欧州、インド太平洋に軸足 アジア外交を多様化

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『【ジャカルタ=地曳航也、ブリュッセル=竹内康雄】欧州各国がインド太平洋地域に関する外交方針を相次ぎ打ち出している。対中国に軸足を置いてきたアジア外交を多様化し、同地域の経済成長を取り込む。地域各国も米国と中国に並ぶ市場として欧州への関心を強めている。

2020年12月1日、欧州連合(EU)と東南アジア諸国連合(ASEAN)はオンラインの外相会議を開き、両地域の関係を戦略的パートナーシップに格上げす…

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2020年12月1日、欧州連合(EU)と東南アジア諸国連合(ASEAN)はオンラインの外相会議を開き、両地域の関係を戦略的パートナーシップに格上げすることで合意した。計37カ国で人口11億人を抱え、国内総生産(GDP)は世界全体の23%を占める。自由貿易協定(FTA)の締結など経済分野の連携を強める方針だ。

20年後半にEU議長国を務めたドイツ政府はASEANとの関係強化を「インド太平洋外交の指針(ガイドライン)を実行するうえで画期的な出来事だ」と指摘する。

ドイツ政府は20年9月、インド太平洋外交のガイドラインを初めて閣議決定した。法の支配や航行の自由など、価値を共有する日米豪印や東南アジアの各国と連携する。

オランダ政府も11月、インド太平洋に関する同様のビジョンをまとめた。もともと南太平洋に駐留部隊を持ち、18年にインド太平洋での安全保障戦略を策定したフランスと協力し、EUにも地域で主体的に動くよう働き掛けを強めている。

オランダのブロック外相は議会にあてた書簡で「世界で最も重要な成長地域で、オランダの経済的・政治的利益を適切に守るにはビジョンが必要だ」とその狙いを説明し、EUも独自の戦略をつくるよう求めていることを明らかにした。気候変動や貿易投資、海上供給ルートの確保などの観点から地域への接近を模索する。

EUはこれまでアジア外交の軸足を中国に置いてきた。両者にとり相手との貿易総額は2番目に大きく、20年12月末には投資協定の締結で大筋合意した。欧州は新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた経済の浮揚を狙う。日中韓とASEANなど15カ国が東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)で合意に達し、EU抜きで経済統合が進むことへの危機感があったとみられる。

EUにとってアジア外交での中国偏重のリスクも増しつつある。コロナの感染拡大を巡り、医療用品支援をテコにした「マスク外交」による欧州への影響力行使はEUの警戒感を高めた。国家安全維持法の施行による香港の民主主義後退や新疆ウイグル自治区の人権問題など、EUが重視する基本的な価値に逆行する動きは怒りを買った。

中国との投資協定の批准には欧州議会の同意が必要だ。21年1月6日には香港警察に民主派の約50人が逮捕され、複数の欧州議員から「中国とは建設的な協力はできない」と批判が相次いだ。欧州議会は人権問題に敏感で批准に暗雲も漂う。

EUのインド太平洋重視への転換はこれまで中国一辺倒だったアジア外交を東南アジアやインドなどに視野を広げる狙いがある。医薬品や自動車などの戦略部品や原材料の中国依存は、コロナ感染拡大に伴う供給網(サプライチェーン)の寸断で欧州の工場を停止に追い込んだ。対中国関係で経済の実利は維持しつつ、価値を共有しやすい地域との関係を深める。

1月にEU議長国に就いたポルトガルは、5月にEU・インド首脳会議を開き、世界最大の民主主義国との関係強化を目指す。13年から中断しているFTA交渉の再開も視野に入れる。EU高官は「インド太平洋地域に向けた戦略に合致する」と指摘する。

インド太平洋構想の広がりに中国は警戒感を示す。東南アジア4カ国訪問を16日に終えた王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は「ASEAN各国との関係が深まった」と強調する一方、特定の国家をターゲットに政治集団化する「偽の多国間主義」には反対すると語った。17日、国営新華社が伝えた。

インド太平洋地域の各国は欧州の方針転換を歓迎する。特に地域の中心に位置する東南アジアにとり、欧州は日中韓や米国に比べ関係が希薄だった。コロナで経済が落ち込むなか、対立する米中と異なる巨大市場として関心が高まる。19年にシンガポール、20年にベトナムがEUとのFTAを発効した。インドネシアはEUとの経済連携協定(EPA)交渉について21年中の妥結を目指す。