欧州、東アジア安保に関与 対中「政経分離」に限界

欧州、東アジア安保に関与 対中「政経分離」に限界
欧州総局編集委員 赤川省吾
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『ドイツ政府が「インド太平洋戦略」に極東への海軍派遣を盛り込むのは、東アジアの安全保障体制に関心が高まっているからだ。政治では距離を置き、経済ではうまくつきあうという対中政策の「政経分離」を狙うが、人権を重視する緑の党が与党入りする可能性が高まっており、「いいとこ取り」の戦略には限界が近づいている。

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「指針を定めただけでは国際的に信用されない。なにか強力な具体策を盛り込まないと」。2020年秋にインド太平洋ガイドライン(指針)を閣議決定して以来、独政府・与党関係者は取材に異口同音に語っていた。

目玉として浮かんだのが海軍のアジア派遣だ。02年に練習航海中のドイツ艦船が日本に寄港したことがあるが、当時とは緊張感が違う。この20年近くで北朝鮮や中国への懸念を欧州も共有するようになった。

「強さを頼みに自らの秩序を押し通そうとするのを認めてはならない」とジルバーホルン独国防政務次官は話す。別の独与党筋は「民主主義のパートナーに連帯感を示す。オーストラリアや日本から派遣要請があり、それに応じる」と語った。

欧州ではインド太平洋に領土を持つ英仏もアジア安保への関与を強める。むろん米軍の代わりにはならず、軍事的にやや力不足だが、欧州が束になれば政治的には強力なメッセージになる。

アジア安保にかかわる背景には、各国ごとの個別事情もある。

ドイツは周辺国に安保でも力のあるところをみせたい。アジアに艦船を送る能力があるなら、北アフリカや中東で部隊を展開できることの証明になる。独軍は「兵器の整備状況が悪い」などとの批判を浴びてきた。そのイメージも払拭できる。

米国に任せきりにせず、「欧州は自らの安全保障にもっと責任を持つ必要がある」(ジルバーホルン氏)との思いも強まっている。

フランスは、英離脱後の欧州連合(EU)で「外交・安全保障のリーダー役」を狙う。インド洋の仏領レユニオン島などに8000人の兵力があり、「我々もインド太平洋国家」と仏外務省報道官は取材に強調した。中国の膨張策を見逃せば点在する仏領が寸断されてしまうという危機感がある。

EUから抜けた英国は国際的に「孤立していない」ことを誇示したい。英海軍報道官は「詳細の発表は数カ月後」と言及を避けたが、英空母を米艦船が護衛する「米英共闘」との噂もある。

ただ問題は外交・安保で対中強硬姿勢を強めつつ、自動車など対中ビジネスで恩恵を受けようという二兎(にと)を追う戦略が難しくなりつつある点だ。

「輸出を犠牲にしても中国に強い姿勢で臨むべきだ」。ドイツでは緑の党からはそんな声が漏れる。人権を重んじる緑の党は9月の議会選で与党入りが有力視される。同党が発言力を強めれば、対中関係が悪化し、中国からワインや大麦などに次々と追加関税を課されたオーストラリアの二の舞いになりかねない。

高速通信規格「5G」などビジネスと外交・安保が密接にからむ案件は多い。中国は「核心的利益」と位置づける香港問題などで対外的な強硬姿勢を強めており、欧州が目指す「政経分離」が本当に機能するのかは不透明だ。

中国は経済的に無視できないパートナーだ。ドイツは中国を過度に刺激することを避けたいのが本音だ。今回の航海を国会審議などが必要な「軍事作戦」ではなく、あくまでも「関係国との連携強化が狙い」(独国防省報道官)と位置づける。EU外交筋は「対ロシアなどに比べてアジア政策は蓄積が浅い。いまは経験を積んで政策を軌道修正していくしかない」と話している。(欧州総局編集委員 赤川省吾)