上場予備軍500社、社外取締役の争奪戦

上場予備軍500社、社外取締役の争奪戦
指針強化で対応急務 人気人材は2年待ちも
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『社外役員や監査役といったガバナンス人材の確保に悩むスタートアップが増えている。上場を目指すスタートアップが増え、金融庁などが定める企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を見据えて体制を整えるためだ。成長の早いスタートアップのガバナンスを担える人材供給には限りがあり、適切な人材探しを支援するサービスも求められている。

ヤプリ、3年越しで人材確保
「3年越しでガバナンス体制を構築した」。202…

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「3年越しでガバナンス体制を構築した」。2020年12月に東証マザーズに上場したヤプリの角田耕一取締役は振り返る。ベンチャーキャピタル(VC)や人材エージェントへの相談を繰り返した後、18年に人材コンサルティングのプロノバ(東京・新宿)の岡島悦子社長を社外取締役として迎え入れた。

上場が視野に入った企業は証券取引所への上場申請の2年以上前から監査を受ける。そのため指針にのっとった監査体制をそれ以前から整備しなくてはならない。さらに申請の1年以上前には株主などの利害関係者ではない独立した社外取締役を確保する必要がある。

ヤプリの場合、VCが仲立ちし、「岡島さんが他社で務める社外取締役がちょうど任期満了だった」(角田氏)とタイミングにも救われた。ただ上場を目指すスタートアップの社外取締役は事業の成長とガバナンス確保の両立が求められる。事業開発や組織づくりの知見を持つ人材は引く手あまただ。

年間の上場社数は90社前後で推移する。VCのボンズ・インベストメント・グループ(BIG、旧オプトベンチャーズ、東京・渋谷)の日野太樹パートナーは「500~600社が上場の準備をしているはずで、社外取人材の取り合いになっている」と指摘する。

背景には上場予備軍の増加がある。ベンチャーエンタープライズセンターによれば、国内のスタートアップへの投資件数は19年度に1490件と、4年前から5割増えた。投資側は数年での上場での回収を目指し、投資先が社外役員を確保することは重要な要素だ。

ITに精通した人材確保に壁
こうした人材の需要は高まるが、経営陣だけでそろえることは難しく、VCの人脈で手当てすることが多い。BIGの日野氏は「ゴルフや会合で地道に候補者との接点を増やしている」と話す。投資先への紹介につながった例もあるという。

社外役員候補が不足するのは1人が兼任できる社数が限られるためだ。経営幹部として上場を経験した人は特に需要が高い。兼任は5社ほどが上限とされる。スタートアップ支援のシニフィアン(東京・港)の小林賢治共同代表は「人気の社外役員は任期満了のタイミングを待つため2年待ちも珍しくない」と明かす。

常勤と非常勤の計3人必要な監査役も悩みの種だ。社外監査役は「上場審査に対応するには中堅事務所のパートナー級以上の弁護士や公認会計士が望ましい」(日野氏)。その中で、技術トレンドの変化が激しいIT(情報技術)に精通し、経営全般をみられる人材は限られる。報酬水準は月20万~30万円と5年前から約3倍になったという。

BIGの日野パートナー(左)は「投資先に紹介するため地道に社外取締役候補者と関係を作っている」と話す
紹介サービスの需要も高い。パソナグループ傘下のパソナJOB HUB(東京・千代田)では上場を見据えるスタートアップなどからの依頼が20年度に100件以上と前年度から倍増する見込みだ。ビジネス相談仲介のビザスクは20年12月、12万人が登録する同社データベースから候補者を探すサービスを始めた。すでに企業や候補者複数から問い合わせがあったという。

カネの次はヒト、「数合わせ」の先へ
金融庁と東証は15年に企業統治指針を定めた。21年に予定する改定では上位市場で役員の3分の1を社外取締役とすることを求めるなど基準の厳格化が進む。パソナJOB HUBの高木元義社長は「こうした動きが未上場企業にも波及している」と指摘する。

未上場段階から社内の体制整備を進める動きが広がる中、BIGは21年から投資担当者が社外取締役として投資先の経営に参画することにした。従来はオブザーバーとして支援していたのを改めて位置づけを明確にした。情報共有などの範囲を規約で定める企業が増えているためだ。

ガバナンス整備は一時的に負担が大きくても、中長期の経営改善に生かすのが目的だ。過去7年でスタートアップの投資額は約3倍に成長し、カネは潤沢だ。シニフィアンの小林氏は「外部人材も数合わせから一歩先に進めることが求められている」と訴える。若い企業の「粗製乱造」を避けるためにも、厳しい外部の目線で成長を支えるヒトの確保は大きな課題となる。(新田栄作)

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福井健策
骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
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ひとこと解説 そうですね、、無論ITまわりの基本的な知識は重要でしょうが、この方面は動きも早く、文献や過去の事例の中に正解が記載されていることは滅多にありません。その都度、リスクとメリットをバランスさせて選び取って行く力が問われます。その意味では過去の経験にこだわり過ぎるより、「社内の人々ときちんと対話ができるか」「専門外の分野での幅広い知見」のような総合的な力を見ることが、やはり王道ではないでしょうか。
知名度ばかり高くて資料を読み込む時間もなく、コンプライアンスを盾に現場の積み重ねを潰しにかかる「人材」を、間違っても呼び込まないことだと思います。
2021年1月18日 8:22いいね
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村山恵一
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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ひとこと解説 スタートアップの進出先は医療や金融など公共性・公益性をより強く問われる領域に広がっています。経験値の高い人材を外から迎えることの重要性は高いといえます。最近は起業家自身も大企業・大組織出身が珍しくなく、他社・他者とコラボすることや多様な意見を聞くことの大切さを認識している人が多いと感じます。ですから社外取締役の確保が前進の妨げになってはもったいない。人材供給の工夫に期待したいところです。
2021年1月18日 8:38いいね
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