し方を考えるにあたってより有益なのは、政策に関して一貫性を保つことだ。経済、安全保障、外交、軍事の各分野で同じ方向を指し示す必要がある。

トランプ前大統領は中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席に対して強硬路線を取ったと豪語していた。だが実際には、このけんか腰な姿勢は、農産物の輸出を伸ばして自身の支持基盤を喜ばせようとする政治的な狙いと衝突した。トランプ政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたジョン・ボルトン氏が指摘したように、トランプ氏の外交政策は、2期目の再選を狙う選挙キャンペーンの一環にすぎなかったのだ。

台湾の置かれている状況を示す言葉を借りるなら、バイデン政権は西側諸国に「一つの対中政策」を訴えていく必要がある。つまり中国に連なるあらゆる国際関係、そして中国の近隣諸国をたぐり寄せ、明確な目的へとつなげる戦略だ。

南シナ海の制海権を掌握しようとする中国の取り組みは、次世代通信規格「5G」と人工知能(AI)における覇権争いや、広域経済圏構想「一帯一路」を通じた欧州への西進とは切っても切り離せない。技術に関する規制や、欧米で事業を営む中国企業に対する規制が、大豆を輸出するための犠牲にするようなことがあってはならない。

また、競争が避けられない分野があったとしても、気候変動や感染症のパンデミック(世界的大流行)といったグローバルな政策課題については協力できる余地を残しておかなければならない。

決定的な解決策はない

バイデン氏がホワイトハウスのアジア司令塔となる新設の「インド太平洋調整官」のポストに、外交政策のベテランのカート・キャンベル元国務次官補を選んだことは、従来の場当たりなアプローチから脱却しようとする意向がみて取れる。アジアで長い経験を積んできた辣腕外交官のキャンベル氏は、向かう方向がバラバラになりがちな米政府機関を同じ方向に向かせるために、強引に調整できる気質を持ち合わせている。

魔法のような決定的な解決策は見いだせないだろう。戦略的な競合関係と経済的な相互依存を両立させることは難しく、常に緊張が伴うからだ。タカ派が推進してきた、経済的なデカップリング(分断)は答えとしてすっきり感じるかもしれない。しかし、いざ実施するとなると、それが本当に自国を成長・繁栄させるための最善の策なのか、自問することになるだろう。

一方で、将来を予測しやすい外交関係を構築しておけば、かつて大国間の戦争に行き着いてしまったような誤算のリスクは大幅に減らせる。

トランプ氏の気まぐれなユニラテラリズム(単独行動主義)は、欧州諸国とアジア地域の米国の同盟国に、対中政策で独自路線をとってもかまわないと認めたに等しい。

だからこそ、欧州連合(EU)は中国を戦略的に競合する「体制上のライバル」と位置づけたものの、欧州の輸出にダメージを与えかねない行動は控えている。また、太平洋地域で米国の同盟関係の柱をなす日本と韓国は、対中政策で結束するどころか、お互いの歴史上の傷をつつき合っている。トランプ氏は環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱したことで、地域の経済的リーダーシップを習氏に譲ってしまった。

表面的には、バイデン新政権が欧州を説得し、中国に対して断固たるアプローチをとらせるのには苦労するだろう。バイデン氏の就任前、EUは中国との投資協定締結に急いで合意したが、米国にとってこれは歓迎できるものではないはずだ。一方、ビジネス重視の旗手だったドイツのメルケル首相は今年退任するため、対中政策でEUと米国は歩調を合わせやすくなる。

決断迫られる欧州

キャンベル氏は今月、外交専門誌フォーリン・アフェアーズに寄せた興味深い論文で、東アジア地域におけるパワーバランスを再確立するための米国の戦略目標を打ち出した。同論文でキャンベル氏は、中国はルール順守を前提とした国際体制において責任あるステークホルダー(利害関係者)の役割を果たすことを拒んでいると批判している。そうしたなか、中国政府に国際協調を促すためにも、米政府は「同盟国、パートナー国双方からなる力強い連合」を必要としていると論じた。

日韓両政府の利益が何かは自明なはずだ。そして欧州諸国はもはや、中国の野心は米国の問題だとして放っておくような余裕はないはずだ。米国と中国という二大大国のライバル関係は、技術における覇権をめぐる争いとは不可分といっていいほど密接に結びついている。

ビジネス重視でいくのか、米国と協力して中国と対峙していくのか、欧州は決断を迫られている。中国は西側諸国を仲たがいさせ、各国が対立しあうように仕向けている。これに対して、西側諸国は一つの対中政策で応じるべきだ。

By Philip Stephens

(2021年1月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/

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