[FT]バイデン政権 キューバとの関係改善へのハードル

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『過去数十年で最悪の経済危機に苦しむキューバ市民は、米国でバイデン次期大統領の政権が発足すれば状況が好転すると期待している。同氏が対キューバ制裁を緩和し国交正常化したオバマ前政権で副大統領を務めたからだ。

両国の関係改善は長く困難な道のりになることがわかっていた。さらに、トランプ政権が先週、キューバをテロ支援国家に再指定したことが新たな障壁として加わった。

ポンペオ米国務長官は任期がわずかとなった先…

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・ポンペオ米国務長官は任期がわずかとなった先週に行った再指定発表の声明で、キューバを殺人者、爆弾製造者やハイジャック犯を支援していると非難した。これにキューバ政府は激しく反発した。米はシリア、北朝鮮とイランもテロ支援国家に指定している。

時間がかかる「テロ支援国家」撤回

・米政権の決定には複数の省庁が関わり、手続きには通常数カ月かかるため、すぐには撤回できない。他にも両国の内政、キューバの南米ベネズエラのマドゥロ政権への支援、またキューバの首都ハバナ駐在の米外交官の原因不明の体調不良をめぐる論争も関係改善への障壁となる。

・「キューバ側からもっと歩み寄らなければ、バイデン政権による控えめな関係改善の動きを意味ある前進とすることは難しいだろう」と米コンサルティング会社テネオのニコラス・ワトソン氏は顧客へのメモに書いている。

・長年経済的に困窮し、現在はソ連崩壊以降最悪の経済危機にひんしているキューバ市民は、バイデン氏に望みをかける。

・南東部マエストラ山脈のふもとの小さな町に住むケティ・パルガーさん(45)は、バイデン氏は「トランプ氏がやりたがらなかったことをしてくれるだろう」とフィナンシャル・タイムズ(FT)に話した。

・「誰もが先行きに注目している。バイデン氏はオバマ氏とつながりがあるので、状況は好転すると思っている。人々は彼を好ましい人物だと見ており、悪くは思っていない」

キューバ市民は景気回復に期待

・ハバナでハンバーガー店を経営するロランド・マトスさんは、オバマ政権時代には米国人観光客が来たので自分の店のような小さなビジネスも繁盛していたと話した。しかしトランプ政権がキューバへの渡航を禁止したため好景気も終わった。「民主党選出でオバマ氏の後継者が大統領に就任することがキューバにとって望ましいのは疑いない。企業は景気回復を期待している」

・しかし、楽観するのは時期尚早かもしれない。新政権発足当初の数カ月に起きるのは大規模な雪解けではなく、関係改善に向けた小さな動きだと専門家は見る。

・調査のため最近キューバを訪問したフロリダ州マイアミ選出の元民主党議員ジョー・ガルシア氏はこう話した。「キューバ政府は幸福な日々が戻ってくると考えている。私は彼らに『オバマ新時代』が訪れるという考えを捨てさせようと努力した」

・ガルシア氏はバイデン政権が最初に取り組むのは、キューバへの送金の1人あたり1四半期1000ドル(約10万4000円)の上限や旅行制限、またハバナ以外のキューバの空港への米航空機の発着禁止など、トランプ政権が導入した措置の一部撤廃だとの見方を示した。

・米キューバ貿易経済会議のジョン・カブリッチ会長は、ベネズエラ危機の解決の方がバイデン氏にとってはるかに重要だと指摘した。「キューバの観光業支援のために渡航制限を撤廃すれば、対ベネズエラ政策でレバレッジ(てこ)を失う。バイデン氏がそんなことをするだろうか」

・バイデン氏の政権移行チームのメンバーは、20日に同氏が大統領に就任してからしか発言できないとして、対キューバ政策についてコメントしなかった。

・キューバ政府はこれまでのところ慎重だ。ディアスカネル大統領は2020年11月の米大統領選以降、バイデン氏に祝意を伝えておらず、公の場で同氏の名前を挙げてもいない。キューバ政界も世代交代というデリケートな過程にある。前大統領で共産党第1書記のラウル・カストロ氏は4月に公職から退く予定だ。

「譲歩はしない」とキューバ大統領

・年末の国民向け演説でディアスカネル氏は、米国と「お互いを尊重し持続する関係」を構築することは可能だが、「革命、社会主義と我が国の主権に関しては交渉せず、どんな小さな譲歩もしない」と述べた。

・キューバの元外交官カルロス・アルズガライ氏は、キューバ政府はトランプ政権がぶち壊した緊張緩和に向けた動きを再開する準備はあるとした上で、「相手が理性的に行動することを期待している」と指摘した。

・米の専門家によればこの点が問題になる。キューバ当局は自分たちを不当な政策の犠牲者だと考えており、関係改善のために自発的に動く必要はないと信じている。

・事態をさらに複雑にしているのは、16〜17年にハバナ駐在の米やカナダの外交官が体調不良を訴えた問題だ。米は大使館官の多くを帰国させ領事業務の大半を中止した。米政府の調査報告書はマイクロ波に直接さらされたことが原因である可能性が高いと結論づけた。

・だが最大の障壁は米国内の選挙対策だろう。トランプ氏のキューバやベネズエラへの強硬姿勢はフロリダ州で中南米系有権者の支持を集めた。今回の大統領選で同氏は前回16年の大統領選よりも大きな得票差を得て同州で勝利した。

・同州選出のルビオ上院議員(共和党)は上院に3人いるキューバ系議員の1人だが、キューバ政府による反体制派の弾圧を理由に制裁緩和に反対している。

・「支援が届くと思った時にキューバ政府がどう反応するか、我々はすでに目にしている」と同氏は12月、地元紙マイアミ・ヘラルドに寄稿した。「我々が一方的な対キューバ政策を復活させ、ラウル・カストロ氏の独裁政権に命綱を投げれば、より多くの無辜(むこ)のキューバ市民が代償を払うことになる」

By Marc Frank and Michael Stott

(2021年1月18日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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