英、自由な金融アクセス失う 「見事なオウンゴールだ」

英、自由な金融アクセス失う 「見事なオウンゴールだ」
亀裂の欧州(5)
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『年明け4日、ユーロ建て欧州株取引が一斉にロンドンを離れた。

「見事なオウンゴールだ。英国は強固な地位を築いていた欧州株取引を失いつつある」。英証券取引大手アクイス・エクスチェンジの最高経営責任者(CEO)、アラスデア・ヘインズは米ブルームバーグテレビで断言した。同社では99.6%が仏パリの施設に流れた。

【前回記事】

欧州に亀裂、ほくそ笑む強権国家 ロシア・中国の思惑
前英首相のテリーザ・メイは2020年12月30日、議会下院で、英経済の8割を占めるサービス業が…

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・前英首相のテリーザ・メイは2020年12月30日、議会下院で、英経済の8割を占めるサービス業が軽視された交渉結果を嘆いた。「18年、私は重要な金融分野で合意を得たいと訴えた。画期的なものになるはずが悲しくも実現しなかった」

・英国と欧州連合(EU)は20年6月末までに、金融規制の水準を「同等」と認め相互サービスを保つ枠組みに合意するはずだった。ところが通商交渉の遅れのあおりで合意できぬまま期限切れに。同等性評価を得ている米国やシンガポールより、EU市場へのアクセスで劣ることになった。英・EUは3月までに金融の同等性で結論を出すべく協議する。だが楽観は少ない。

・EU当局はEU向けサービスの事業基盤を域内に置くよう求めている。一定の同等性が認められても英国からの機能流出は続く可能性が高い。

・未公開株取引所を運営するスタートアップの英ファンダービーム。20年12月31日、創業の地エストニアの金融監督庁から待望の投資業免許が下りた。同社サービスは大半がEU向けだ。これまではEU加盟国のいずれかが発行した免許が域内全体で有効となる「単一パスポート制度」に基づき英国の免許が通用したが、EU離脱で使えなくなる。ロンドンを足がかりに急成長したフィンテック企業の基盤は、進歩的なデジタル政策をとる母国に舞い戻った。

・三菱UFJ銀行で欧州法人を束ねる常務執行役員の佐崎孝教は「ロンドンからEUの顧客へのサービス継続は限定されるため、資産・負債を移管していくことになる」と話す。グループで最終的に数十億ユーロ規模が在EUの拠点に移る見通しという。当局の方針次第で「欧州市場の分断が進む懸念がある」。

・市場の分断は効率低下や煩雑化を生む。欧州全体に負の影響を及ぼしかねない亀裂が、金融の世界で先行してあらわになった。(敬称略)

佐竹実、今出川リアノン、中島裕介、石川潤、石川陽平、羽田野主、篠崎健太が担当しました。

【ルポ迫真「亀裂の欧州」記事一覧】

「英国にいては勝てない」 物流、EUとの国境復活
スコットランド、くすぶる「英からの独立」
英国なきEUの不協和音 「立場の違い、明るみに」
欧州に亀裂、ほくそ笑む強権国家 ロシア・中国の思惑

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細谷雄一
慶應義塾大学法学部 教授
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分析・考察 ハロルド・ニコルソンは外交論の古典である『外交』のなかで、政治的な成果を目指した拙速な交渉の合意が、新たな問題をもたらす懸念を指摘しました。ジョンソン首相は自らの政治的成果を焦り、一昨年10月の離脱協定、そして今回の12月の将来協定に関する合意で、詳細を把握することなく(自らは条文の全部を読んでいないと告白している)、時間切れによる「合意なき離脱」となる危機感からも拙速に合意を急ぎました。その代償はあまりにも大きく、最も失いたくなかった金融センターとしてのロンドンの地位を深刻に傷つける結果となりました。よりよい合意をもたらそうとして、妨害されたメイ元首相の怒りは、収まらないでしょう。

2021年1月15日 12:25 (2021年1月15日 13:43更新)
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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ひとこと解説 ロンドンのシティでは、Brexitの後でも金融サービスはシティに集まっている知識や経験、ノウハウがあり、シティはEUだけでなくグローバルな存在だからビジネスは変わらない、という議論をしていた。しかし、結果としてシティはEUの金融市場の中心地としてのメリットがあったわけで、その地位を失ったことの影響はやはり大きい。かつて東京がアジアの中心だったが、それが香港や上海、シンガポールに移っていったのと同じことを意味するのだろう。お金は大きな市場に集まる。
2021年1月15日 11:49 いいね6