[FT]北アイルランドの食料品不足 英大手スーパーが警告

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『北アイルランドへの食料品供給に関して、英大手スーパーが警鐘を鳴らしている。英国の欧州連合(EU)離脱後の「実行不可能な」国境管理協定のおかげで食料品供給に「重大な混乱」が生じる、というのだ。

新国境管理体制の影響で、北アイルランドでは、多くのスーパーで陳列棚が空になる事態が起きている。

ゴーブ英国務相に宛てた書簡で、セインズベリー、マークス・アンド・スペンサー(M&S)、テスコなど英小売り大手のト…

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・ゴーブ英国務相に宛てた書簡で、セインズベリー、マークス・アンド・スペンサー(M&S)、テスコなど英小売り大手のトップは、小売業者が煩雑な手続きを免除される猶予期間が3月末に終了すれば、食料品不足はさらに深刻化すると警告した。

持続可能な食料品市場に向けた協力を

・そして政府に対して、「我々と協力して北アイルランド食料品市場を長期的に持続可能なものにするための様々な措置を」講ずることを求めた。

・また、EUと「オープンな協議」を開始して、アイルランド・北アイルランド議定書を期限までに履行することがなぜ「実行不可能である」のかをEU側に説明してほしいと要請した。これにより、離脱協定合意からわずか数週間で、EUとの厳しい交渉が始まる可能性が出てきた。

・物理的な国境管理をアイルランド島に設けないために英EU間で合意した北アイルランド議定書によると、北アイルランドはEUの単一市場に残留することになっている。その結果、グレートブリテン島から北アイルランドに肉製品等を輸送する場合は、新たな手続きが必要となる。

・フィナンシャル・タイムズ(FT)が入手した書簡で大手スーパー首脳は、この国境管理の取り決めは、新たな手続きや証明書が求められることもあり、「このような短期間で実行することは不可能」だと主張している。書簡に名を連ねた6社は、北アイルランドにおける食品の小売り販売の大半を占める。

・さらに、猶予期間が終了すれば、北アイルランドへの食料品の輸送はさらに混乱すると言う。肉類、ミルク、卵など動物由来の食品すべてについて、獣医が署名した輸出衛生証明書が必要となるからだ。

・書簡は、猶予期間が終わるまでに、「EUとの間で長期的な解決策を合意することが不可欠」だとしている。「そうした解決策を見つけ、実行するのには時間がかかるということは火を見るより明らか」だとしている。

英スーパー大手のトップが名を連ねて要請

・書簡に署名したのは、セインズベリーのサイモン・ロバーツ最高経営責任者(CEO)、M&Sのスティーブ・ロウCEO、 テスコのトップ、ジェイソン・タリー氏、アズダのロジャー・バーンリーCEO、アイスランドフーズのリチャード・ウォーカー社長、コープ(生協)グループの食品担当トップ、ジョー・ホイットフィールド氏、そして英小売協会(BRC)のヘレン・ディキンソンCEOだ。

・小売り業界のリーダーたちは、政府が、4月以降に国境管理体制を変更するのは不可能だということをEU側に伝え、農産物やその他の商品の流通を確保するための新しい計画をつくる必要があると主張する。

・さらに書簡は、政府の対応を調整し、税関および食料品輸出入の管理を一元化するシステムを構築するために内閣府に専門のチームを設置することも求めた。そして、無駄を避けるための「ジャストインタイム」方式のサプライチェーン(供給網)を運用する際の課題を解決するための人材を提供すると提案している。

・これに対し、政府の報道官は「専門のチームはすでに政府内に設置されており、スーパーマーケット、食品業界、北アイルランド自治政府と協力して商品の流れを効率化する方法を考える」と述べた。

・報道官はさらに、こうした努力は北アイルランド議定書に基づいて行われているとし、「スーパーマーケットおよび卸売業者のための猶予期間中に事態は順調に機能しており、グレートブリテン島と北アイルランド間の商品の流れはスムーズで、英政府は、業界と緊密に連携しながら、新しい規制導入の準備をしている」と述べた。

・北アイルランドのロビー団体は、北アイルランドの可処分所得が、英国の他の地域よりかなり低いことを指摘し、食料品の価格が恒久的に上昇すれば、深刻な社会的影響があると警告している。

異例の対応をとるスーパーも

・大手スーパーは、こうした問題を緩和するために異例の措置を講じている。M&Sは北アイルランドの店舗で数百点におよぶ商品の取り扱いを停止した。セインズベリーは、陳列棚に隙間ができるのを避けるために、アイルランドで仕入れた食品小売り大手スパーの商品を販売している。

・追加の手続きが必要になる問題は、英国からアイルランドの店舗に移送する商品にかかる関税の問題は別物だ。M&SのロウCEOは先週、ドイツで製造され、英国の流通センターを経てアイルランドに輸出されているM&Sの「パーシーピッグ」菓子製品の例を挙げた。これらの商品は、英EU間の貿易協定における原産地規則に抵触するために、追加の関税が課される。

・議定書に基づく取り決めは、食料品を卸売業者やレストランに出荷している企業やサービス貿易は対象としていない。そのため運送業者は、小売業のための仕組みから外れた顧客にとっては、こうした取り決めが二重の意味で現実性がないと批判している。

・アイルランドの運送大手マカラ・アイルランドのピーター・サマートン社長は、小売業のための仕組みから外れた商品については供給に滞りが生じていると言う。

・「もし北アイルランドが現在、新型コロナウイルスによる都市封鎖状態になかったなら、レストランやその他のホスピタリティー業界は、グレートブリテン島からの商品供給の確保に関して深刻な問題に直面していただろう」とサマートン氏は言う。「現行の(国境管理)モデルには明らかな欠陥があり、道路運送業協会は、2020年秋から(英国政府と環境・食料・農村地域省に対して)こうした問題を指摘してきた」

By Daniel Thomas, Jonathan Eley and Peter Foster

(2021年1月13付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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