タイCP、中国ワクチン外交相乗り 医薬品で海外開拓

タイCP、中国ワクチン外交相乗り 医薬品で海外開拓
新型コロナ
2021年1月22日 20:00 (2021年1月23日 5:09更新) [有料会員限定]
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※ 今日は、こんなところで…。

『【バンコク=岸本まりみ、大連=渡辺伸】タイ最大財閥チャロン・ポカパン(CP)グループは新型コロナウイルス向けワクチンを手掛ける中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)に約5億ドル(約520億円)出資した。香港上場のCP系製薬会社がシノバックのコロナワクチン子会社に資本参加した。中国政府の「ワクチン外交」に沿って海外市場の開拓を急ぐシノバックと組み、自社の治療薬などの世界展開につなげる狙い…

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香港に拠点を置くCP系の製薬会社、中国生物製薬(シノ・バイオファーマシューティカル)が、シノバック傘下でコロナワクチンを開発・生産する北京科興中維生物技術の株式を約15%取得した。「海外市場におけるワクチンの協力や商品化を通じて外国政府や規制当局、ビジネスパートナーとのネットワークを広げる」。中国生物製薬は出資の狙いを説明する。

中国生物製薬はCPグループの創業家の一人である謝炳氏が立ち上げ、2000年に香港取引所に上場した。売り上げのほぼ全てが中国市場に集中し、皮膚病や肝疾患、肺炎などの治療薬を手掛ける。創業一族が今も株式の5割弱を保有する。

株式市場は今回の出資を好意的に受け止める。QUICK・ファクトセットによると、アナリストは中国生物製薬の21年12月期の純利益は約36億元(約580億円)と、前期に比べ39%増えると予想する。大和キャピタル・マーケッツ香港は21年の利益が38億元押し上げられ、20年から倍増すると試算する。世界的にコロナワクチンの需要が伸びる恩恵を受ける。

シノバックへの出資はコロナワクチンの普及に伴う利益貢献にとどまらない。世界の医薬品市場への足掛かりで、中国生物製薬が手掛ける製品の新興国などへの拡販を狙う思惑がありそうだ。

CPグループは農業をはじめ、自動車や金融、不動産まで幅広く事業を展開するタイの巨大財閥だ。医薬品事業の売上高は順調に伸びているものの、主力の食品や小売りなどと比べると利益水準では大きく劣っている。

中国政府は医療費を抑えるため、製薬会社に後発医薬品の価格を入札で競わせる「集中購買政策」を18年に導入し、対象の薬価は大幅に下落した。対象となる医薬品は増え続けている。中国生物製薬は現在、ほぼ全てを頼る中国市場での利益確保が今後、難しくなる可能性も指摘される。

CPは東南アジアを中心に海外20カ国・地域以上で事業を展開するものの、こと医薬品に関しては足場を持っていない。そこでコロナワクチンで世界展開を加速するシノバックと組み、治療薬などの自社製品の売り込みを加速するとみられる。

シノバックの新型コロナウイルス向けワクチンの工場(20年9月、北京市)

一方のシノバックにとっても、CPの出資は渡りに船だった。シノバックも中国生物製薬と同様、売り上げの9割以上が中国市場に集中する。コロナワクチンの開発・生産で一気に国外での存在感を高めたものの、世界展開の経験は乏しい。

現在は政府への供給が主体だが、今後は民間企業などへの販売も視野に入ってくる。フィリピンではすでに地場財閥など300社超が英アストラゼネカから共同調達することで合意している。

そうなれば、タイなど東南アジアで強い影響力を持つCPの力がより生きてくる。「販売能力の向上やアジア市場の拡大、何よりパンデミック(世界的大流行)との闘いを助ける取り組みを加速できる」。シノバックの尹衛東・最高経営責任者(CEO)は意気込む。

ウィンウィン(相互利益)の関係を築けたと自負するCPとシノバックだが、不安材料もある。シノバック製ワクチンの有効性への疑問が足元で浮上しているためだ。

ブラジルのブタンタン研究所は12日、シノバック製ワクチンの有効性が50.38%だったとし、従来の結果(78%)から大幅に引き下げた。すでにシノバックと200万回分の供給契約を結んだタイでは13日、保健省が「安全性や有効性についてシノバックに問い合わせている」と言及し、世界ではワクチンの実力に懐疑的な見方も広がる。

シノバックは今回、CPから調達した資金をワクチン開発や生産設備の増強に充てるとしている。「年間の生産能力を10億回まで増やす」。尹CEOは強調する。

米デューク大の調査によると、シノバックはすでに10カ国・地域以上でワクチンを供給する契約を結んだ。有効性などへの疑問を払拭できるのか。計画通りにコロナワクチンの供給が進まず、シノバックの海外展開に誤算が生じれば、CPの戦略にも暗雲が垂れ込めかねない。