米、ワクチン1回目接種を優先 高齢者向けに在庫放出

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『【ワシントン=鳳山太成】米政府は新型コロナウイルスワクチンの供給を倍増させるため、2回目の接種のために保管するワクチンの在庫を全量放出する。医療従事者を優先してきたが、高齢者の接種も始める。国内の死者数が1日4000人を超えるなか、遅れを取り戻すために戦略を転換する。

アザー厚生長官が12日の記者会見で明らかにした。12月中旬以降に始まった米ファイザーや米モデルナのワクチンは1人2回の接種を前提としており、2回目分を配らずに取り置いてきた。同氏は「供給が需要に追いついた」と述べ、取り置き分を放出すると説明した。2回目の接種が遅れることはないという。

米疾病対策センター(CDC)によると、12日までに約2770万回分が各州に供給され、約933万人が1回目を接種した。アザー氏によると、保管分を放出することで即座に配布分も含めて合計3800万回分が利用可能になる。さらに今週追加で供給する予定だ。

米国では約2100万人の医療従事者と約300万人の介護施設居住者を優先的にワクチンを投与してきた。これから約5300万人に上る65歳以上の高齢者にも接種を始める。米政府は、実務を担う州に対し、すべての医療従事者が2回打つのを待たずに、高齢者への接種を始めてもよいと勧告した。

ファイザーやモデルナのワクチンは3~4週間空けて2回接種することで90%超の予防効果が得られるという。ただ1回目でも一定の予防効果があり、アザー氏は接種者を増やすことが「現時点で人命を救う最良の方法だ」と強調した。

コロナの被害拡大が止まらないなか、各国政府の対応は時間との闘いだ。いかにワクチンを速やかに供給するかが大きなカギを握る。

トランプ政権は2020年末までに2000万人のワクチン接種を目指したが、2割にとどまった。メーカーの増産に時間がかかるほか、接種場所や人員の確保、物流網の整備が遅れている。一般市民へのワクチン接種を始めるにあたり、西部カリフォルニア州ではディズニーランドを会場にする。

ワクチンの早期供給はバイデン次期米大統領が最初に直面する難題だ。就任後、朝鮮戦争下に成立した「国防生産法」を使って、ワクチンに必要な材料を優先的に生産するよう企業に命じる方針だ。政権移行チームは8日、ワクチンの在庫を全量放出する方針をトランプ政権より先に表明していた。

バイデン氏は就任100日後の4月末までに1億回分の接種を目指す目標を達成するため、自らの供給計画を近く発表する。ただワクチン接種の最終権限は地方自治体が持ち、連邦政府の対応には限界がある。CDCが指針をつくって助言するが、誰の接種を優先するかなど具体策は州によって分かれる。公約実現のハードルは高い。

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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ひとこと解説 アメリカではワクチンに対する期待が高く、感染を抑え込む唯一の手段であり、日常を取り戻す魔法のような扱いになっている(同時に反ワクチン主義も根強くある)。そのため、政府に対するワクチン供給を求める圧力が高く、二度目の接種のために備蓄していたワクチンを放出せざるを得なくなった。しかし、一度の接種では効果が限定的だが、二度目の接種が遅れても効果がなくなる。今回の放出で二度目の接種を受けられない人が増えることも問題となるだろう。
2021年1月13日 7:19いいね
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