「中国のハワイ」海南島、関税ゼロで香港代替狙う

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『【広州=川上尚志】中国南部のリゾート地、海南島が「関税ゼロ」を売り物に中国内外の企業誘致に乗り出している。同島では2025年にも原則すべての関税をなくすほか、所得税や住民税の減免も段階的に進める計画だ。同じ南部に位置する香港の国際的な地位が揺らぐなか、中国政府は海南島を外資呼び込みの新たな窓口とする狙いだ。

「中国本土で買うよりも断然お得ですよ」。20年11月、海南島にある免税店の1つ「日月広場」…

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平日にもかかわらず観光客でにぎわっていた。特に人が集まるのはスマートフォンの売り場で、中国内外の人気機種を店員が売り込んでいた。米アップルの「iPhone11」の場合、本土では正規価格で1万2699元(約20万円)する機種が1万60元と2割安く売られていた。

海南島には観光振興のため免税店が設けられ、中国本土からの観光客などが購入する場合、消費税にあたる増値税や仕入れ時の関税が1人当たり年10万元まで免税になる。同島での20年の免税品の販売額は前年同期比2倍の274億元と好調だ。免税店の数は20年12月末に3軒増えて7軒となり、近く10軒まで増やす計画だ。

免税店の拡充だけでなく、海南島ではいま様々な税優遇などの制度設計が進む。同島は年中温暖な気候で「中国のハワイ」と呼ばれるが、観光以外に目ぼしい産業は少なかった。それが一変したのは3年近く前からだ。

中国政府は18年4月、海南島を「自由貿易港」として貿易などで様々な優遇策を設ける方針を決めた。20年6月には「関税ゼロ」などの具体的な計画も公表した。関税は25年までに一部商品を除きすべてゼロにする。法人税や所得税も段階的に引き下げ、観光などが対象のビザ無し渡航の許可も順次広げる計画だ。

中国政府の狙いは企業誘致による産業の振興だ。海南島を治める海南省での企業新設数は20年に約15万件とすでに前年比で2倍強になった。さらに政府は外資企業の誘致にも力を入れる。同島に製品の加工拠点を設ければ、関税の負担無しで原材料を運びこんで加工した後、中国本土で価格競争力を持つ製品を売ることができる。同島に法人を設ければ所得税などの減免も受けられる。

海南省都である海口市共産党委員会書記の何忠友氏は「海南島で注力する観光やハイテク関連の産業には特に多くの優遇策を設ける」とし、日本を含めた外資企業の進出を期待する。日本の大手商社の中国幹部は「税負担を大きく減らせるのは魅力的だ。参入に乗り遅れないように政策の進捗を注視する」と話す。

海南島の振興は香港の国際的な地位低下を補い、外資誘致や観光産業を代替する思惑もある。海南国際経済発展局の宮起君副局長は「香港やシンガポールにも税優遇はあるが、海南島ほどの利点はない」と強調する。免税店についても「中国本土から香港に行く場合は書類提出などの手続きが必要だが、海南島なら必要ない。(中国の全人口に相当する)14億人に海南で買い物をしてもらいたい」とし香港への有利性を訴える。

海南島ではインフラ整備も急ピッチだ。島内には複数のモデル地域が指定され、ハイテク産業やITといったテーマを掲げ工業団地などの建設を急ぐ。18年に自由貿易港の設立が発表されて以降、現地でのインフラ整備など関連事業への投資表明額(民間含む)は5千億元を超えた。「(中央の)政府から空前の支援を受けている」(あるモデル地域の担当者)

ただ、過剰な投資が実を結ぶのか不透明感もある。モデル地域ではそれぞれ地域開発を紹介する施設が造られ、その多くで18年に現地を視察した習近平(シー・ジンピン)国家主席の写真が大きく飾られていた。習氏肝煎りの開発計画だけに、現地を見学した日本企業の関係者は「相当のプレッシャーがあるだろう」とみる。

中国では地方の開発計画が乱立気味で頓挫したケースも少なくない。各地で同時進行する開発に対し人手不足感が強く、病院や学校などのインフラ整備が追いついていないという課題もある。ある外資金融機関の幹部は「海南島の開発が成功するかどうか分かるのは10年後だろう」と指摘する。