紫光集団、債務不履行でも操業続く 中国政府が後ろ盾

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1680A0W0A211C2000000

『中国を代表する半導体大手、紫光集団が債務危機に揺れている。2020年末までに4度の社債の債務不履行を起こす一方、傘下企業は操業を続けている。その背後には政府資本が複雑に入り込む中国独特の企業統治の仕組みと、22年の共産党大会を控えた政治情勢が見え隠れする。

「資金繰りがつかなかった。投資家におわびする」。12月10日、わずか2億6千万元(約42億円)の社債の利息を支払えず、紫光集団は2度目の債務不…

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・同日満期のドル債4億5千万ドル(約470億円)も資金の手当てがつかず、年末には別の元建て債でも利払いが滞った。

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・紫光集団は習近平(シー・ジンピン)国家主席の母校でハイテク人材を輩出する清華大学が51%出資する企業。13年に中国の半導体設計大手、展訊通信を傘下に収めたのを皮切りに、大規模な買収や投資を重ね、半導体を主力事業に育てた。

・有名になったのは、15~16年の米半導体大手マイクロン・テクノロジーとウエスタンデジタルへの買収や出資の提案だ。米当局の反対で頓挫したが、最近では傘下の長江存儲科技(YMTC)が、世界的にも一定の競争力を持つ半導体製品の開発に成功していた。

・ただ財務の厳しさは前から知られていた。6月末の有利子負債は1566億元まで膨れ上がり、連結対象ではないグループ会社も多額の債務を抱える。貸借対照表に計上する現預金は515億元しかなく、資金繰りが楽ではないのは明らかだ。

・元建て社債は国内銀行と、銀行が販売する投資商品「理財商品」に組み込まれた分で全体の3割を超えるとされる。融資の変形という性質を持ち、債務不履行に陥っても取引を打ち切らないことが多い。このことが信用不安がすぐに広がらない要因となっている。

・米中間のハイテクの覇権争いが続くことは必至のなか、米国から中国の弱点として狙われる半導体産業の育成は習氏にとって喫緊の課題だ。紫光集団は重要な「コマ」であり、急激な資金難は不可解とする指摘があるのは確かだ。銀行の与信枠は6月末時点で1555億元あった。

・紫光集団は「当社は持ち株会社であり、グループ企業は平常通り操業している」と強調する。なぜ紫光集団の資金繰りが悪化する一方で、事業会社は通常に営業できるのか。カラクリは国有企業や政府系ファンドが複雑に入り組む資本構造にある。

・湖北紫芯国器科技投資、湖北紫芯科技投資、長江存儲科技控股――。紫光集団とYMTCの間には、名前が似た共同出資会社3社が介在する。紫光集団とパートナーとの共同出資会社で、相手は国有複合企業の中国中信集団、政府系ファンドの国家集成電路産業投資基金、湖北省系の投資ファンドなどだ。

・紫光集団の共同出資会社3社に対する出資比率は過半だが、51%以下。YMTCに対する実質的な支配力は限定的との見方がある。ほかの半導体の中核会社とされる「紫光展鋭」や「紫光国微」に対する出資比率も40%未満にとどまる。半導体事業を手掛ける傘下企業はある程度の独立性を持ち、紫光集団の債務危機の影響が直接には及んでいないとみられる。

・紫光集団は09年に出資しトップとなった趙偉国董事長の陣頭指揮で成長した。趙董事長は否定するが、背後には胡錦濤(フー・ジンタオ)前国家主席の息子の胡海峰氏との「関係」があるとの指摘がある。中国では党幹部との人脈が企業の成長には欠かせない。紫光集団の経営陣がこれからも党や政府の支援を得られるかは、22年党大会での人事刷新が左右する可能性がある。

・中国の半導体産業は党や政府の保護を受け、経営の規律が問われることはまれだった。一方で政治に翻弄されるリスクは否定できない。中国が米国に対抗できる半導体産業を育成するには、市場原理を活用した競争政策の導入が近道かもしれない。

(上海=張勇祥、北京=多部田俊輔)