コロナ下で好調ウォルマート、CEO「デジタルが追い風」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN140800U1A110C2000000

『新型コロナウイルスの感染拡大で消費者が店舗に足を運びにくくなる逆風が吹く中で、米小売り最大手ウォルマートの好調が目立っている。米国内に張り巡らせた4700の店舗の半数をネット通販の拠点にするといったDX(デジタルトランスフォーメーション)が奏功。デジタル投資の拡大で無形固定資産も増えている。コロナ下で小売業界の明暗をDXが分ける傾向が強まっている。

「コロナで小売りには明らかな逆風が吹いた。ウォル…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

残り2129文字

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

初割で申し込む
https://www.nikkei.com/promotion/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGN04AVW004012021000000&n_cid=DSPRM1AR08

無料登録する
https://www.nikkei.com/r123/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGN16C7X016122020000000&n_cid=DSPRM1AR08#free

ログインする
https://www.nikkei.com/login

・ウォルマートの追い風になったのは、店舗とデジタルの融合を推進してきたことだ」。ダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は13日、世界最大のデジタル技術見本市「CES」の基調講演でこう自信を見せた。コロナ収束後もオンライン消費の成長が加速するとして、人工知能(AI)を使った需要予測やロボット活用による物流効率改善が重要だと強調した。

・好調を支える一例が、コロナ下で始めた宅配サービス「エクスプレスデリバリー」だ。商品の在庫状況や配送用の車両・人員の空き状況だけでなく、交通や気象に関する情報もAIが分析。効率のよい配達経路を割り出し、注文を受けて2時間以内に商品を宅配することが可能となった。小型ロボットを使った倉庫内の運搬作業の自動化の試みも拡大。人間が集めるより10倍の速さで商品をピックアップできるという。

・同社の拠点網は米国で暮らす人の9割を半径10マイル以内に捉えるとされる。2020年末時点でその約半分の2500店超を店頭のオンライン注文の処理や配送管理までを担う複合拠点として運用を始めた。店頭にはピックアップ専用のカウンターなども備える。ネット通販の売上高は20年8~10月期決算で前年同期比79%増えるなど好調に推移しており、物流拠点を今後さらに増やす。

・今春には本社のあるアーカンソー州ベントンビルで、あらゆるものがネットにつながる「IoT」を使った宅配ボックスの実験を始める。スマートフォンのアプリで冷凍、冷蔵、低温の3種類の温度帯を管理でき、殺菌機能を備えるもので、自宅玄関に設置できるよう無償で提供。利用者が留守でも生鮮品などの食料宅配が可能になるため、再配達などの配送コスト削減に役立つ。

・無人の自動運転トラックによる商品配達も同州で21年中に始める。米スタートアップのGatik(ガティック)と組み、オンライン注文の在庫管理や物流に特化する「ダークストア」から、食料品や日用品などの商品を2マイル(約3キロメートル)先の小型店舗「ネイバーフッド・マーケット」まで運ぶ。ルイジアナ州でも同様の無人配達の試験を始める予定だ。

・ネット通販では、競合する米アマゾン・ドット・コムも猛追する。同社の有料会員サービス「プライム」を意識し、ウォルマートも20年9月中旬に定額制の「ウォルマート+(プラス)」を開始。12月には購入額35ドル以上からとしていた無料配送の利用条件を撤廃した。アマゾンよりも返品しやすい仕組みも整えた。

・決済・注文のシステムや倉庫運営の改善など、ウォルマートのデジタル分野への旺盛な投資意欲は、ソフトウエアやノウハウなどの無形固定資産の増加に見て取れる。15年1月期から20年1月期までの5年間でソフトウエアやノウハウなどの無形固定資産は倍増し、全資産に占める割合は15.3%と約6ポイント上昇。有形固定資産に対する割合は3割に高まった。

・ウォルマートは11日に投資会社リビットキャピタルと共同で、フィンテックを手がけるスタートアップを立ち上げると発表したばかり。顧客や従業員向けの手ごろな金融商品を開発する計画で、他のフィンテック企業との提携や買収も視野に入れる。無形資産へのシフトはさらに進みそうだ。 

・コロナの影響で経営環境が厳しくなり投資を控えざるをない企業と、経済活動の制約を商機ととらえて成長につながるデジタル投資に注力する企業との二極化が鮮明になっている。

・20年は実店舗の受難の年だった。アマゾン効果で実店舗への客足が減り、過去最高の9500店という19年の全米の閉店数を20年は超えたもよう。高級百貨店のニーマン・マーカスや、チェーン百貨店のJCペニーが5月に相次ぎ経営破綻した。一方で米ディスカウントストア大手のターゲットは車内・店舗での受け取りサービスやアプリによる店舗内の棚位置の可視化などが好評。年末商戦で消費のピークとなる20年11~12月の既存店売上高が前年同期比17%増え、同期間の通販の売り上げが倍増した。

CESでも小売業界のDXは注目され、電子商取引(EC)や店頭でのピックアップサービスを支える技術やサービスの発表が相次いだ。

自動運転トラックによる無人配送など物流効率化に向けた新たな取り組みも始める

・米ベライゾン・コミュニケーションズはドローン(小型無人機)を使う物流サービスで米UPSとの提携を強化すると表明。フロリダでドローンを使って小売店の商品を配達する。高速通信規格「5G」の特徴の1つの、同時に多くの機器に接続できる特徴を生かし、衝突を防ぎながら複数のドローンを飛ばす。

・パナソニックもインターネットを通じて注文した食品や料理を人と人の接触を避けながら受け取るためのロッカーの販売に力を入れる。冷凍・冷蔵・常温に対応し、クラウドを通じた遠隔管理もできる。

・CESは14日に会期を終える。初めてのオンライン開催で出展者数も少なく、20年にラスベガスの会場で開いた時のようなトヨタ自動車のスマートシティ構想や、ソニーの電気自動車(EV)試作車といった目立つ発表は影を潜めた。ただ、生活や経済環境が一変したコロナの感染拡大を受け、小売り業界向けDXといった、消費者に身近で、早期に実現する最新技術が目立つ展示会になったとも言えそうだ。

(ニューヨーク=白岩ひおな、広井洋一郎)