春季労使交渉始まる 3つのポイント 横並びは困難に

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『経団連と連合は26日、主要企業の労使が労働問題の意見を交わす「労使フォーラム」を開く。フォーラムを機に2021年の春季労使交渉が事実上始まる。多くの企業が新型コロナウイルス禍で痛手を被り、不透明感も強まる特異な状況での労使交渉。そのポイントを探る。

賃上げ格差どこまで拡大?
労働組合は新年度の4月に向け、賃金などの労働条件を使用者(経営者)と交渉する。賃上げには定期昇給(定昇)とベースアップ(ベ…

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賃上げには定期昇給(定昇)とベースアップ(ベア)がある。定昇は年齢や勤続年数に応じて給与を引き上げる。社員数や社員の年齢別の構成比が前年と同じなら、企業の人件費は増えない。

ベアは社員の基本給を一律に引き上げるため、人件費増につながる。基本給は一度上げると業績が悪化した際に下げるのは難しい。さらに基本給をもとに計算する社会保険料や残業代も上昇する。社員の生産性が高まらなければ収益の押し下げにつながるため、経営者は一般的にベアには慎重だ。

政府は13年に景気回復にむけ経済界にベアを要請し、「官製春闘」と呼ばれる流れが続いていた。連合は今回、6年連続となる「2%程度」のベア要求の方針を打ち出した。もっとも足元では賃上げ率は15年の2.2%をピークに鈍っている。

今回の労使交渉では、賃上げについて要求段階から組合ごとに差がつきそう。旅行や宿泊のように需要が蒸発した業種もあれば、スーパーなど巣ごもり消費の恩恵を受けるところあるからだ。

組合側は交渉力を高めるために、産業ごとに「産業別労働組合(産別)」を組織して賃金などの要求水準を統一してきた。最近はグローバル競争のなかで業績や人材戦略に違いが出るなか、産別や組合の動きにも徐々にバラツキが出ている。今回はそこにコロナの影響が加わる。業績が厳しい企業の労組も抱える電機連合は、ベアに相当する賃金改善分として「月2000円以上」を要求する方針。上部団体の金属労協が打ち出した「月3000円以上」を下回るのは異例だ。

雇用維持できるか?

企業や業種によっては雇用維持が優先課題となる。航空大手など一部の企業はグループ外への社員の出向にも乗り出している。航空関連の労組でつくる航空連合は賃金交渉については一律の基準を定めない。一方、グループ外出向や一時帰休を実施する際には労使で運用などを確認するよう求める。

繊維や小売り、サービス業などの労組でつくるUAゼンセンのうち、外食産業などの部門では組合員が前年と比べ約1万人減った。新型コロナによる店舗閉鎖などが響いたという。UAゼンセンの松浦昭彦会長は「しっかりと雇用を守ることを大前提に動く」と話す。

格差是正も焦点の一つだ。UAゼンセンは今年は幅を持たせた要求とする方針。契約社員やパートといった非正規雇用の組合員については「定期昇給分に加え、2%を目標に時間額を引き上げる」と具体的に要求する方針だ。同一労働同一賃金の実現を後押しする狙いだ。こうした要求を踏まえ、経営側が雇用維持と格差是正のバランスをどう取るかも課題となる。

働き方、ジョブ型広がるか?

コロナ禍を契機に多くの企業が導入したテレワークなどの新たな働き方の議論も進みそうだ。電機連合はテレワークに関する費用の会社負担や、長時間労働の防止への考え方を確認する。組合側も「課題も多いがテレワークは生産性向上のチャンスでもある」(電機連合の神保政史・中央執行委員長)とみる。

企業が求める能力を明確にして雇用契約を結ぶ「ジョブ型雇用」の導入も日本企業にとっては検討課題だ。欧米では一般的で、職務に必要な能力をまとめた「職務定義書」(ジョブディスクリプション)を作成して社内外から人材を募る。日本では社内で幅広い業務を経験させる「メンバーシップ型雇用」が長く主流だった。

経労委報告では成果を重視するメンバーシップ型雇用と、雇用が安定したジョブ型を組み合わせ、各社で「自社型」の雇用制度をつくることを提案している。

いずれ来るであろうコロナ収束後に自社の競争力をどう高めるか。そのための賃金や働き方の在り方について労使で話し合う場とすることが欠かせない。(大平祐嗣)