欧州に亀裂、ほくそ笑む強権国家 ロシア・中国の思惑

欧州に亀裂、ほくそ笑む強権国家 ロシア・中国の思惑
亀裂の欧州(4)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR089X60Y1A100C2000000

『波立つ冬のバルト海。英国の欧州連合(EU)離脱に伴う自由貿易協定(FTA)交渉が決裂の危機にあった2020年12月上旬、ドイツ北東部の近海に全長約170メートルの大型作業船が姿を現した。11日には先端部に備えた白い巨大なクレーンを水中に伸ばし、1年ぶりにガスパイプラインの敷設作業を再開した。

【前回記事】

英国なきEUの不協和音 「立場の違い、明るみに」
「ノルドストリーム2」と呼ばれる新たなパイプラインはロシアとドイツを結び、欧州市場向けにロシア産天然ガスを…

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・「ノルドストリーム2」と呼ばれる新たなパイプラインはロシアとドイツを結び、欧州市場向けにロシア産天然ガスを輸出する。米国の厳しい対ロ制裁により完工間近だった敷設作業を中断していたが、英離脱を巡る政治の混乱の隙を突くように、ロシアが動き出した。12月17日の年末記者会見でロシア大統領ウラジーミル・プーチンは「欧州経済に有益なのは明白だ」と自信たっぷりに説いた。

ノルドストリーム2を敷設するための作業船=ロイター

・「欧州を分断するクレムリンの政治的手段だ」。米国の駐独代理大使ロビン・クインビルは12月5日、危機感をあらわにした。EUを主導するドイツが対ロ依存を強めれば、欧州のエネルギー安全保障が損なわれる。欧州と米国間だけでなく、欧州内部でも溝が広がりかねない。

・亀裂が広がる欧州に、ほくそ笑んでいるのは中国国家主席の習近平(シー・ジンピン)も同じだろう。

・「中国とEUは世界の二大パワーだ」「ポスト・コロナ時代の世界経済の回復を力強くけん引しよう」。12月30日にオンラインで開いたEUとの首脳会議で、習はモニター画面越しにこう呼びかけた。中国・EUの投資協定の交渉妥結を確認し、環境問題での協力を呼び水に経済協力を拡大していきたいとEU首脳に秋波を送った。

12月30日、EUとの首脳会議にオンラインで参加した習近平国家主席=AP

・習の心の内は、21年1月4日付の中国共産党系メディア、環球時報が解き明かす。米国が中国に「敵対政策」をとるなか、「米属国の英国は追従している」一方で、「EUは一定の範囲内で独立した判断を下している」。米英による対中包囲網の構築をけん制し、中国側に取り込むならEUだ――。

・年末会見でプーチンは「中ロはとても多くの面で利益が一致する」と語り、習との「信頼関係」を誇示した。英EU離脱や米単独主義を奇貨として、習とプーチンは米欧主導の既存の世界秩序を壊そうとする。その先には自らの強権的体制に好ましい国際環境へと作り替える思惑も透けて見える。巨大な両国と隣り合う日本も身構えずにはいられない。(敬称略)

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