<検証 企業統治改革>(上)社外取締役、経営の要へ

<検証 企業統治改革>(上)社外取締役、経営の要へ
報酬・指名委員長の過半に 模索中の企業も多く
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『コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が2015年に導入されて5年が経過した。統治の改善を通じて日本の上場企業の競争力を高める当初の狙いはどこまで達成できたのか。経営の変化と残された課題を探る。

株主が企業統治を問題視し、トップの交代につながったLIXILグループで、統治改革が進んでいる。

同社は昨年、役員報酬の算出に加味する項目を見直した。「売上高」を外し、代わって入れたのが「投下資本…』

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・同社は昨年、役員報酬の算出に加味する項目を見直した。「売上高」を外し、代わって入れたのが「投下資本利益率(ROIC)」。企業年金連合会で運用執行理事を務めた社外取締役の浜口大輔氏は「規模の追求から資本効率重視に経営の方向性を変える」と狙いを語る。

・11年に執行と監督を分ける委員会設置会社(現・指名委員会等設置会社)となり、統治の「優等生」とも呼ばれたが、実態は旧トステム創業家の潮田洋一郎氏が権力を掌握するものだった。潮田氏が主導して買収したイタリアの企業などは業績不振にあえいだ。

徹底した分離

・この反省から徹底した執行と監督の分離を進める。指名と報酬の委員会には最高経営責任者(CEO)の瀬戸欣哉氏は入らない。浜口氏ら社外取が委員長を務め、委員全員が社外取だ。取締役会議長も社外取で、コニカミノルタの取締役会議長、松崎正年氏が務める。

・日本の取締役会は、会長・社長を頂点とする執行側の決定を追認する役割にとどまってきた。ワンマンな社長をけん制できず、縮こまって業績が伸びなくても投資や事業再編を促すことはできなかった。

・統治改革は本丸を取締役会の強化に据え、しがらみにとらわれず経営に目を光らせる社外取の役割を重視する。13年にトヨタ自動車、14年にキヤノンが初めて社外取を入れ、統治指針で導入は加速。指針が求める2人以上の独立社外取のいる企業は5年前の5割弱から9割強になった。

・指針への形だけの対応を脱して、社外取を経営の要とする企業も増えてきた。1つの指標が、取締役会の下に置いて社外取の関与を強める指名・報酬委員会の設置と、その委員長を社外取がになっているかどうかだ。

・東証によると報酬委と指名委がある企業の割合はともに東証1部上場の約6割に高まってきた。委員長が社外取の割合(報酬委と指名委の平均)は、委員会が法定の指名委員会等設置会社では17年の7割から20年に9割に高まった。任意の委員会では同期間に10ポイント増え53%と過半になった。

・社長の「権力の源」とされてきたトップ人事を社外取が決める例すら増えてきた。

社長交代を主導

・「(旧経営陣の意思の考慮は)一切無い」。荏原の昨年の社長交代を、指名委の委員長などの立場で主導した宇田左近氏は断言する。多い月には3度委員会を開き、3年かけて候補を絞り込んだ。宇田氏は「取締役や投資家に対して指名プロセスや理由を説明する責任がある。前例踏襲の中に答えは無い」と語る。

・取締役会が監督の役割を強めるなか、議論の中身は変わってきた。

・「技術革新が進めば楽器はどうなっていくのか」。ヤマハでは、部長級の人事異動や少額投資、地方拠点の新設のようなこまごました議題は取締役会から消えた。長期の経営を見据えた議論が中心の「決めない取締役会」となった。

・三菱地所は、不動産投資などの業務執行の議案は経営会議などに委ね、経営計画などの議論に注力するようにした。

・取締役会の時間は長くなった。経産省調査では、1回当たりの所要時間を「2~3時間」と答えた企業の割合が16年度の23%から19年度には31%に増えた。「1時間未満」の回答は同期間に15%から11%に低下した。

・もっとも、まだ形式的な対応を脱しないケースは多い。法律の求めで委員会を設ける指名委員会等設置会社と異なり、任意の委員会では、「実質的な決定権をあまり持っていない企業が多い」(弁護士の国広正氏)との指摘もある。

・統治の形作りはまだ模索中の企業が大半だ。ツルハホールディングスは今年、取締役会が機能しているかどうか分析したところ、決議事項などについて検討時間が短く、代表取締役の後継者計画もあいまいとの課題が浮かび上がった。指名委員会の設置を視野に入れて、改革に着手する。

・取締役会議長を誰が担うかも今後の課題だ。英国ではCEOと議長が分離され、米国でも別にする傾向が強まってきた。宝印刷によると社外取が議長を務める企業は東証1部で61社にとどまる。東芝や神戸製鋼所など不祥事が推進力となった企業が多く、全体には議長のあり方を再検討する機運はまだ乏しい。