総理首席秘書官が3か月半で異例の交代 近づく官邸崩壊の足音

https://blogos.com/article/510612/

『菅政権がコロナ対策の甘さで窮地に陥っているが、官邸崩壊も近づいているようだ。元日、首相官邸で異例の人事が発令された。「総理首席秘書官」と呼ばれる政務秘書官の交代だ。菅事務所の秘書である新田章文氏が辞職し、後任に財務官僚で内閣審議官を務めた寺岡光博氏が就任した。

【写真】官邸で、盆栽をバックに会見する菅首相

 政務秘書官は各省庁から派遣される6人の事務秘書官を束ねる役割で、官房長官と並んで官邸中枢を取り仕切る。

 安倍前内閣では、“総理の懐刀”といわれた経産省出身の今井尚哉氏が7年半にわたって政務秘書官を務めたが、政権発足3か月半での政務秘書官の交代は例がない。政治ジャーナリスト・藤本順一氏が語る。

「勝負の3週間が始まった昨年11月頃から、菅首相の秘書官が『総理に直接、打ち込めない』とぼやいているという情報があった。菅首相は各省出身の秘書官と頻繁に打ち合わせをしているが、首相がGo Toを継続したいと頑なだから、秘書官が中止を具申したくてもできないというのです」

 その結果、対策が後手に回ってGo To一時停止と支持率急落に見舞われた。官邸スタッフが語る。

「菅総理は官房長官時代のように役所や党の情報が入ってこないからコロナ対策の判断が遅れたと不満が強い。その責任を政務秘書官が取らされた」

 安倍政権時代、コロナ対策は「官邸官僚」といわれた今井氏を中心とする経産官僚が仕切り、各省庁をまとめていたが、菅首相は安倍時代の官邸官僚を“パージ”し、官邸から追放した。その結果、経産省は菅政権と距離を置き、コロナ対応も情報の継続性が失われた。

 菅首相が推進するデジタル庁設立や「縦割り行政の打破」という行革も霞が関を敵に回す政策だ。

 財務官僚の寺岡氏を政務秘書官に据えたのは、財務省の力を借りて官邸を立て直し、役所の反乱を防ぐため。つまり、菅氏自身が総理としての力の低下を自覚し、延命を図る目的ではないか。

※週刊ポスト2021年1月29日号』

内閣総理大臣秘書官
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E9%96%A3%E7%B7%8F%E7%90%86%E5%A4%A7%E8%87%A3%E7%A7%98%E6%9B%B8%E5%AE%98

安倍1強を支えた「官邸官僚」、国難に機能せず(2020年8月19日)
https://www.medical-confidential.com/2020/08/19/post-11083/

『安倍晋三首相の長期政権を支えた「官邸官僚」が新型コロナウイルス対策では有効に機能しなかったと言われる。

 官邸官僚とは、首相官邸に勤務する官僚一般の事ではない。「安倍1強」下で官邸に権力が集中し、政府内で特別な影響力を持つに至った数人を指す政界用語である。

 官邸官僚は安倍首相直系の今井尚哉・首相補佐官兼首相秘書官、佐伯耕三・首相秘書官らと菅義偉・官房長官直系の杉田和博・官房副長官、和泉洋人・首相補佐官らの2系統に分かれる。

 前者は首相への強い忠誠心と、内閣支持率の浮揚策を捻り出す発想力でのし上がった。後者は各省庁の幹部人事を握る内閣人事局の権限を背景に官僚組織を統括してきた。

 「安倍系」官邸官僚がアイデアを出し、「菅系」官邸官僚が実働部隊の各省を動かす。安倍長期政権の延命を共通目的として手を携えてきた両者の絶妙なバランスが安倍1強の原動力となって機能した。』

『それが崩れ始めたのは、2017年秋の衆院解散・総選挙で自民党が大勝した頃からだ。自民党は同年3月の党大会で党総裁の任期を連続2期6年から3期9年に延長する党則改定を行っていた。衆院選の勝利により、翌18年9月の総裁選における安倍総裁の3選が固まった。

 安倍総裁の任期は21年9月まで。同年10月には衆院議員の任期も切れる。自民党が再び党則を変えて総裁4選を可能としない限り、安倍政権は長くて21年秋まで。政権の終わりが見えた事により、安倍系と菅系の思惑に食い違いが生じた。

 安倍系は長期政権のレガシー(政治遺産)を残す事を優先するようになった。しかし、憲法改正、北朝鮮による拉致問題の解決、ロシアとの平和条約締結、中国との「第5の政治文書」等々、思うに任せないまま時間切れが近づく。

 一方の菅系は「ポスト安倍」を見据えて動き出した。あわよくば菅氏本人が後継首相に。別の首相になったとしても、菅系官邸官僚が日本の官僚機構を統括する権力構造を維持しようという思惑が働く。』

『安倍系と菅系の亀裂が露わになったのが「令和」への改元だった。19年4月に新元号を発表した菅氏が「令和おじさん」ともてはやされ、ポスト安倍候補に浮上した事に安倍系が警戒心を強めた。』

『もう1つ、官邸官僚間のバランスを崩したのが19年9月の正太郎・国家安全保障局長の退任だ。

 安倍外交がそれなりに評価されてきたのは自由・民主主義・市場経済・法の支配に基づく米国主導の戦後秩序を重視する「価値観外交」を展開してきたからだ。その点で谷内氏の貢献度は高い。だが、レガシー優先へと舵を切った安倍系官邸官僚には価値観外交が障害となる。

 対中関係改善のレールを敷いてきた谷内氏だが、戦後秩序にチャレンジする中国の「一帯一路」構想への協力には否定的な姿勢を崩さない。北方領土の「4島返還」にこだわらない柔軟姿勢で日露平和条約交渉の下ごしらえをしてきたのも谷内氏だが、返還後の米軍駐留拒否を求めるロシア側に譲歩はしなかった。

 このままでは日中も日露もレガシーづくりは叶わない。安倍系官邸官僚の不満が高まる中で谷内氏は官邸を追われ、安倍外交の暴走が始まった。東京五輪・パラリンピックの開催を花道に首相が勇退するシナリオも念頭に、今年4月に予定されていた習近平・中国国家主席の国賓来日と、5月に予定されていた首相訪露にレガシーの照準が絞られた。』