丑つまずくか2021年 命運握るコロナワクチン

丑つまずくか2021年 命運握るコロナワクチン 
編集委員 滝田 洋一
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH127R60S1A110C2000000

『2021年は丑(うし)年。過去を振り返っても、丑年は経済や政治が大波乱になっている。今年もまた丑がつまずく年になるのだろうか。

リーマン・ショックが尾を引いた09年。日本はマイナス成長に陥り、総選挙敗北で自民党は下野した。21年の日本もコロナ禍に襲われ、経済が大きく落ち込んでいる。

菅義偉政権の命運を握るのは、衆院議員の任期が満了する10月までに実施される衆院選。その試金石として、4月25日の補欠…

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・その試金石として、4月25日の補欠選挙に政界の関心が集まる。

・収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相の議員辞職に伴う衆院北海道2区。羽田雄一郎参院議員(立民)が昨年末にコロナで死去したのに伴う参院長野選挙区である。

・衆院北海道2区では自民党は候補者擁立を断念した。参院長野選挙区では羽田議員への同情票が野党に流れると予想される。「補選が2つあって負ければ『菅政権は大丈夫なのか』ということが出てくることもないとは言えない」。自民党の下村博文政調会長は1月5日、語っていた。

・補選の前にも知事選がある。1月24日投開票の岐阜・山形、3月21日の千葉、4月4日の秋田と続く。岐阜県知事選は55年ぶりの保守分裂選挙に。自民党の体勢は万全とはいえない県が目立つ。

・菅首相が主導権を確保し選挙を戦うためとして、4月25日を投票日とした解散総選挙が浮上する。それを逃すと政権は追い込まれかねない。

・09年当時は麻生太郎政権。このままでは選挙に勝てないと、現役閣僚だった石破茂農水相が麻生おろしに動いた。与謝野馨財務相も同調した。

・麻生内閣で、自民党の選挙対策副委員長を務めたのは菅氏である。菅氏は麻生氏に、08年9月の内閣誕生直後には解散の見送りを進言した。

・結果的に麻生首相は衆院解散の時期を失し敗北した。それから12年。菅首相の脳裏には09年の出来事が走馬灯のように駆け巡っているはずだ。

・20年9月に菅内閣が誕生した時点で衆院を解散していれば、今ごろはこれほどの苦境に陥らずに済んだはず。あえて解散を見送ったのは、菅カラーの政策を打ち出し、民意を問いたかったからだろう。

・50年の温暖化ガス排出量を実質ゼロにすると宣言したのは典型である。デジタル庁創設や行政の縦割り打破など、政権は野心的な政策を打ち出した。グリーンとデジタルの方向性は誤っていない。

・携帯電話料金の引き下げ要請を機に、通信大手は値下げに踏み切った。中小企業の生産性向上や地域金融機関の再編も、安倍晋三政権が手を付けていなかった分野である。

・つまずきの石はやはりコロナ収束の時期の見誤りだ。

・コロナ対策と経済再生の両立。菅内閣は2つの目標を掲げたが、昨年12月に閣議決定した追加経済対策をみても、軸足はコロナ後に置かれていた。総額40兆円の財政資金の配分をみればハッキリする。

・コロナ拡大防止策に充てられたのは5.9兆円。それに対し経済構造の転換に18.4兆円、防災・減災・国土強靱(きょうじん)化に5.6兆円を配分した。コロナ対策の予備費は10兆円用意したものの、政権の関心がコロナ後にあったのは否めない。

・コロナで打撃を被った事業者などへの支援制度もしかり。持続化給付金や家賃支援給付金の支給は一度きりだし、申請は21年1月までとなっていた。リストラを回避するための雇用調整助成金の特例も21年2月末までだった。

・ところが昨年末からコロナ第3波が急拡大し、1月7日に緊急事態宣言を出さざるを得なくなった。それに伴い、営業時間短縮に応じた飲食店などへの補償は拡充された。

・それにしても最もコロナ禍の深刻な東京都と組み、昨年12月時点でもう少し手厚い補償を用意しておけば、店舗の時短協力を得られていたはず。今ほどの医療現場の逼迫も回避できたかもしれない。

・首相と都知事のソリが合わず、効果の乏しいお願いを繰り返した。その結果が、コロナ敗戦だった。東京五輪でも国と都の呼吸が問われる。

・3月25日には東京五輪の聖火リレーがスタートする。その時点では7月に五輪を開催できるのかを判断しなければならない。海外から選手団など大勢の人々を迎え入れられるだけの態勢づくりが可能なのかが問われるのである。

・局面を転換するゲームチェンジャーはある。コロナワクチンだ。2月下旬から日本でも医療従事者、高齢者らへの接種が始まる。変異種が世界に広がるなか、ワクチン接種は時間との勝負となる。

・際立って接種が迅速なイスラエル。1月中旬時点で国民の2割に当たる人々が1回目のワクチン接種を受けた。

・イスラエルでは健康保険組織が前面に立ち、競技場や駐車場、校庭に接種センターを設けた。予約、接種、記録の流れをデジタル化し、混乱なく効率的な接種を実現した。

・日本でもいかに混乱なく迅速に接種を進めるか。人口900万人あまりのイスラエルと異なり、日本では接種の実務を担うのは地方自治体である。国民への通知や記録は主に紙ベースとなる。1人10万円の定額給付金支給で行政の窓口が大混乱した昨年のデジタル敗戦を繰り返したら、その時点で政権は見放される。

・接種のかじ取りは厚生労働省任せにせず、関係省庁を束ね官邸主導とする体制は欠かせないし、その準備を急いでいるはずである。首相が前面に立つときだ。

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