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『【バンコク=岸本まりみ】東南アジアのラオスが中国への依存を強めている。急ピッチで建設を進めているラオス初の高速鉄道は中国側の投融資でかなりの部分がまかなわれているとみられ、新型コロナウイルスへの対応でも中国頼みが鮮明だ。返済に窮すれば重要インフラの権利を握られる「債務のワナ」に陥るとの観測も出ている。
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・首都ビエンチャンと中国南部の国境地帯を結ぶ約400キロメートルで、総事業費は約60億ドル(約6240億円)。将来は中国の雲南省昆明市とタイの首都バンコクを結ぶ路線の一部になる計画だ。
・ラオス北部ルアンプラバンの李志工中国総領事は2020年12月末、「ラオス区間の半分以上の敷設を終えた」と宣言した。両国が参加する合弁会社が16年に着工し、年内の開業を目指している。旅客と貨物の両方を運ぶ鉄道として活用する。
・ラオスは中国の支援でほかにも水力発電ダムなどの大型インフラを整備する。19年にはラオスの最高指導者、人民革命党書記長のブンニャン氏が中国を訪問し、一帯一路構想の推進を含む「ラオス・中国運命共同体建設マスタープラン」に署名した。ラオス国営メディアによると、ブンニャン氏は15日までの党大会で、中国との関係を「戦略的パートナーシップ」から「運命共同体」に引き上げたと表明した。
・新型コロナによる打撃で、中国頼みはさらに強まった。ラオス保健省は20年末、中国から新型コロナワクチンを調達し、医療従事者に投与し始めたと発表した。
・世界銀行によると、ラオスの2国間公的債務残高の約8割は対中国だ。対中債務残高は19年、前年比2割増の約52億ドルに達した。返済負担は重く、一部ではデフォルト(債務不履行)の可能性も浮上する。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は20年9月、ラオスが中国に債務再編を依頼したと報じた。かわりに重要なインフラに関わる権利を渡すよう求められる可能性もある。
・「債務のワナ」はすでにほかの途上国で現実になっている。スリランカは17年、ハンバントタ港の99年間の運営権を中国に渡した。パキスタンは15年、グワダル港の43年間の利用権を中国に譲渡した。
・ラオスの1人当たり国内総生産(GDP)は日本の約6%にすぎない。24年に最貧国からの卒業を目指すが、アジア開発銀行(ADB)は20年のラオスの実質成長率がマイナス2.5%に陥ったと推定する。
・アジア経済研究所の山田紀彦研究員は「ラオスは今後も群を抜いて資金力のある中国に頼る」とみる。対中債務が膨らむなかで「返済の猶予など優遇措置を受けると、中国への依存はさらに高まる」と指摘する。