共通テスト、「思考力」測定は道半ば 情報処理力で差も

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『初めての大学入学共通テストが17日、2日間の日程を終えた。大学入試センター試験が暗記型学習への偏りを招いたとの批判から導入が決まった共通テストは、思考力をより重視する方針を掲げた。知識だけでは歯が立たない問題は増えたものの、盛りだくさんの情報を読みこなす力も必要になり、物事を深く考える力の測定には課題を残した。

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「センター試験から大きな変化はないと感じた」。数学の試験問題をみた高校教諭は拍子抜けし…

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・「センター試験から大きな変化はないと感じた」。数学の試験問題をみた高校教諭は拍子抜けしたように話した。

・2017、18年に実施された共通テストの試行調査では国語で法律条文を題材にしたり、数学で建築基準法を踏まえて階段の大きさを割り出させたり、センター試験にはない問題が頻出した。

・今年の本番はこうした問題は少なく、センター試験を踏襲した内容が目立った。それでも高校教員や予備校講師からは「センター試験に比べてやや難化した」「消去法では解けない問題が増えた」との分析が相次いだ。

・主な要因は思考力をより重視した試験への転換にある。日本史では、荘園の図からブラジルの新聞まで、多様な資料を読み解く問題が出た。東京都立西高校の吉野領剛教諭は「問題を正しく読めていないと、歴史的事実を知っていても解けない問題が出た。国語的センスも問われる問題が増えた」と指摘する。

・英語のリーディングでは生徒が校長と校則を巡って交渉する場面を取り上げ、「あなたならどうするか」と問うた。埼玉県立浦和高の大沢海教諭は「相手にどう反論するか、論理的に答える思考力だけでなく、表現力も問える」とみる。

・大学入試センターの担当者は17日、「教科書の知識でそのまま答えられる問題は避けた。文脈を踏まえて一段階、思考を入れてもらうようにした」と述べ、成果に自信を見せた。

・一方、「深く考えるところまで至らなかった受験生も多いのでは」との指摘が出た。複数の資料をみるなど大量の情報を処理するので精いっぱいとみられる科目が相次いだためだ。

・例えば英語のリーディングは、英文が昨年のセンター試験に比べて約1千語多い約5千語となり、多くの受験生が「時間がなかった」と漏らした。リスニングも、音声を聞きながらメモをとることを想定して複雑な問題が出された。「思考力や判断力が測れる設問ではあったが、時間が短すぎる。結果的に情報処理力が問われることになった」(都立日比谷高の中村隆道教諭)との声が出た。

・共通テストには試験問題を高校の授業改善につなげる狙いもある。実際、試験では授業の場面などを想定した問題が相次いだ。数学では方程式を巡る「太郎」と「花子」の会話から正答を考えさせた。センター側は「これらを例にして授業を展開してもらうこともできる」と話した。

・ただ、授業の見直しにつながるか疑問視する声もある。国語の現代文では題材とする小説の欠点を指摘する新聞批評も並べて考察させた。埼玉県立大宮高の畑文子教諭は「高校では『正確に読む』ことを重視し、内容の評価の指導はあまりしてこなかった」と話す。批判的な見方を養うには「(文章を)たくさん読んで考えないといけないが、理系の生徒などにそこまで求めるのは難しいのでは」という。

・共通テストは記述式問題の導入が頓挫し、センター試験と同じマークシート式だけになった。受験生の発想力や表現力などをみるのは難しい。新傾向の問題も深く考えることなく解ける受験テクニックが編み出されていく懸念は残る。

・経済協力開発機構(OECD)の18年の学習到達度調査(PISA)では、日本の15歳の読解力は参加国・地域中15位と過去最低の順位に沈んだ。特に記述式問題の正答率が落ち込み、批評的に考える力の弱さなどが指摘されている。

・変化が激しい社会では、身につけた知識を活用する力が求められる。国などは今後、共通テストでの記述式や英語民間試験の導入の可否に加え、プログラミングの知識を問う「情報」の追加なども検討する。これからの時代に必要な力をどう測るか、課題は多い。