図解でわかる「なんちゃって5G」 なぜ速くならない

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『2020年12月31日 2:00 [有料会員限定]

KDDIとソフトバンクは、高速通信規格「5G」のエリア拡大のために、既存の4G用の周波数帯を転用する動きを見せている。KDDIは2020年12月9日に12月中旬に転用を開始すると発表。ソフトバンクも今冬に転用を開始する計画だ。それぞれ4G用に割り当てられた周波数帯の一部を5Gに転用する。転用する周波数帯は4Gと5Gで共用することになる。

一方でNTTドコモは、4G用周波数の転用に慎重な姿勢を見せている。これまでも4G電波を転用し…

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・これまでも4G電波を転用して5Gのエリアとすることは「優良誤認の可能性がある」と指摘。20年10月に開催した決算説明会では、21年度後半に転用を始め、その際は転用した5Gのエリアと新しい電波を利用できる5Gのエリアを明確に分けて示す意向を明らかにしている。

・優良誤認の可能性を指摘しているのは、5Gであるにもかかわらず、通信速度が4Gとほとんど変わらない可能性が高いからだ。そのためこの問題は「なんちゃって5G」という言葉でメディアに登場するようになった。

4Gの電波と5Gの電波は何が違う

・まずはここまで話題になっている電波について見ていこう。国内において、4Gで使われている電波は「プラチナバンド」と呼ばれる700メガ(メガは100万、M)~900Mヘルツ(Hz)帯と、主要バンドとして使われる1.5ギガ(ギガは10億、G)~3.5GHz帯である。

・一方5Gには「サブ6(Sub6)」と呼ばれる3.7GHz帯と4.5GHz帯に加え、「ミリ波」と呼ばれる28GHz帯が割り当てられている。携帯電話の通信に関する仕様を策定している団体「3GPP」は、410M~7.125GHzを「FR1」、24.25G~52.6GHzを「FR2」と定義している。ちなみにミリ波とはもともと波長が1ミリ~10ミリメートルの電波を指す表現なので、周波数に換算すると30G~300GHzの電波を指す言葉だが、5Gの世界ではこの呼び方が定着している。

国内での5G向け周波数の割り当て。総務省やエリクソンの資料に基づく(出所:日経NETWORK)

・5Gでサブ6とミリ波という2つの帯域が使われているのは、電波の性質に合わせて使い分けるためである。電波は周波数が高いほど一度に送れる情報の量が増える。要するに高速な通信が可能になる。

・半面、周波数が高くなるほど距離による減衰が大きくなる。遠くまで電波が飛ばないのだ。さらに直進性が高くなるので障害物によって邪魔されやすくなる。

・電波よりもずっと低い周波数を使う音波と、高い周波数を使う光を考えてみよう。ドアを開けておけば、音は回り込むので廊下の音は聞こえてくる。しかし光は壁で遮られるので廊下の様子を直接見られない。原理的にはこれと同じだ。

高い周波数の電波は遠くまで届きにくい(出所:日経NETWORK)

・こうした電波の特性を考慮して、高速な通信を担うミリ波と、ある程度のエリアカバーを見込めるサブ6という役割分担がなされているわけだ。この状況は、NTTドコモが公開している5Gの対応エリアを見れば分かりやすい。

21年夏のNTTドコモの5Gエリア(予定)。赤い部分が5G、オレンジは4Gのエリアを示す。さらにピンがあるのがミリ波の対応場所である(出所:NTTドコモ)

・しかしサブ6といえど、4Gの電波よりも高い周波数を使っている。だから4Gと同等のエリアまで拡大するには、4Gよりも多くの基地局が必要となる。携帯電話事業者にとって投資コストは高い。そこで4Gの設備や電波を転用できれば、エリア拡大のために過大な投資をしなくて済むというわけだ。

通信速度は期待できない

・以上から分かるように、4G電波の転用は5Gのエリア拡大には寄与するものの、性能面では期待できない。もう少し詳しく見ていこう。

・スマートフォンや携帯電話の通信速度は、単純化してしまえば通信に使える帯域幅によって決まる。通信に使う帯域幅を「チャネル帯域幅」と呼ぶ。これが4Gでは最大20MHzなのに対し、5Gでは最大400MHzを利用できる。だからこそ10倍以上の高速通信が可能なのだ。

高い周波数帯による広帯域化で通信を高速に(出所:日経NETWORK)

・実のところ5Gは4Gよりも「ガードバンド」と呼ばれるチャネルの境界の部分が狭く、電波の利用効率は高くなっている。このため4Gの電波を5Gに転用すれば「ピーク時で14~20%速くなる可能性がある」(エリクソン・ジャパンの藤岡雅宣・最高技術責任者=CTO)。

・ちなみに通信速度を決める要素としてはほかに「符号化方式」もある。符号化とは電波の波形によってデータの値を表現する方法のことで、多くの値を表現できるほど効率が良いことになる。もともと4Gでは「64QAM」という符号化方式を採用していたが、国内の事業者は5Gで導入される「256QAM」という符号化方式をすでに使い始めているので、ここに関しては4Gも5Gも変わらない。

・つまり転用した周波数の通信速度に関しては、4Gより少し高くなる可能性はあるがほぼ同じだと言える。

超低遅延・多接続も未対応

・19年を中心とした商用サービス開始前に5Gの特徴として紹介されてきたのは、「超高速」「超低遅延」「多接続」の3つだ。4Gの電波を転用しても超高速にはならない。だから「なんちゃって5G」なのだ、というのが転用否定派の主張である。

・そもそも現在国内で商用化されている5Gは、先ほど述べた3つの特徴のうち超低遅延と多接続を実現できていない。基地局側がまだ対応していないからである。だからこそ余計に、通信速度が高くならない5Gが4Gと変わらなくなってしまうという側面がある。

・超低遅延と多接続を実現するには、基地局がノンスタンドアロン(NSA)方式からスタンドアロン(SA)方式に切り替わらなければならない。NSA方式とは、4Gの制御信号を使いつつ、データ通信には5Gの電波を使う方式だ。SAでは制御信号を含めて5Gの電波を使う。

・NSAは4Gが主役のネットワークで、データ通信のみ5Gを使う形。SAになると、制御を含めてすべて5Gで実現される
SAでサービスを展開するには、そもそも5Gで提供できるエリアが広がっていなければならない。逆に言えば5Gのエリアを広げるのがSA移行への第一歩というわけだ。

・4Gの電波を転用すれば、5Gのエリアをより早く展開できる。さらに「カバレッジが増え、利用するユーザーが増えて4Gユーザーの比率が下がれば、NSAよりもSAの方が効率的になる」(藤岡CTO)。4G電波の転用はSA化を促進する可能性があるのだ。

(日経クロステック/日経NETWORK 北郷達郎)

[日経クロステック2020年11月27日付の記事を再構成]