好調輸出に人民元高の波 「利益削るほか策なし」

好調輸出に人民元高の波 「利益削るほか策なし」
コンテナ不足も追い打ち
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1638B0W1A110C2000000

『中国の経済成長率は、新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻った。生産の早期立て直しで海外からの受注も舞い込み、外需も成長を下支えする。ただ世界に先駆けた景気回復はやや急ピッチな人民元高を招き、輸出に逆風となりつつある。天津港で、新型コロナ後の貿易の実情を探った。

天津市中心部から車で30分ほどの天津浜海国際空港。隣接する貨物倉庫では、何台ものフォークリストがひっきりなしに荷物を運び込む。厳重に梱包…

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・厳重に梱包されたマスクなど医療品が海外へと出荷されていく。

・「受注は確かに多いけれど、業績好調とは決して言えませんね」。天津市で貿易会社を経営する李華さんはため息をついた。昨夏以降、海外企業が生産工程をインドやベトナムから中国に移した。受注残が積み上がったが、手放しに喜べないのは、人民元高などが利益を圧迫するからだ。

・人民元相場は21年に入ってから1ドル=6.4元台に突入した。新型コロナを抑え込んだばかりの2020年5月下旬から一貫して元高が進み、約8カ月で1割上昇した。

・貿易取引の為替レートは契約時の水準を用いることが一般的だ。李さんの会社がいま扱う輸出品の契約は1ドル=約7元が大半だ。契約後の元高で生じた差損は中国側の企業が負担しなければならない。「もともと15%前後だった粗利益率は元高で大幅に下がった」。

・李さんの会社と取引があるマスクメーカーは最近、高性能マスク「N95」の輸出を人民元で決済する契約をまとめた。為替リスクを回避できたが「例外にすぎない」(李さん)。電化製品や食品の輸出入商社を営む劉延齢さんも「人民元で取引できるのはベトナムやベラルーシなど経済規模が大きくない国や、国境を接するロシアなどに限られる」と語る。

新型コロナでコンテナが不足し輸送費が上昇(天津市)

・コストを圧迫するのは為替だけではない。コンテナ不足で跳ね上がった輸送費も重荷だ。コンテナが寄港先で新型コロナ対応の消毒を義務付けられたことで、稼働するコンテナが減少。福建省の輸出企業は「新型コロナまん延前と比べて3倍、場合によっては10倍に高まった」と頭を抱える。

・李さんも昨年、米国への輸出契約を取り消したことがある。20フィートコンテナあたりの輸送費が1万3千ドル(約1350万円)と、新型コロナ前の3千~4千ドルから跳ね上がったからだ。受注して生産できても利益が吹っ飛べば、意味はない。

・利益を少しでも確保しようと、値上げの誘惑にかられる輸出企業も多い。ただ李さんはそれも難しいと打ち明ける。「サプライチェーン(供給網)が復旧していない海外に競合相手がいなくても、中国国内にいくらでも同業他社がいる。価格競争は激しい」。

・コスト増への対応策を聞くと、劉さんが首を振りながらつぶやいた。「我々は為替などをコントロールできない。利益を削って耐えしのぐほか策はない」。

・受注量さえ減り始めた企業もある。天津市のオフィスビルの一室に、米大リーグやプロフットボールNFLのチームロゴなどを刺しゅうした見本服が色鮮やかに並ぶ。米国からのオーダーメード受注を手掛けてきた科思特輸出入社長、張姸さんは肩を落とす。「昨年12月の受注は前年同月と比べて5割は減った」。

「昨年12月の受注が前年比半減した」と語る科思特輸出入の張姸さん(天津市)

米国からオーダーメード受注してきたセーターなど見本服(天津市)

・米国で新型コロナ感染が再拡大し「顧客の消費力が明らかに落ちている」。元高などコスト上昇に受注減が追い打ちをかける。日本など他の海外市場の開拓とともに、緩やかな持ち直しが続く国内消費市場にも注目。これまであまり関心を払ってこなかったが、京東集団(JDドットコム)などネット通販アプリでの販売を検討している。

・体力勝負のしわ寄せは中小企業に行く。「ここ最近、天津でも倒産に追い込まれた中小輸出企業は少なくない」(劉さん)。マクロ統計でみる輸出の好調さとは裏腹に、中国の中小業者は無視し得ない課題に直面している。

(天津で、川手伊織)