首都から消えた「孔子学院」

首都から消えた「孔子学院」
中国総局長 高橋哲史
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『北京の街は変化が激しい。先週末、市の北部に建つ徳勝門のそばを通りかかったときもそう思った。

交差点沿いのビルに掲げられていた「孔子学院総部」の大きな文字がなくなっていたのだ。

昨年10月に来たときは確かにあった。いまは代わりに、漢字の「語」にアルファベットで「CLEC」と添えられた紀章がある。かつての看板がひときわ目立っていただけに、街の風景まで変わった印象を受ける。

車を降り、ビルの前にいた警備…

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車を降り、ビルの前にいた警備員にいつ看板が換わったのかを聞いてみた。「つい最近だよ。1カ月もたっていないね」

入り口には「教育部中外語言交流合作中心(Center for Language Education and Cooperation)」と書かれた新しい標識が立っていた。張り替えが間に合わなかったのか、玄関のガラスにはまだ「孔子学院総部(Confucius Institute Headquarters)」の文字がうっすらと残っていた。

中国政府が孔子学院を設立したのは2004年11月だ。中国語を世界に普及させるのが目的だった。いまはおよそ160カ国・地域に500以上の拠点がある。

米国のトランプ前政権で国務長官を務めたポンペオ氏は、その孔子学院を「中国共産党の宣伝機関」と激しく攻撃した。昨年10月、米国内の孔子学院を年内にすべて閉鎖すると宣言したのは記憶に新しい。

その孔子学院の看板が首都・北京の総本部から消えた。中国政府はトランプ前政権の批判を受け、同学院の廃止を決めたのだろうか。

もちろん、そうではない。同学院のサイトをみると、運営の形式が微妙に変わっていた。以前は中国教育省の傘下にあったのが、昨年7月からは同省を離れ、国内の大学を中心に構成する「中国国際中文教育基金会」が管理母体になっていたのだ。

教育省は同じ時期に、やはり海外での中国語普及を支援する直属のCLECを設立した。なにやらややこしい話だが、ようは孔子学院を政府から独立した「民間機関」に衣替えしたようだ。

米国の批判をかわすねらいがあったのはまちがいない。バイデン米大統領の就任を前に看板まで撤去したのは、新政権が改めてこの問題を持ち出してきた場合に備えて予防線を張ったようにも思える。

孔子学院の総本部だった場所を見終えたあと、すぐ南にある徳勝門に上った。15世紀の明の時代に造られた堅固な城門だ。皇帝の軍隊は外敵を倒すために北京を出発する際、必ずこの門をくぐったという。

その名は「以徳取勝(徳をもって勝利を勝ち取る)」に由来する。南シナ海や台湾の問題で強権的な振るまいが目立つ中国はいま、その名にふさわしい行動を取っていると言えるだろうか。

そんなことを思いながら眼下に目をやると、隣接する公園が臨時のPCR検査場に変わっていた。

いま、習近平(シー・ジンピン)指導部にとって最大の敵は新型コロナウイルスだ。当局は北京にウイルスが侵入するのを防ぐために、感染者が出た地区の全住民を対象にPCR検査を実施している。市内のあちこちに、検査場があっという間にできた。

北京の街はやはり変化が激しい。

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高橋哲史 (たかはし・てつし)
1993年日本経済新聞社入社。返還直前の香港での2年間の駐在を含め、中華圏での取材は10年に及ぶ。2017年から2度目の北京駐在で、現在は中国総局長として変わりゆく中国の姿の取材を続けている。

これまでの記事(2020年12月分まで)はこちら https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56599640Q0A310C2FF4000/