サイバー空間に広がる戦線 軍民協力、イスラエル先行

サイバー空間に広がる戦線 軍民協力、イスラエル先行
変貌する攻防 湾岸戦争30年(上)
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『クウェートを侵攻したイラクに多国籍軍が空爆し、湾岸戦争が始まってから17日で30年になった。国の正規軍同士が砲火を交える戦争は下火になったが、サイバー攻撃や無人機を使う非対称戦のように、日常と戦争のはざまでたたき合う「グレーゾーン」の戦いは絶えない。その前線と化したのが、中東だ。

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・IAIは防空システム「アイアンドーム」を手掛ける国防の要だ。従業員の情報が闇サイト群「ダークウェブ」に流出したと伝えられた。

・伏線はその半年前。イラン中部ナタンズの核施設で奇妙な火災が起きた。イランの核武装を恐れるイスラエルのサイバー攻撃だとの見方が強い。「サイバー攻撃への対応は国防の一部だ」とイランの国防当局者は報復をほのめかしていた。

・1991年の湾岸戦争は、冷戦終結で唯一の超大国になった米国が多国籍軍を束ねて軍事行動を起こすはしりとなった。日本は130億ドルを支援したが人的貢献がないと批判され、自衛隊の海外派遣議論を巻き起こした。

・世界はリアルタイムで放映される米軍の巡航ミサイル攻撃に目を奪われた。湾岸戦争は、安全保障の構図を2つの点で大きく変えた。

・まず通信技術を駆使した統合作戦や誘導攻撃の威力が実証され、軍事のネットワーク化とデジタル化が加速した。そしてイラクの弱体化でイランが台頭し、イスラエルの危機感をかき立てた。いずれも中東のサイバー戦の導火線になった。

・先んじたのはイスラエルだ。「成長するIT(情報技術)産業、熟練した軍と情報機関、効果的な官民協力――サイバー作戦の要素がそろっている」と米カーネギー国際平和財団のジョン・ベイトマン氏は指摘する。

・イランやイスラム教シーア派武装組織ヒズボラによる脅威を背景に、イスラエルは国家の生存を賭けた技術開発に資金を大量投入した。

・サイバー戦の本格的な幕開けを印象づけたのは10年前。イスラエルが開発したとされるコンピューターウイルス「スタックスネット」が、イランの遠心分離機を破壊した。

・イスラエルが蓄積した技術は「すべてがネットワークにつながるデジタル時代には、世界一流のサイバー戦能力を意味する」(米中東研究所のマイケル・セクストン氏)。

・サイバー攻撃は1発の銃弾も撃たずに相手方に深刻な打撃を与え、しかも主体が分かりにくい。標的は国家に限らず、欧米や日本の企業が狙われる例も相次いだ。湾岸戦争で確立した米主導の国際秩序を新技術の浸透が揺さぶる。

・「我々は見えない戦時下にいる。中国、ロシア、イランも権益拡大の好機と気づいている」と米戦略国際問題研究所(CSIS)のジェームズ・アンドリュー・ルイス氏はみる。

・20年末、カタールの衛星テレビ局アルジャズィーラの記者らのスマートフォンがハッキングされていたと専門家が公表した。同国と断交していたサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)の関与を疑う声が出た。

・仕込まれたとされるスパイウエア「ペガサス」はイスラエル企業製だ。イスラエルが強みを持つサイバー技術は、同国にアラブ諸国が近づいた大きな要因だ。長く対立してきたUAEなどが20年、国交を樹立した。

・見えない「灰色の戦場」が表の外交をも動かしている。