[FT]コロナ優等生NZ、ワクチン「後手」で暗雲

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『「厳しく、早く」を戦略に掲げて新型コロナの国内感染を封じ込め、世界で高く評価されたニュージーランド(NZ)がワクチンの接種開始で出遅れている。市民を不必要なリスクにさらし、景気回復を妨げる可能性があると専門家が警鐘を鳴らしている。

深刻な危機に見舞われた米国や英国などの国々がワクチンを緊急承認し、いち早く接種を始めた。だが、NZ政府は慎重な姿勢で、第一線の医療従事者への接種を始めるのが4月、一般市…

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だが、NZ政府は慎重な姿勢で、第一線の医療従事者への接種を始めるのが4月、一般市民への接種開始は7月からと計画している。

だが医療専門家からは、海外からの入国者の間で新たな変異ウイルスの感染が判明していることから、接種を前倒しにするよう政府に求める声が上がっている。

「NZはジレンマに陥っている。入国時の隔離に穴があり、感染力の高い変異種の感染が増えている。ワクチン接種の戦略にも欠陥がある」と、同国オークランド大学のデス・ゴーマン教授(内科学)は言う。

「ワクチン承認の迅速化に目を向けるべきだ。私は英国と米国、南アフリカからの入国を停止すべきだと思う」

政府発表の統計では、NZへの入国者の管理隔離施設で少なくとも19人、英国や南アで最初に検出された新型コロナの変異種への感染が判明している。

専門家は、隔離施設が関係した防疫の失敗が2020年8月以降に少なくとも7件発生していることを挙げ、変異種が拡散すれば市中感染が再発しかねないと警告している。

同国オタゴ大学ウェリントン校のニック・ウィルソン教授(公衆衛生学)はフィナンシャル・タイムズ(FT)紙に対し、検査過程を簡素化してワクチンを迅速に承認する、英米からの航空便乗り入れを停止する、隔離用ホテルを市街地の外の施設に変える、などの対策が必要だと語った。

「つい最近、水際で3日間に31人の新規感染者が確認されており、重大なリスクと言わざるを得ない。ホテルでの隔離は完全には有効でないことがわかっている」

NZのアーダーン首相は昨年12月、政府は4種類のワクチン供給について総額10億ドル(約1000億円)相当の契約を結んだと発表した。英オックスフォード大学と英アストラゼネカ、独ビオンテックと米ファイザー、米ノババックス、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)傘下のヤンセンファーマの計4つのワクチンだ。だが同首相は、承認を急いだり、安全性をおろそかにしたりすることは決してないと強調した。

「できる限り速やかに動く。だが、NZ国民にワクチンの安全性も確保したい」とアーダーン氏は述べた。

先週の時点でもNZ保健省はFTの取材に対し、その方針に変わりはないとし、緊急事態や市中感染に対応を迫られている他の国々とは状況が違うと説明した。

だが今週、ヒプキンス新型コロナ対策相は、政府が第一線の医療従事者のために限定量のワクチンを先行確保できないか模索していると述べた。

NZの薬事規制当局は治験の手順を合理化して新型コロナワクチンの審査を優先するが、手続きの完全性やワクチンの安全性を犠牲にすることはないとヒプキンス氏は語った。

だが、労働党政権に対する政治的な風当たりは強まっている。野党・国民党は、急速に拡散する変異種が水際で「許容できないリスク」をもたらしているとして、ワクチン戦略の見直しを要求している。感染拡大を封じ込めた当初の成功で、政府は慢心していると非難する。

「ワクチンの導入で我が国は世界に大きく後れを取っている」と国民党のクリス・ビショップ報道官は新型コロナ対策について語った。

「即刻、国境周辺で働く人々に予防接種をすべきだ。考えるまでもないことだ」

同報道官は、オーストラリアは変異種を警戒してワクチン接種を早めていると指摘。今年、平時に戻れるかはワクチン戦略の効果次第という状況であり、接種の遅れは経済に悪影響を及ぼす可能性があるとした。

だが、接種を早めるのは無理かもしれない。NZにビオンテックとファイザーのワクチンが最初に届くのは、3月末の予定だ。NZ政府によると、アストラゼネカ、ノババックス、ヤンセンのワクチンが到着するのは4~6月の見込みだ。

オークランド大准教授で免疫学者のヘレン・ペトウシス・ハリス氏は、NZはなぜ接種を早めないのかとの問いに「物がないのだから、議論しても仕方がない」と答えた。

しかし同氏は、米英やカナダが接種目標の達成に苦戦していることを挙げ、先頭を切らないことにメリットがあると指摘する。

「通常の予防接種の場合でも、失敗があれば国民の信頼喪失につながりかねない」

同氏はさらにこう続けた。「多くの人が(予防接種を)ためらい、不安を感じているのが実態だ。人々に納得してもらうことが肝心で、先頭を切ることは必ずしもそれにつながらない」

担当大臣のヒプキンス氏は政府の対応に「決して慢心していない」と語り、入国者に出発前の陰性証明を義務付けるなど、当局は水際対策を強化していることを強調した。

「我々はNZが現在、市中感染がゼロで、変異種も広く拡散してはいないという非常に幸いな状況にあることを強く意識している。だが、何ひとつ当然とは考えていない」と同氏は述べた。

By Jamie Smyth

(2021年1月21日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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